観光・体験
高松周辺の世界遺産と文化財|人類の宝を訪ねる旅
高松周辺は、世界遺産・国指定重要文化財・無形文化遺産が密集する、日本でも屈指の文化エリアです。高松藩の城下町として400年以上の歴史を誇り、讃岐の豊かな風土が育んだ建築・工芸・祭礼の数々は、先人たちの叡智と美意識が凝縮された人類共通の宝といえます。瀬戸内海の穏やかな海と讃岐平野の緑に囲まれたこの地を訪れれば、単なる観光を超えた深い学びと感動が待っています。
栗林公園——特別名勝が体現する大名庭園の粋
高松を代表する文化遺産、栗林公園は1625年頃から歴代高松藩主が百余年をかけて造営した大名庭園です。国の特別名勝に指定されており、その格は金閣寺・竜安寺と並ぶ最高位。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンでは三つ星を獲得し、世界の旅行者からも高い評価を受けています。
園内は南湖・北湖を中心に六つの池と十三の築山が巧みに配置され、歩くたびに異なる景色が現れる「回遊式」の構成が見どころです。特に「偃月橋(えんげつきょう)」は切石積みの石橋で、水面に映る半月形の反射が美しく、朝の光の中で見ると格別の趣があります。紅葉の11月上旬と梅が咲く2月下旬は特に来園者が多く、早朝7時の開門直後に訪れると静寂の中で庭園を独占できます。
入場料は大人410円。日本語・英語・中国語・韓国語の音声ガイドアプリが無料で利用でき、スマートフォンで各スポットの解説を聞きながら巡れます。ボランティアガイドの同行を希望する場合は公式サイトから事前申込を。所要時間は90分を見込み、喫茶「掬月亭」で一服する時間も確保しておきましょう。
屋島——源平の古戦場と四国八十八ヶ所の聖地
高松市街から東へ約10km、溶岩台地が突き出した屋島は国の史跡・天然記念物に指定された複合文化財の宝庫です。壇ノ浦の戦いに先立つ「屋島の戦い」(1185年)の舞台として知られ、那須与一が扇の的を射抜いた伝説が残る「合戦場の浜」は今も静かに往時を伝えています。
山上に建つ屋島寺は四国八十八ヶ所第84番札所。奈良時代に鑑真和上の高弟・恵雲が開いたと伝わり、本堂と東大門は重要文化財に指定されています。宝物館には平家物語ゆかりの武具・古文書が展示されており、源平合戦の実相を資料から読み解くことができます。拝観料は500円。
屋島山頂の展望台からは瀬戸内海の多島美を一望でき、晴天時には淡路島まで見渡せます。麓から山頂までは屋島ドライブウェイ(無料)か、ことでん屋島駅から徒歩約30分の登山道を利用できます。
金刀比羅宮——785段の石段が導く信仰と美術の殿堂
香川を訪れるなら外せない「こんぴらさん」こと金刀比羅宮は、琴平町の象頭山中腹に鎮座します。本宮まで785段、奥社まで1368段の石段は全国から年間300万人超の参拝者を引き寄せ、江戸時代には「一生に一度はこんぴら参り」と称されたほどです。
本宮の旭社は天保8年(1837年)竣工で国の重要文化財。彫刻が施された総檜造りの外観は息をのむ精緻さで、参道を上り詰めた達成感と相まって強烈な印象を残します。宝物館には円山応挙・伊藤若冲ら江戸絵画の巨匠が奉納した絵馬や障壁画が収蔵されており、美術史的価値も極めて高い。入館料800円で国宝・重要文化財クラスの作品を鑑賞できます。
石段の途中には「五人百姓」と呼ばれる特権的な売店が並び、名物の加美代飴を販売しています。飴の購入が境内で許可された唯一の商業行為という江戸時代からの慣習自体が、生きた無形文化遺産といえるでしょう。
丸亀うちわと無形文化財の継承
讃岐の文化遺産は建造物だけではありません。丸亀市を中心に受け継がれる「丸亀うちわ」は国の伝統的工芸品に指定されており、全国シェア約90%を誇ります。一本の竹から柄と骨を割き出す「柄割り」技法は他産地に類を見ない独自工程で、職人が一日に仕上げられる数は限られています。
「うちわの港ミュージアム」(丸亀市)では製造工程の展示と体験制作が楽しめます。体験料は1,000〜2,500円程度で、自分だけの一本を持ち帰ることができます。購入することもまた伝統工芸の後継者育成を支える貢献になります。
また、毎年8月に開催される「高松まつり」の総踊りは重要無形民俗文化財の候補としても注目される祭礼で、市民が一体となって踊り続ける光景は訪れた者の記憶に深く刻まれます。
瀬戸内海の島々——アートと自然が交差する現代の文化遺産
2010年に始まった「瀬戸内国際芸術祭」は、直島・豊島・小豆島などの離島を舞台に開催される現代アートの祭典です。安藤忠雄が設計した直島の地中美術館は山肌に埋め込まれた建築自体が芸術作品であり、モネの大睡蓮連作や光をテーマにしたインスタレーションが自然光の中で鑑賞できます。
豊島(てしま)の「豊島美術館」は内藤礼の作品と西沢立衛の建築が一体化した世界唯一の空間で、コンクリートのシェルに開けられた開口部から差し込む光と風、床を這う水の動きが来場者を深い沈黙へと誘います。入館料は1,570円で、混雑期は日時指定の予約が必要です。
高松港からのフェリーは直島まで約50分(1,300円)、豊島まで約35分。早朝便で出発し、一島一日を贅沢に使う旅程が特におすすめです。
文化遺産巡りのモデルプランとアクセス
1日目(高松市内): 朝9時に栗林公園を90分で巡り、丸亀町商店街を散策しながら讃岐うどんで昼食。午後は屋島へ移動し、屋島寺と展望台を2時間かけて見学。夕方は玉藻公園(高松城跡)を散策して締めくくります。
2日目(琴平・直島): 午前中にこんぴら参りで本宮・宝物館を見学(所要約2時間)。午後は高松港から直島へフェリーで移動し、地中美術館または李禹煥美術館を鑑賞。
アクセスは、高松空港から市内へリムジンバスで約40分。岡山からはJR快速マリンライナーで約55分。琴平まではJR土讃線でさらに40分です。高松市内では「ことでん(高松琴平電気鉄道)」が主要観光地をカバーしており、1日フリーきっぷ(900円)が経済的です。観光案内所(高松駅隣接)では共通入場券・フリーパスの情報が入手でき、スタート前に立ち寄ることをおすすめします。
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