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名古屋めし食べ歩きガイド|発祥の物語で味わうB級グルメ
グルメ
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名古屋めし食べ歩きガイド|発祥の物語で味わうB級グルメ

名古屋めしは「赤味噌」と「発祥の物語」でできている

名古屋B級グルメ、いわゆる「名古屋めし」を語るうえで欠かせないのが、東海地方に根づいた赤味噌(豆味噌)文化です。代表格である八丁味噌は、徳川家康の居城だった岡崎城から八丁(約870メートル)離れた八丁村(現・岡崎市八帖町)が発祥とされる豆味噌で、塩分が高く発酵期間が長いぶん、濃厚でコクの強い味わいになります。名古屋発祥ではありませんが、この尾張・三河に共通する赤味噌の旨味が、味噌カツ・どて煮・味噌煮込みうどんといった名古屋めしの背骨を通しているわけです。

そしてもう一つの特徴が、多くの名物に「いつ・どこの店で・どう生まれたか」という発祥の物語がはっきり残っていること。観光で名古屋を歩くなら、味そのものだけでなく、この成り立ちを知っておくと一皿の見え方がまるで変わります。本稿では夜の居酒屋ではなく、昼間に食べ歩く視点で、名物ごとの由来とエリアの楽しみ方を整理します。

手羽先唐揚げ — 発注ミスから生まれた名古屋の顔

名古屋めしの象徴ともいえる手羽先唐揚げは、1963年に熱田区で創業した「風来坊」が元祖とされます。きっかけは仕入れの発注ミス。当時スープの出汁を取る程度にしか使われていなかった手羽先が大量に手元に残り、それを唐揚げにして甘辛いタレを絡めてみたところ大当たりした、という逸話が知られています。その後、味を研究した飲食店が次々と手羽先を出すようになり、1981年に新栄で生まれた「世界の山ちゃん」がコショウの効いたスパイシーな味で台頭。甘辛系の風来坊と胡椒系の山ちゃんという二大潮流ができました。

手で骨を外しながら頬張るのが流儀で、価格は一人前(おおむね5本前後)でワンコイン強から1,000円ほどが相場の目安です。昼から手羽先を出す店は名駅・栄に点在し、定食やランチで楽しめる店もあります。

味噌カツとどて煮 — 串カツを「どて鍋」にくぐらせた一手から

味噌カツの起源には諸説ありますが、よく語られるのが屋台のどて煮との縁です。どて煮は牛すじやモツを赤味噌でじっくり煮込んだ郷土料理で、戦後の名古屋の屋台では、この煮込み鍋に串カツをくぐらせて食べる客がいたといいます。その光景から味噌だれをかけるトンカツが生まれた、という説が有力視されています。1947年に「矢場のとんかつ」として創業した矢場とんもこの流れを汲む一軒で、1949年創業の「味処 叶」が味噌カツの名付け親とされる説もあります。

赤味噌だれは見た目ほど塩辛くなく、揚げたての衣に甘辛い旨味がよく絡みます。味噌カツ定食はおおむね1,000〜1,800円台が目安。どて煮は一品料理として数百円から味わえ、ご飯にのせた「どて飯」を出す店もあります。

麺の二枚看板 — きしめんと味噌煮込みうどん

平打ち麺のきしめんは、江戸時代の文献にも登場する古い名物です。由来は諸説あり、芋川(現・刈谷市)名物の平打ちうどんがルーツとする説、碁石に似た形から「棊子麺」と呼んだ説などが伝わります。幅広で薄い麺はムロアジなどの魚介出汁をよく吸い、つるりと喉を通る軽さが身上。名古屋駅の新幹線口直結の地下街エスカや、熱田神宮の境内など、観光動線上で手軽に味わえるのが魅力です。一杯はおおむね700〜1,200円が目安です。

一方の味噌煮込みうどんは、赤味噌仕立ての汁で固めの麺を土鍋ごと煮込む、名古屋らしいパンチの効いた一杯。山梨の「ほうとう」が尾張に伝わったのが源流ともいわれ、一人用の土鍋で煮込む現在のスタイルは大正期に大須の「山本屋」が確立したとされます。生煮えに見えるほど芯のある麺は、煮込んでも伸びないための工夫。土鍋の蓋を取り皿代わりに使うのが地元流です。価格は1,000〜1,800円ほどが相場の目安となります。

台湾ラーメンとあんかけスパ — 名古屋で独自進化した「○○めし」

名古屋には、名前は他所のようでいて中身は完全に名古屋発祥、という料理がいくつもあります。その筆頭が台湾ラーメン。千種区今池の「味仙(みせん)」で、台湾出身の創業者が台北で食べた担仔麺をヒントに1971年ごろ考案したもので、唐辛子とニラ、にんにくを効かせた激辛が特徴です。本場台湾には存在しない名古屋生まれの一杯で、辛さ控えめの「アメリカン」、激辛の「イタリアン」といった独自の呼び名も生まれました。今では市内の多くのラーメン店が看板に掲げる定番です。

あんかけスパも名古屋ならでは。極太の茹で麺を炒め、胡椒の効いたとろみのある茶色いソースをたっぷりかけた一品で、1960年前後に名古屋で考案されました。発祥は東区の「そ〜れ」、それを広めたのが中区の「ヨコイ」とされ、肉やエビ・野菜を盛り合わせた「ミラカン」が代表メニューとして知られます。家庭ではあまり作らない、外で食べる名古屋めしの代表格です。台湾ラーメンもあんかけスパも、おおむね800〜1,300円ほどで楽しめます。

大須 — 食べ歩きの主戦場

昼間にいちばん名古屋めしを満喫しやすいのが、若宮大通・伏見通・大須通・南大津通に囲まれた大須商店街です。約1,200店が連なり、地下鉄鶴舞線の大須観音駅、名城線の上前津駅から徒歩すぐ。老舗の和菓子屋からアジア系の屋台フードまで雑多に同居する、名古屋でいちばん歩いて楽しいエリアです。

ここでは食べ歩きスタイルの名古屋めしが充実しています。味噌だれをかけた串カツ(味噌カツ串)、揚げたての台湾系の唐揚げ、串に刺したみたらし団子など、ワンコイン前後でつまめるものが多く、はしごしながら少しずつ味見できるのが大須の醍醐味。買い食いをしながらアーケードを抜け、大須観音にお参りして折り返す、というのが定番の半日コースです。

駅と城で味わう — エスカと金シャチ横丁

時間が限られた旅行者には、名古屋駅と名古屋城周辺が効率的です。新幹線口の地下街エスカは1964年の東海道新幹線開業とともに生まれた老舗の地下街で、きしめん・味噌カツ・ひつまぶし・天むすといった名物専門店が集まり、乗り換えの合間に名古屋めしをまとめて押さえられます。名古屋駅にはほかにも地下街が広がり、雨でも濡れずに食べ歩けるのが内陸都市・名古屋らしい強みです。

名古屋城の正門・東門の両脇には「金シャチ横丁」があり、観光と食事を一度に楽しめます。伝統的な名古屋めしの老舗系と、新しいアレンジを加えた店とがゾーンごとに分かれる構成で、城見物のついでに手羽先や味噌煮込みうどんをいただけます。

ひつまぶし・天むす・小倉トースト — 締めに知っておきたい三品

最後に、名古屋めしの奥行きを語る三品を。ひつまぶしは、明治6年創業の「あつた蓬莱軒」が発祥とされる鰻料理です。出前用の大きなおひつに鰻飯をまとめた際、鰻だけ先に食べられて飯が残る問題を、鰻を細かく刻んで飯に「まぶす」ことで解決したのが名の由来。そのまま、薬味を添えて、出汁をかけて、と一杯で三度楽しむ食べ方が今に伝わります。専門店では3,000円台以上が一般的で、B級というより名古屋が誇るごちそうです。

天むすは小ぶりの海老天を握り込んだおにぎりで、実は三重県津市が発祥。名古屋で名物として広まったのは1981年、「千寿」が暖簾分けを受けてからで、いまでは名駅の土産にも欠かせません。そして喫茶文化が生んだ小倉トースト。1921年ごろ名古屋の喫茶店で、トーストをぜんざいに浸して食べる学生を見た店主が餡をのせて出したのが始まりとされます(諸説あり)。飲み物を頼むとトーストやゆで卵が付く「モーニング」は隣の一宮市が発祥といわれますが、これも名古屋一帯に深く根づいた朝の食文化。コーヒー一杯の値段で軽食が付く店も多く、旅の朝にこそ体験したい名古屋めしです。

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Written by

松本 海斗

トラベルエディター

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