グルメ
広島市のB級グルメ食べ歩き:お好み焼き・汁なし担々麺・広島つけ麺
広島市の食は「鉄板」と「麺」に宿る
広島市のB級グルメは、お好み焼きの鉄板と、市内で独自進化した麺料理に強い個性があります。同じ広島県でも、宮島口(廿日市市)のあなご飯や福山市のうずみ、呉市発祥のがんすなど名物の出どころは市内とは限りませんが、広島市の中区を歩けば、市そのものから生まれた味に何種類も出会えます。観光の拠点になる広島駅・紙屋町・八丁堀から、繁華街の流川(ながれかわ)・薬研堀(やげんぼり)・新天地までは路面電車や徒歩圏。原爆ドームや平和記念公園を巡ったあと、そのまま食べ歩きにつなげられる距離感です。まずは広島市が「発祥地」として誇る三本柱を押さえておくと、街歩きの解像度が一気に上がります。
重ね焼きのお好み焼き:そばが入る理由
広島のお好み焼きは、生地に具を混ぜ込む大阪のスタイルとは作り方が根本から違います。薄く伸ばした生地の上にキャベツ・もやし・豚肉を「重ねて」蒸し焼きにし、別に焼いたそば(中華麺)やうどんを挟み、卵でとじる——この層構造が広島市で完成した形です。
ルーツは戦前の駄菓子的な「一銭洋食」にさかのぼりますが、決定打は戦後でした。原爆と終戦後の食糧難のなか、配給で手に入りやすかった小麦粉を生地に、高騰したネギの代わりに安くてかさの出るキャベツを大量に使い、屋台で焼かれたのが原型です。やがて腹持ちを良くするためにそばを入れる店が現れ、1950年代半ばに現在の重ね焼き+麺入りスタイルがほぼ固まったと伝えられます。「キャベツの甘み」「麺の香ばしさ」「ソースの香り」が一体になるのは、この歴史の産物なのです。
地元では「お好み焼き」を「広島焼き」とは呼ばず、単に「お好み」と言うのが普通。注文時は焼きあがりまで20〜30分かかることも多いので、カウンターで鉄板を眺めながら待つのも醍醐味です。トッピングではご当地ねぎをたっぷり乗せる「ねぎかけ」や、麺をパリッと焼く「パリそば」など、店ごとの流儀を聞いてみると会話も弾みます。価格は一枚ワンコイン〜1,000円台前半が目安で、肉玉そばを基本に好みで具を足していく形が一般的です。
お好み焼きをどこで食べるか:お好み村と中区の名店街
初めてなら、中区新天地のビル「お好み村」が分かりやすい入り口です。戦後すぐ中央通りにできた屋台群がルーツで、1992年に完成した複合ビル(新天地プラザ)の2〜4階に、20店あまりの専門店が一フロアにひしめいています。各店が同じ広島焼きでも生地の厚みや麺の焼き加減で個性を競っており、フロアを見比べて選べるのが醍醐味。観光客でにぎわう一方、味のレベルは折り紙つきです。
もう少し地元気分を味わいたいなら、八丁堀・流川・薬研堀といった中区の繁華街に点在する一枚板の名店を訪ねるのがおすすめ。のれん分けで広がった同名・系列店が複数あるため、看板ののれんの色や立地で店を選び分けるのも広島ならではの楽しみ方です。夕方からの営業が中心の店が多いので、夜の食べ歩きの起点にすると動きやすいでしょう。
広島市発祥の「汁なし担々麺」
ここ十数年で広島市の名物に定着したのが、汁なし担々麺です。スープのない丼に、花椒(ホアジャオ)の効いたラー油だれ、ひき肉、青ねぎを乗せ、提供されたら自分でよく混ぜてから食べる——この「混ぜて食べる」作法そのものが広島市で根づいたスタイルです。店によっては「20〜30回を目安に混ぜて」と案内があるほどで、混ぜ具合で味が変わるのも面白さの一つです。
発祥は、2001年に広島市中区で開いた一軒。中国・四川の料理に学んだ店主が、ラーメン店から汁なし担々麺の専門店へ転換したのが始まりとされます。その後、2009年に八丁堀で開業した別の人気店が、自家製麺と手頃な価格で第二次ブームを牽引。店主がレシピを広く公開したことで新規参入が相次ぎ、「汁なし担々麺の街・広島」が形づくられました。市内には専門店が数多く、いまや昼の定番です。
辛さとしびれ(花椒)は店や注文で段階を選べることが多く、初めてなら控えめから試すのが無難。締めに少量のご飯を投入し、残っただれと絡める「追い飯」も定番の食べ方です。価格はおおむねワンコイン前後から800円台が目安で、サイドに温泉卵を足す人も多く見かけます。汁がないぶん回転が速く、一人でもさっと立ち寄れる手軽さが、ランチ激戦区の広島市で支持される理由です。
八丁堀生まれの「広島つけ麺」
広島市にはもう一つ、市内発祥の麺があります。広島つけ麺です。関東の濃厚魚介つけ麺とは方向性が違い、冷たく締めた中華麺を、醤油ベースに唐辛子・酢・ごまを効かせたピリ辛で酸味のあるたれにつけて食べるのが特徴。ゆでキャベツやゆで卵、チャーシューが一緒に盛られ、夏でもさっぱりすするように食べられます。
発祥は、1954年に八丁堀(現・中区)で開業した中華料理店とされ、当初は「つけ麺」ではなく夏季限定の「冷麺」と呼ばれていました。これを受け継いだ人が1985年に十日市町で通年営業の専門店を構え、「広島つけ麺」の名で広く知られるようになります。辛さは「○辛」と段階指定できる店が多く、地元では“辛さの数字”が会話のネタになるほど。汗をかきながら酸味と辛味で食べ進める感覚は、お好み焼きや担々麺とはまた違う涼やかさがあります。価格帯は一杯およそ700〜1,000円台が目安で、辛さの段階や大盛りで上下します。
県の名物も、市内でしっかり味わえる
広島市そのものの発祥ではないものの、市内で外せない味もあります。代表格が牡蠣。広島県は牡蠣(むき身)の生産量が全国一で、全国の6割以上を占めるとされ、県の魚にも指定されています。養殖の中心は瀬戸内の各地ですが、広島市内にも冬場に炭火で殻付き牡蠣を網焼きする「かき小屋」が立ち、シーズンには地元客でにぎわいます。焼き・蒸し・フライと食べ比べられるのが市内ならではの楽しみです。
練り物のがんすも覚えておきたい一品。魚のすり身に唐辛子や野菜を混ぜ、パン粉をまぶして揚げたカツ風のかまぼこで、もとは県南部の呉市で生まれた庶民の味です。名前は広島弁の「〜でございます(がんす)」に由来すると言われ、いまでは広島市内のスーパーや居酒屋、お好み焼き店のトッピングでも親しまれています。
さらに県東部・福山市の郷土料理うずみは、えびや鯛などの具をご飯の下に「埋めて」隠した一杯。江戸期の倹約令のもと、ご馳走を質素に見せて味わった名残とされ、見た目はただの白飯でも箸を入れると具が現れる仕掛けが面白い料理です。そしてあなご飯は宮島口(廿日市市)で1901年に駅弁として生まれた味で、宮島観光の名物。広島市内でも提供する店はありますが、本場の帰属は宮島側にあると覚えておくと、食べ歩きの土地勘がぶれません。
食べ歩きの実用メモ
広島市内の移動は路面電車(広島電鉄)が便利で、広島駅を起点に紙屋町・八丁堀・原爆ドーム前など中心部の各所へアクセスできます。お好み焼きと汁なし担々麺、広島つけ麺はいずれも中区の徒歩圏に集まっているため、昼に麺、夜にお好み焼きと一日で回ることも十分可能です。人気店は昼時と週末に並ぶことが多いので、時間をずらすか開店直後を狙うと待ちが短く済みます。鉄板の前のカウンターは席数が限られる店も多く、グループなら少し早めの来店が安心。広島市の食は「発祥地で本家を食べる」という体験そのものが価値なので、一軒で完結させず、麺と鉄板をはしごして味の違いを確かめるのが、いちばん広島らしい楽しみ方です。
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