グルメ
長崎市の深夜営業・夜食ガイド|思案橋・銅座の〆ちゃんぽんと皿うどん・トルコライス
中華街が眠ったあと、夜は思案橋へ
長崎の夜は、ふたつの顔を順番に見せます。最初の顔は、新地(しんち)の中華街。昼から夕方にかけては食べ歩きと中華料理でにぎわいますが、多くの店が昼の部と夜の部に分かれた二部制で、夜の営業も20時台には看板を下ろし、夜が更けるころには通りのシャッターが静かに下りていきます。きらびやかな中華街が眠りにつくころ、長崎の夜のもう一つの顔——歓楽街の思案橋(しあんばし)と銅座(どうざ)に灯がともり始めます。
思案橋という地名は、かつてこの先に広がっていた花街・丸山へ「行こうか、戻ろうか」と人々が思案した橋に由来すると言われています。橋そのものは今は残っていませんが、地名と路面電車の電停の名にその記憶が刻まれ、長崎随一の繁華街として夜ごと人を集め続けています。中華街で軽く腹ごしらえをして、本格的な夜は思案橋へ——これが長崎の夜の自然な動線です。
思案橋・銅座・浜町 ― 夜のエリアの歩き方
思案橋を中心とする一帯は、隣り合う三つのエリアで性格が分かれます。目的に合わせて流れを組み立てると、長崎の夜が立体的になります。
思案橋横丁 — 思案橋電停のすぐそばから路地が枝分かれし、和食・中華の食事処、居酒屋、バー、スナックなど飲食店が60軒以上ひしめく、長崎の夜の本丸です。間口の狭い店が肩を寄せ合い、一杯ひっかけては次の路地へ、というはしご酒が一晩で完結します。角を曲がるたびに別の店が現れる迷宮感が、横丁を歩く醍醐味です。
銅座(どうざ) — 思案橋に隣接する、より大人向けの歓楽街。江戸時代に銅を扱う役所(銅座)が置かれたことが地名の由来で、今はスナックやクラブ、小料理屋が密集するディープな夜の街です。観光客より地元客や常連が主役の路地で、長崎の夜のいちばん濃い部分を覗いてみたい人に向きます。
浜町(はまのまち) — 思案橋から歩いてすぐ、市内随一の商店街・浜町アーケード。昼はショッピングと買い物客でにぎわいますが、夕方になると周辺の飲食店に灯がともり、思案橋へ向かう夜の入り口になります。アーケードを抜けて思案橋へ、という流れで歩くと迷いません。
最寄りは長崎電気軌道(路面電車)の思案橋電停。観光を終えて中華街・出島方面から一本で出てこられるのも、この街が遊びやすい理由です。
長崎の〆は「ちゃんぽん」 ― 思案橋の深夜文化
長崎の夜食を一語で表すなら、やはりちゃんぽんです。豚骨や鶏がらをベースにした白濁スープに、豚肉・かまぼこ・きくらげ・キャベツ・もやしなどをたっぷり炒め合わせ、太めのちゃんぽん麺を一緒に煮込んだ一杯。その発祥は1899年(明治32年)、長崎で学ぶ中国人留学生のために、安くて栄養があってボリュームのある料理をと、長崎の中華料理店が考案したものとされています。中国生まれではなく長崎で生まれた麺料理だというのが、地元の誇りです。
そのちゃんぽんが、長崎では飲んだあとの〆として根づいているのが面白いところ。発祥の老舗が比較的早い時間に店を閉めるのに対し、思案橋の界隈には深夜まで湯気を上げるちゃんぽんの店が点在し、はしご酒の最後にすするのが長崎流です。ラーメンで〆る街は多くても、白濁スープのちゃんぽんで〆る街は長崎ならでは。店によってはおろしにんにくをたっぷり効かせた濃厚な一杯を看板にしていて、酔った体に塩気と旨みがしみわたります。価格は一杯おおむね800〜1,200円前後が目安で、この〆の一杯が思案橋の夜のいちばんの楽しみになっています。
もう一つの中華の〆 ― 皿うどん
ちゃんぽんと並ぶ長崎の中華が皿うどんです。これもちゃんぽんから派生して同じ長崎の中華料理店で生まれた一品で、もとは太麺を炒めて作る焼きそばに近いものでした。今は油で揚げたパリパリの細麺に、片栗粉でとろみをつけた具だくさんのあんをかけたスタイルが全国に知られていますが、長崎では太麺・細麺の両方が当たり前に選べます。注文時に「細麺で」「太麺で」と選ぶのが地元流です。
汁がないぶん酔った胃にも重くなりすぎず、卓上のソースや酢をかけて味を変えながら食べられるのも〆向き。深夜のちゃんぽん店では皿うどんも一緒に出していることが多く、「今日はちゃんぽん、次は皿うどん」と長崎の夜を二度楽しむ通もいます。相場はちゃんぽんと同程度を見ておけば安心です。
夜食の洋食 ― トルコライス
中華だけが長崎の夜食ではありません。もう一つの名物が、洋食のトルコライス。ピラフやバターライス、ナポリタンなどのスパゲティ、トンカツを一枚の皿に盛り合わせ、上からデミグラスやカレー風味のソースをかけた、長崎生まれのワンプレート洋食です。1950年代に長崎の洋食店で考案されたとされ、「トルコ」を名乗る名前の由来には諸説あって定かでないのも、この料理の愛されどころ。
一皿で炭水化物と揚げ物がそろう圧倒的なボリュームは、よく「大人のお子さまランチ」と呼ばれます。喫茶店や洋食店、一部の居酒屋のメニューにあり、しっかり食べたい夜の腹ごしらえにうってつけ。中華で攻めるか、洋食でいくか——〆の選択肢が中華一辺倒でないのも、出島の昔からさまざまな食文化を受け入れてきた長崎らしさです。
夜食を楽しむための実用メモ
長崎の夜を歩くなら、街の時間割を覚えておくとスムーズです。まず新地中華街は夜の早じまいが早いので、中華街で食べ歩きや夕食を済ませたいなら20時前には入っておくのが安心。本格的に飲むなら、その足で思案橋・銅座へ移るのが王道の流れです。
移動の足になる長崎電気軌道(路面電車)はおおむね23時台には終電を迎えるので、遅くまで遊ぶなら帰りの手段を先に考えておきましょう。思案橋から長崎駅前や中心部のホテルへは距離が近く、深夜は流しのタクシーも拾えます。思案橋横丁の小さな店は現金のみのところも残るので、いくらか現金を持っておくと路地裏の一軒でも慌てません。
長崎は坂とアーケードと路地が入り組んだ港町。中華街の夕食から思案橋の〆ちゃんぽんまで、徒歩圏で完結するコンパクトさこそ、この街の夜食めぐりのいちばんの魅力です。
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