メインコンテンツへスキップ
SOROU.JP日本全国情報ポータルサイト
高松で讃岐漆器・丸亀うちわを学ぶ|香川県の伝統技術に触れる
学び
10分で読める

高松で讃岐漆器・丸亀うちわを学ぶ|香川県の伝統技術に触れる

香川が誇る二大伝統工芸とその背景

香川県は讃岐うどんで名高い土地として全国に知られていますが、実はその歴史の奥には、職人たちが何百年もかけて磨き上げてきた伝統工芸の世界が広がっています。「讃岐漆器」と「丸亀うちわ」——この二つの工芸品は、香川県が誇る国の伝統的工芸品として認定されており、いずれも現代に生きる職人たちの手によって今なお継承されています。

讃岐漆器の歴史は平安時代にまで遡ります。当時の讃岐国(現在の香川県)では、山間部に豊富な漆の原木が自生しており、職人たちが独自の技法を発展させていきました。一方の丸亀うちわは、江戸時代初期に金刀比羅宮への参拝者に配られた縁起物として普及したという説が有力で、以来400年以上にわたって丸亀の地場産業として根付いてきました。現在では全国のうちわ生産量の約9割を丸亀市が占めるという圧倒的なシェアを誇ります。

高松から丸亀までは電車でわずか20〜30分。香川県を訪れる際に、こうした伝統技術の現場に足を運び、職人の技と知恵に直接触れることは、単なる観光を超えた深い学びの体験となります。

讃岐漆器——重ね塗りと研ぎ出しが生む艶の秘密

讃岐漆器の最大の特徴は「彫刻塗り」と呼ばれる独自技法にあります。木地に漆を何十層にもわたって丁寧に塗り重ね、その上から彫刻刀で文様を刻み、さらに研ぎ出しを行うことで、漆の層の色彩が美しいグラデーションとなって浮かび上がります。この技法は讃岐漆器にしか見られないもので、職人一人が一点の作品を完成させるまでに数ヶ月を要することも珍しくありません。

高松市内にある「香川県漆芸研究所」は、讃岐漆器を学ぶ上で欠かせない拠点です。昭和28年に設立されたこの研究所は、全国でも稀有な公立の漆芸専門機関であり、研究員による指導のもとで漆芸の基礎から応用まで体系的に学ぶことができます。一般向けの体験講座(1回2,000円〜5,000円程度)も定期的に開催されており、漆塗りの基本的な工程を自分の手で体験する機会が提供されています。漆を実際に素材として触り、刷毛で均一に塗り広げる感覚を掴むことで、完成品を見る目がまったく変わってくるはずです。

また、高松市内の工芸品専門店では讃岐漆器の実物を間近に観察することができます。椀や盆、箸など日常使いの品から、装飾的な花瓶や額まで、価格帯は3,000円〜数十万円と幅広く、本物の漆器を生活に取り入れるきっかけにもなります。購入の際には「なぜこの文様が選ばれているのか」「どの技法が使われているのか」を店員に尋ねると、工芸品に込められたストーリーが見えてきます。

丸亀うちわ——竹の骨と和紙が織りなす職人技

丸亀市にある「丸亀市うちわの港ミュージアム」は、丸亀うちわの歴史と製造工程を総合的に学べる施設です。ここでは江戸時代から現代に至るうちわの変遷が時系列で展示されており、金刀比羅宮詣での土産物として全国に広まっていった経緯が詳しく解説されています。入館料は大人300円と手頃で、展示を通じて丸亀うちわの産業的・文化的な背景を一時間ほどで把握できます。

丸亀うちわの製造工程は、大きく分けると「骨作り」「貼り」「仕上げ」の三段階に分かれ、全工程を手作業で行うものは細かく見ると数十の工程を経ます。なかでも「骨作り」は最も熟練を要する工程で、真竹を細かく割いて扇状に整える「割き」と呼ばれる作業は、一本の竹から48本以上の骨を均等に作り出す高度な技術です。この作業を間近で見学すると、職人の手の動きの精密さと速さに思わず息を呑みます。

ミュージアム内では手作り体験コーナー(1回600円〜1,500円程度)が設けられており、和紙と竹骨を組み合わせてオリジナルのうちわを作ることができます。自分でデザインした模様を和紙に描き、骨に貼り合わせる体験は子どもから大人まで楽しめる内容ですが、骨の張り方ひとつで仕上がりが大きく変わることを実感すると、職人技の深さへの敬意が自然と湧いてきます。

職人の工房を訪ねる——生きた技術に触れる場として

博物館や体験施設だけでなく、実際の職人工房を訪問することでしか得られない学びもあります。丸亀市内にはうちわ製造に携わる工房が今も複数存在しており、事前予約を行うことで見学を受け入れてくれるところもあります。工房では機械化されていない手作業の工程を目の当たりにでき、職人さんに直接「この道に入ったきっかけ」「技術の伝承で苦労していること」などを聞くことができます。

讃岐漆器の工房訪問も同様で、高松市内や近郊に個人工房を構える漆芸家のなかには、見学や短期指導を受け入れている方がいます。香川県の観光・産業振興機関が窓口となって職人との橋渡しをするプログラムが整備されていることもあるため、事前に「香川県観光協会」や「高松市産業振興課」に問い合わせると、最新の受け入れ情報を得ることができます。

こうした工房訪問では、製品の「完成形」だけでなく、失敗した作品や試作品を見せてもらえることもあります。漆がうまく乗らなかった下地の処理方法、うちわ骨の割り損じた竹の扱い——そうした「失敗と修正」の積み重ねの上に職人の技術が成り立っていると知ることは、ものづくりへの理解をいっそう深めてくれます。

学びの旅を計画する——高松・丸亀を結ぶモデルコース

高松と丸亀を組み合わせた一泊二日のモデルコースを提案します。

1日目(高松中心) 午前中に香川県漆芸研究所を訪問し、讃岐漆器の展示と可能であれば見学を行います(事前問い合わせ推奨)。午後は高松市内の工芸品専門店を複数巡り、讃岐漆器の実物を比較観察しながら技法の違いを目で学びます。夕方には高松城跡(玉藻公園)を散策し、城下町として栄えた高松の歴史的背景を空間として体感します。

2日目(丸亀中心) 朝一番で丸亀市うちわの港ミュージアムへ。展示見学後に手作り体験に参加します。午後は金刀比羅宮への参詣(丸亀からさらに車や電車で30〜40分)も組み合わせると、うちわが普及した歴史的文脈を現地で体感できます。帰路に丸亀城を訪れ、石垣の美しさと城下の風景を楽しみながら旅を締めくくります。

予算の目安は、交通費・入館料・体験費・食事込みで一人あたり15,000円〜25,000円程度です。伝統工芸品のお土産(丸亀うちわ1本500円〜3,000円、讃岐漆器の箸1膳2,000円〜)も、旅の記念と日常使いを兼ねた賢い選択です。

伝統工芸を学ぶことの意味

讃岐漆器と丸亀うちわを学ぶ旅は、単に「珍しい工芸品を見る」体験に留まりません。そこには気候・地理・歴史・経済が複雑に絡み合い、人々が長い時間をかけて知恵を積み重ねてきた営みがあります。漆の塗り重ねに見る「継続と積層」の哲学、うちわの骨の均一な割りに見る「精度と反復」の美学——こうした視点でものを見る習慣は、伝統工芸の現場でこそ育まれます。

香川県を訪れる機会があるなら、うどんだけでなくこうした工芸の世界にも一歩踏み込んでみてください。職人の手が動く現場に立ち会う経験は、きっと日常に戻ったあとも、ものを大切に使うこと、手仕事の価値を改めて問い直すことへの、静かながら確かな動機となるはずです。

シェアする

Written by

佐藤 美紀

ライフスタイルエディター

この記事のエリアで学びを探す

Related Columns

日本刀×日本文化体験

観光スポットと刀剣文化をつなぐ多言語展開。