観光・体験
函館発の絶景ローカル線|車窓から眺める北海道の原風景
鉄道旅の魅力は、車窓を流れる風景をゆったりと眺められるところにあります。函館を起点とするローカル線は、津軽海峡や内浦湾に沿って走る絶景路線として、鉄道ファンのみならず多くの旅行者に愛されています。北海道の中では比較的温暖な函館周辺は、夏の平均気温が22度前後で過ごしやすく、春夏秋冬で全く異なる車窓風景が楽しめるのもローカル線旅の醍醐味です。都会の高速列車では味わえないスローな旅時間は、日常の喧騒を忘れさせてくれる特別なひとときです。新幹線で新函館北斗駅に降り立ったら、そこからさらにローカル線に乗り換える小さな冒険に出発しましょう。
函館を起点とする二つの絶景ローカル線
函館周辺には、性格の異なる二つのローカル線が存在します。一つは「道南いさりび鉄道」。2016年の北海道新幹線開業に合わせてJR江差線から転換された第三セクター路線で、木古内から五稜郭まで全長37.8kmを結びます。その最大の見どころは、函館湾沿いを走る区間です。釜谷駅から泉沢駅付近にかけて、列車は海岸線ぎりぎりを走り、天候が良ければ対岸の津軽半島まで見渡せる絶景が広がります。「いさりび」の名は、函館湾に浮かぶ漁り火に由来しており、夜行便では幻想的な光景も楽しめます。
もう一つはJR函館本線の大沼経由ルートです。函館駅を出発した列車は、渡島大野(新函館北斗)を過ぎると視界が開け、道南の田園風景が広がります。大沼公園駅付近では、成層火山の端正な姿を誇る駒ヶ岳がどっしりと車窓に迫り、湖面に映る逆さ駒ヶ岳が見られることもあります。この区間は国定公園内を走るため、季節ごとの自然美が際立ちます。
車窓絶景ベストポイントと座席選び
どちらの路線でも、乗車前に座席位置を意識するだけで車窓体験の質が大きく変わります。道南いさりび鉄道では、木古内から乗車した場合、進行方向左側の座席が函館湾の展望に有利です。特に釜谷〜泉沢間の約10分間は、線路と海との距離が最も近くなる区間で、波しぶきが上がるような荒天の日は迫力ある海景色が堪能できます。
JR函館本線の大沼公園付近では、進行方向右側(函館方面から乗車した場合)に駒ヶ岳が見えます。午前中の晴れた日は山肌が順光で照らされ、写真映えする条件が整います。また、冬季には大沼が凍結し、白く広がる氷原と雪化粧した駒ヶ岳のコントラストが格別です。いずれの路線も1両または2両編成の小さな列車のため、始発駅から乗れば確実に好みの席を確保できます。
鹿や狐が線路脇に姿を現すことも珍しくなく、特に早朝便や夕暮れ便では野生動物との遭遇率が高まります。のんびりとカメラを構えながら、北海道の大自然と一体になる感覚は、他の交通手段では決して得られない体験です。
途中下車で楽しむ沿線の素顔
ローカル線旅をさらに豊かにするなら、途中下車を積極的に活用しましょう。道南いさりび鉄道の渡島当別駅で降りると、徒歩約20分でトラピスト修道院にアクセスできます。男性修道士が暮らすこの修道院は日本最初のトラピスト修道院として知られ、修道院前の並木道は北海道の原風景そのものです。売店では修道士が作るバターやクッキーが購入でき、旅の土産に最適です。
また、大沼公園駅で下車すれば、大沼国定公園内の遊歩道を散策できます。春はエゾヤマザクラ、夏は新緑、秋は紅葉、冬はわかさぎ釣りと、四季折々の楽しみ方があります。大沼湖畔のカフェでは地元牛乳を使ったソフトクリームが名物で、次の列車までの1〜2時間をのんびり過ごせます。
沿線の小さな無人駅は、それ自体がフォトジェニックな被写体です。地元の方々が丹精込めて手入れした花壇が設けられた駅舎は、旅の記録としても温かみのある写真が残せます。駅前の食堂や地元のスーパーで、観光地化されていない北海道の素顔に触れることも、ローカル線旅ならではの醍醐味です。
季節限定の観光列車と特別な演出
北海道では季節を彩る観光列車が多数運行されています。夏から秋にかけては「SL函館大沼号」が不定期で運転され、蒸気機関車が吐く白煙と沿線の緑が絵になる光景を生み出します。冬には道東方面で「SL冬の湿原号」が運行されるほか、函館エリアでも雪景色の中を走る臨時列車の企画が組まれることがあります。
観光列車の指定席は発売から1ヶ月前に予約が始まりますが、人気列車は発売即完売になることも珍しくありません。JR北海道の公式サイトや「えきねっと」で最新情報をこまめにチェックし、旅行日程が決まり次第すぐに手配するのが鉄則です。料金は通常運賃に加えて指定席料金が500〜3,000円程度かかりますが、車内アテンダントによる沿線案内や地元食材を使った車内販売など、付加価値も高く旅の思い出になります。
旅の計画と実用情報
函館発のローカル線旅を計画する際は、まず函館駅の観光案内所で最新の時刻表と沿線マップを入手することをおすすめします。道南いさりび鉄道は1日10本前後の運行で、便数が限られるため帰りの列車時刻の確認は必須です。
きっぷについては、「青春18きっぷ」の利用期間であればJR函館本線での利用が可能です。ただし道南いさりび鉄道はJRとは別会社のため、同きっぷは利用できません。道南いさりび鉄道では独自の一日乗り放題きっぷ「ぐるっと道南フリーパス」(大人1,800円程度)が販売されており、往復だけでなく途中下車を繰り返す旅にも対応します。ICカードが使えない路線がほとんどなので、現金を多めに用意しておきましょう。
函館空港からのアクセスは車で約20分、新函館北斗駅からは在来線で約20分で函館駅に到着します。函館駅には荷物預かりのコインロッカーも充実しているため、大きな荷物を預けて身軽にローカル線旅に出発できます。小さなリュックにカメラと飲み物、地元のパン屋で買ったおやつを入れて、時間の流れがゆっくりと感じられる鉄路の旅に出かけてみてください。
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