観光・体験
広島市の夕日・夕景スポット — 瀬戸内の多島美に沈む夕焼けと水の都のたそがれ
水の都・広島だからこそのたそがれ
広島市の夕景には、ほかの都市にはない二つの個性があります。ひとつは、市街地が太田川デルタの上に広がっていること。太田川は市街に入る手前で分流し、天満川・元安川・京橋川・猿猴川など六本の川が網の目のように都心を貫いて広島湾へ注いでいます(かつては七本でしたが、治水のため西端を太田川放水路に整え、現在は六本です)。日が傾くと、この川面が一斉にオレンジ色に染まり、橋の欄干や水辺の遊歩道がシルエットになる——「水の都」ならではのたそがれです。
もうひとつが、市街のすぐ南に広がる瀬戸内海の多島美。似島や江田島、宮島といった大小の島影が、夕日を受けて重なり合うシルエットになります。海に沈む夕日と、街を流れる川のたそがれ。この両方を、市街中心から車や路面電車ですぐの距離で味わえるのが広島の夕景の贅沢なところです。以下、方角と見える対象を具体的に押さえながらご案内します。
---
黄金山 — 南西パノラマで夕暮れから夜景へ
まず挙げたいのが、南区の黄金山(おうごんざん)。標高221.7mの山頂が公園として整備され、車で頂上付近の駐車場まで上がれます。2020年に展望エリアがリニューアルし、樹木に視界を遮られることなく、広島市街と瀬戸内海をほぼ全方位に見渡せるようになりました。
夕景で注目したいのは南西方向です。眼下にマツダの宇品工場や海田大橋(広島ベイブリッジ)が横たわり、その先の宇品方面から似島・江田島へと、瀬戸内の島々が幾重にも連なります。日が傾くにつれ、この多島美のシルエットの奥に夕日がにじみ、海面が金色に光る——スケールの大きな夕景です。
黄金山はもともと「広島屈指の夜景スポット」として知られる場所。だからこそ、夕暮れ(マジックアワー)から青の時間(ブルーアワー)、そして街の灯がともる夜景までを一度に味わえるのが最大の魅力です。日没の30分ほど前に着いて、空が橙から紫へ、そして眼下に光が散りばめられていく一連の移り変わりを腰を据えて眺める——これが黄金山の正しい楽しみ方です。山頂までの道は道幅が狭い区間もあるため、運転は慎重に。
---
比治山公園 — デルタの街並みに沈む夕景
海に沈む夕日ではなく、街そのものが染まるたそがれを楽しみたいなら、南区の比治山(ひじやま)公園へ。標高約70mの丘が明治期から公園として整備され、市街中心部にありながら緑に囲まれた静かな高台です。
ふもとの段原地区からは、全長207.4mの比治山スカイウォーク(動く歩道とエスカレーターの立体遊歩道、年中無休・無料)で高低差を上がれるので、車がなくても気軽にアクセスできます。園内の「富士見山展望台」からは広島市街と瀬戸内海を一望でき、西から北西方向に視線を振ると、太田川デルタの上に広がる街並みが見渡せます。
ここの夕景は、海ではなくビル群と六本の川が交差する都心が主役。日が傾くと建物の窓が一斉にオレンジを照り返し、やがて街全体が薄紫のもやに包まれ、ぽつぽつと灯がともり始めます。海に沈む夕日とは対照的な、都市のたそがれです。北側には広島市現代美術館やまんが図書館などの文化施設も並ぶので、夕景の前後に散策を組み合わせるのもおすすめ。なお駐車場の利用は午後7時までと早めに閉まるため、車で訪れる際は時間に余裕を持ってください。
---
宇品・元宇品 — 海岸線で島影に沈む夕日
「やはり海に沈む夕日を間近で見たい」という方には、市街の南端、宇品(うじな)・元宇品(もとうじな)の海岸エリアを。広島港(宇品港)は瀬戸内海へ開けた玄関口で、路面電車(広島電鉄)の終点・広島港停留場まで都心から一本で行けます。
とくにおすすめなのが、宇品島の南西部に広がる元宇品公園。瀬戸内海国立公園に含まれる原生林の岬で、シンボルの白い宇品灯台や海岸沿いの遊歩道から、目の前に似島や江田島の島影を望めます。日が傾くと、この島々のシルエットの上に空が焼け、海面に光の道が伸びる——瀬戸内らしい「海+島+夕日」が一枚に収まる景色です。
ひとつ正直にお伝えしておくと、ここは岬の向きの関係で、夕日が島影の海へ沈むのは秋から冬にかけて日没が南寄りになる季節が見頃です。夏場は日没位置が北寄りになるため、海そのものに沈むというより、空と海面が広く染まるたそがれを楽しむ趣になります。それでも、潮の香りと島影に包まれた静かな夕暮れは、都心の喧噪を忘れさせてくれます。広島港からは瀬戸内の島々をめぐる夕焼けクルーズも出ており、船上から多島美のたそがれを味わう選択肢もあります。
---
おりづるタワー — 街なかでマジックアワーを
都心で手軽に夕景を、という方には、原爆ドームの隣に建つおりづるタワーの屋上展望台「ひろしまの丘」が便利です。ウッドデッキの開放的な展望スペースから、眼下に平和記念公園と元安川、太田川デルタの街並みが広がり、晴れた日には南西方向に宮島の弥山まで遠望できます。
ここで気をつけたいのが営業時間と日没時刻の関係です。通常の展望台営業は10:00〜19:00(7〜9月は20:00まで)。広島の日没は夏で19時過ぎ、冬で17時過ぎなので、通常営業の時間帯で夕日そのものを見られるのは概ね春・秋・冬が中心になります。一方、例年春から秋にかけては屋上でサンセットに合わせた夜間のカフェ&バー営業(おおむね18時以降)が期間限定で行われ、日没から夜景へと空が移ろうマジックアワーをゆっくり楽しめます。訪問前に最新の営業時間と夜間イベントの有無を公式サイトで確認しておくと安心です。
---
夕景めぐりの実用メモ
広島の夕景は、車派なら黄金山、公共交通派なら比治山スカイウォークか路面電車で広島港、と覚えておくと動きやすいです。海に沈む夕日を狙うなら宇品・元宇品で日没位置が南寄りになる秋冬が本番、街のたそがれや川面の輝きが目当てなら季節を問わず比治山や水辺の橋がねらい目です。
いずれのスポットも、日没の30分前には到着して、橙から紫、そして街の灯へと移ろう空をゆっくり眺めるのがおすすめ。六本の川が流れる水の都の夕景と、瀬戸内の多島美に沈む夕日——広島ならではの二つのたそがれを、ぜひ自分の足で見比べてみてください。
RELATED SPOTS
広島県の観光・体験スポット
広島平和記念公園
しまなみ海道サイクリング
広島本通商店街
宮島水族館みやじマリン
広島市こども文化科学館
この記事のエリアで観光・体験を探す
RELATED COLUMNS
関連するコラム
日本刀×日本文化体験
観光スポットと刀剣文化をつなぐ多言語展開。



