観光・体験
松山サイクリングガイド|はまかぜ海道・北条の海岸・重信川を走る「自転車新文化」の旅
「自転車新文化」のまち・松山から、瀬戸内へ漕ぎ出す
愛媛県は2011年から「自転車新文化」を掲げ、自転車を健康・生きがい・友情を育む暮らしの道具として根づかせてきたサイクリング県です。県内には海沿いから山あい、歴史の町並みまでをつなぐ「愛媛マルゴト自転車道」の28コースが整備され、路面には進む向きと距離を示すブルーラインが引かれています。その玄関口のひとつが、道後温泉や松山城を擁する松山市。観光を楽しんだあと、潮風の中へ一日漕ぎ出せるのが、海に開けたこの町ならではの楽しみ方です。本稿では、松山を起点に走れる海道・海岸・河川敷のロングコースを、距離とともに紹介します。
松山から目指す「しまなみ海道」
サイクリストの聖地として世界に知られるしまなみ海道は、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ約70kmの海上ルートです。出発・到着の拠点は松山市ではなく今治市で、四国側の基点は今治市のサイクリングターミナル「サンライズ糸山」(来島海峡大橋のたもと。今治駅まではさらに約6kmあります)。向島・因島・生口島・大三島・伯方島・大島の6島を橋で渡り継ぐ、海の上を走る爽快感は他に代えがたいものです。四国側の入り口にあたる来島海峡大橋は、全長約4,105m・世界初の三連吊橋として知られ、北側に設けられた自転車歩行者道から、潮流うずまく来島海峡を見下ろしながら大島へ渡れます。
松山からのアクセスは、JR予讃線で今治へ向かうのが基本。自転車をそのまま積めるサイクルトレイン「しまなみ号」が春・秋のシーズンに期間限定で運行されるほか、松山市駅〜今治駅前を結ぶ路線バスもあります。四国側のゲートが松山から近いぶん、「松山に泊まって今治発で渡る」プランを組みやすいのが利点です。
海岸線をつなぐ「はまかぜ海道」
松山にそのままつながる本命が、今治と道後温泉を海沿いに結ぶはまかぜ海道(全長66.8km)。起点は今治市のサンライズ糸山、終点は松山市の道後温泉本館で、国道196号を軸に瀬戸内海の海岸線を南下します。アップダウンが少なく、海風を感じながら走れる初級者向けのロングコースです。
松山市域に入ると、北条の海岸沿いや高浜のあたりで一気に海景が開けます。高浜の先・三津浜には、室町時代から続く市営の渡し舟「三津の渡し」があり、80mほどの水路を無料で自転車ごと渡れます(松山市道に指定された“海の市道”)。寄り道に港町の風情を味わうのも一興。ゴールの道後温泉では、走り終えた体を名湯でほぐせます。高縄半島をぐるりと回るこのルートには、海べりを行く「海ルート」と内陸の丘を越える「山ルート」の取り方があり、体力や気分で変化をつけられるのも魅力。しまなみ海道と組み合わせれば、今治を蝶番にした周遊を一日で描けます。
北条の海と、沖に浮かぶ鹿島
市の中心から北へ向かう北条は、瀬戸内の海がすぐそばに迫る松山市内の海辺エリアです。海沿いの道は信号も少なく、左手に穏やかな内海を眺めながらのんびりペダルを回せます。
その沖合およそ400mに浮かぶのが、周囲約1.5kmの小島鹿島(かしま)。北条港から市営の渡船がこまめに通い、自然林に覆われた島では海水浴や山頂展望台からの眺めが楽しめます。野生の鹿が暮らすことで知られ、海辺の走りに島の余韻を足したいときの折り返し地点にちょうどよい場所です。海岸沿いを北上して鹿島を望み、来た道を戻る——そんな半日のショートライドが、松山らしい海岸サイクリングの入り口になります。
川沿いを平坦に走る「重信川サイクリングロード」
海ばかりでなく川も走れるのが松山の懐の深さ。重信川サイクリングロード(県道松山川内自転車道線)は、松山中央公園から東温市の新横河原橋までを結ぶ全長24.2kmの河川沿い自転車道です。終点の新横河原橋は、松山市の東隣・東温市側にあります。
大半が車を気にせず走れる平坦な構成で、四季の水辺を流せるため、初心者やファミリーに人気のコース。松前(まさき)方面に広がる田園や、市街地を離れた静かな川景色が続きます。海道のロングに出る前のウォーミングアップにも、「今日は海までは…」というのんびり走の日にも向く、地元の定番ルートです。
レンタサイクルと、走り出す前に
手ぶらで訪れても、松山・道後や今治のサンライズ糸山などでレンタサイクルを借りられます。今治〜尾道間の各ターミナルでは乗り捨て(ワンウェイ)にも対応しており、片道だけ走って公共交通で戻るプランも可能。利用には保証料(デポジット)などがかかる場合があるので、料金・台数・予約方法は事前に各施設へ確認してください。
走行中はブルーラインが進む向きと残り距離の目印になります。海道のロングを狙うなら、補給と日没の時刻、輪行(自転車を畳んで列車に積む方法)の段取りを前もって押さえておくと安心です。サイクルトレインの運行は期間限定なので、最新の運行日も出発前に確かめておきましょう。松山城と道後で歴史を味わい、翌日は瀬戸内の海へ——「自転車新文化」の町ならではの二日間を、ぜひ自分のペースで描いてみてください。
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