グルメ
函館のカレー文化|個性豊かなスパイスの世界を巡る
函館は、海鮮の街というイメージが強いが、実は全国でも指折りのカレー激戦区でもある。日本のカレー文化は地域ごとに独自の進化を遂げており、函館もまた例外ではない。津軽海峡を望むこの港町では、豊富な地元食材とスパイスが出会い、他の地域では味わえない独特のカレーシーンが育まれてきた。ベイエリアの専門店から元町の隠れ家的な一軒まで、スパイスの香りに導かれる食の冒険に出かけよう。
函館カレーシーンの全体像
函館のカレーを語る上で欠かせないのが、スープカレーの存在だ。サラサラのスパイシーなスープに大きめの野菜がごろごろと入ったこのスタイルは、北海道が誇る食文化のひとつ。ベイエリアだけでも50軒以上のスープカレー店がひしめき、チキンレッグのスープカレーは1,100円前後が相場となっている。辛さを1〜40段階で選べる店が多く、初めての方は5辛あたりから試すのがよい。
スープカレーの特徴は、具材の存在感にある。北海道産の大きなじゃがいもやにんじんが丸ごと入り、骨付きチキンはスープにじっくり浸されて提供される。スープ自体はトマトベースやチキンブイヨンベースなど店によって異なり、同じスープカレーでも個性が全く違う。ライスは別皿で提供され、スープにつけながら食べるスタイルは、普通のカレーとは一線を画した食体験だ。
また、函館のカレーシーンはスープカレーだけではない。欧風カレー、スパイスカレー、創作カレーと多様なジャンルが共存しており、食べ歩きを楽しむには最高の環境が整っている。
王道の欧風カレー――時間が生む深い味わい
函館の欧風カレーは、長時間煮込みによる深みが持ち味だ。ベイエリアに店を構える老舗では、創業以来30年間つぎ足し続けたルーを使ったビーフカレーが980円で提供される。3日間かけてじっくり煮込まれた牛肉はスプーンで崩れるほど柔らかく、フルーツの甘みとスパイスの刺激が絶妙なバランスで共存している。
カツカレーは1,180円で、サクサクの衣と濃厚なルーの組み合わせはまさに黄金比。ルーの色は深いこげ茶色で、見るからに手間がかかっているとわかる。元町の別の名店では、北海道産の野菜を20種類以上使った野菜カレーが950円。各野菜の旨味が溶け出したルーは素材本来の甘さを感じさせ、体に優しい一皿に仕上がっている。ライスの量は普通・大盛り・特盛りが無料で選べる店が多く、食欲旺盛な方も満足できる。
欧風カレーの名店は予約不要が基本だが、週末のランチタイムは行列ができることも珍しくない。平日の開店直後か14時以降の来店が、待ち時間なく楽しむコツだ。
スパイスカレーの新潮流――複雑な香りが織りなす一皿
近年の函館では、本格スパイスカレーの新店が続々とオープンしている。五稜郭エリアに誕生した専門店では、シェフが独自にブレンドした15種類のスパイスを使ったチキンカレーが1,100円。クミン、コリアンダー、カルダモンの香りが複雑に絡み合い、一口ごとに新しい味わいの層が広がる。
2種盛り(1,300円)にするとキーマカレーとダルカレーの食べ比べが楽しめ、それぞれのスパイス使いの違いをじっくりと堪能できる。副菜にはアチャール(インド風漬物)やライタ(ヨーグルトサラダ)が添えられ、辛みを和らげながら口の中をリセットする役割を果たす。毎日限定50食で、12時30分には売り切れることも珍しくないため、早めの訪問が鉄則だ。
スパイスカレーは辛さの中に複雑な旨味があるのが特徴で、いわゆる「辛い食べ物」とは一線を画す。スパイス初心者でも「辛さ控えめ」を頼めば、香りの豊かさをじっくり楽しめる。
ご当地食材×カレー――函館にしかない融合の味
函館カレーの真骨頂は、地元食材との融合にある。函館港で水揚げされた新鮮なイカやホタテを使ったシーフードカレーは、海辺の街ならではの一皿だ。イカの甘みとスパイスの組み合わせは意外な相性のよさで、初めて食べた人が「また来たい」と感じる理由になっている。
また、函館名物のやきとり弁当の豚精肉(タレ焼き)をトッピングしたローカルカレーも注目の一品。甘辛いタレとカレーのスパイスが重なり合い、ここでしか味わえない個性的な風味を生み出している。価格は1,200円前後で、観光客よりも地元の常連客が特に愛する存在だ。
農家と提携した店では、津軽海峡の潮風と函館山の麓で育った地場野菜を大量に使った農家直送カレーを880円で提供している。野菜の甘みとスパイスの辛みが見事に調和し、素材の力強さを感じる一皿だ。函館港まつりの時期には、各店が限定カレーメニューを出すこともあり、訪問のタイミングによって出会える味が変わるのも函館カレーの魅力といえる。
カレー巡りの実践アドバイス
函館のカレーを効率よく楽しむためのポイントをまとめておこう。
ランチタイム(11時30分〜13時30分)が最も混雑するため、開店直後の11時か14時以降が狙い目だ。1日に2〜3軒を食べ歩くなら、各店でハーフサイズ(通常の7割程度、価格は100円引き程度)を注文すると無理なく比較できる。カレーと海鮮を同日に楽しむなら、朝に軽めのカレー、昼に海鮮丼というスケジュールがバランスよくおすすめだ。
辛いものが苦手な方は「甘口」や「辛さ控えめ」を遠慮なくリクエストしてほしい。ほとんどの店が柔軟に対応してくれる。なお、カレー店は月曜定休が多い傾向があるため、事前に営業日を確認しておくこと。
お土産としては、各店オリジナルのレトルトカレー(一箱500円〜800円)が定番人気だ。スープカレーのレトルトは具材感が比較的再現されており、帰宅後に旅の余韻を味わうのに最適。駅構内の土産物店にも函館カレーのレトルトが並んでいるため、帰りがけに立ち寄るだけでも手に入る。
函館のカレーシーンは今もなお進化を続けている。古くからの老舗と新進気鋭の新店が共存し、訪れるたびに新しい出会いがあるのがこの街の底力だ。スパイスの香りに誘われながら、自分だけのお気に入りの一軒を探してみてほしい。
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