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博多のB級グルメ案内 — とんこつ・屋台・もつ鍋・明太子をめぐる福岡市の食べ歩き
グルメ
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博多のB級グルメ案内 — とんこつ・屋台・もつ鍋・明太子をめぐる福岡市の食べ歩き

博多は「麺もの発祥」の街から始まった

福岡市の食を語るとき、意外と知られていないのが「ここは粉物・麺ものの発祥地」という顔です。博多駅の北西、博多区にある承天寺(じょうてんじ)の境内には「饂飩蕎麦発祥之地」と刻まれた石碑が立っています。鎌倉時代、宋から帰った僧・聖一国師が製粉の技術を持ち帰り、うどん・そば・饅頭といった粉物文化がここから広まったと伝わるのです。同じ承天寺は博多祇園山笠の発祥地でもあり、福岡の食と祭りの原点が一か所に重なっています。

この「麺の街」という土壌の上に、戦後の屋台文化と港町ならではの食材が乗って、福岡市は日本でも指折りのB級グルメ都市になりました。とんこつラーメン、屋台の焼きラーメン、もつ鍋、水炊き、ごぼ天うどん、鉄なべ餃子、そして明太子。そのほとんどが「博多発祥」あるいは「博多で花開いた」一皿で、しかも数百円から味わえる庶民の味というのが福岡らしさです。

とんこつラーメンは「博多」と「長浜」を覚えておく

福岡といえば、まず白濁したとんこつラーメン。ただし正確に言うと、とんこつそのものの発祥は同じ福岡県でも久留米市で、1937年にうどん屋だった店主が屋台「南京千両」で出した一杯がルーツとされます。白濁スープも久留米の店で火加減の偶然から生まれたと伝わります。福岡市で発展したのは、その流れを受けた極細ストレート麺の系統です。

福岡市内で出会うとんこつは、大きく二つの呼び名で語られます。ひとつが博多区を中心とした博多ラーメン。乳白色のスープに島原そうめんのような極細麺を合わせ、注文時に「カタ」「バリカタ」と麺の硬さを選び、食べ終わりに麺だけを追加する替え玉を楽しむスタイルです。もうひとつが中央区長浜発祥の長浜ラーメン。鮮魚市場で働く人にすばやく出すため極細麺になり、伸びる前に食べ切って麺を足す替え玉文化はここで生まれたと言われます。一杯はおおむね600〜1,000円前後、替え玉は150円前後が相場の目安です。屋台でも店舗でも、まずは麺の硬さと替え玉を試すのが福岡流です。

屋台で味わう夜の博多 — 焼きラーメンと三大屋台街

福岡市の夜を象徴するのが屋台です。日が暮れると那珂川と博多川に挟まれた歓楽街・中洲の川沿いにずらりと提灯が灯り、天神の店先にも屋台が並びます。2023年には長浜ラーメン発祥の長浜屋台街も復活し、現在は中洲・天神・長浜の三大屋台街としてにぎわっています。とんこつラーメンや餃子はもちろん、おでんや天ぷら、一品料理まで、肩を寄せ合うカウンターで食べ歩くのが醍醐味です。

屋台名物としてぜひ試したいのが焼きラーメン。とんこつスープで蒸し焼きにした麺をソースで仕上げる、汁なしの一品です。1968年ごろ、天神の屋台「小金ちゃん」で「暑い夏に熱いスープを飲まずに麺の味だけ楽しみたい」「酒を飲みながらでも伸びにくいように」という常連の声から生まれたと伝わる、まさに屋台発祥のB級グルメ。一皿はおおむね700〜1,000円前後が目安です。屋台では先にメニューと値段、支払い方法を確かめ、混み合う時間帯は長居しすぎないのが地元のマナー。荷物は膝の上にまとめ、譲り合って座るのがスマートです。

鍋でめぐる博多 — もつ鍋と水炊き

福岡市の鍋は二枚看板。ひとつがもつ鍋です。戦後の博多で、牛や豚のもつ(ホルモン)をアルミ鍋でニラと煮て醤油で味付けして食べたのが始まりとされ、食糧難の時代に安い部位をおいしく食べる知恵から生まれました。長らく庶民の味でしたが、1992年に「もつ鍋」が新語・流行語大賞の銅賞に選ばれるほどの全国ブームとなり、いまや福岡を代表する一皿に。プリプリのもつとたっぷりのニラ・キャベツ、〆にちゃんぽん麺や雑炊を入れるのが定番です。一人前はおおむね1,200〜1,800円前後が相場の目安です。

もうひとつが上品な水炊き。こちらは1905年(明治38年)、中洲で創業した店の初代が考案したと伝わります。香港で西洋料理のコンソメと中国料理の鶏の水煮を学んだ料理人が、両者を日本人の口に合わせて工夫したのが原点とされ、和洋中の交わる港町・博多らしい来歴です。骨ごと炊いた鶏の白濁スープを最初は一杯味わい、続いて鶏肉と野菜を煮て、ポン酢でいただく——この流れが博多の作法。もつ鍋より落ち着いた価格帯ではありませんが、福岡の鍋文化の奥行きを知るならぜひ一度。庶民派のもつ鍋と、ハレの水炊き。両方を知ってこそ博多の鍋通です。

餃子とごぼ天うどん — 日常に溶け込んだB級

肩肘張らずに楽しめる日常のB級も豊富です。福岡市で人気なのが、熱した鉄鍋に並べて出される一口サイズの鉄なべ餃子。発祥そのものは同じ福岡県でも北九州市八幡西区の折尾とされますが、そこで腕を磨いた姉妹が中洲の店や屋台で出し始め、メディアの取材が殺到して福岡市の名物として広まりました。皮はパリッと小ぶりで、ビール片手に何個でもいける軽さが魅力。一人前(8個前後)でおおむね400〜600円程度が相場の目安です。

そして地元の胃袋を支えるのが博多うどん。箸で持ち上げると切れそうなほどの「やわ麺」が特徴で、商人の街でせっかちな気質に応え、ゆで置きしてすぐ出せるよう柔らかくなったと言われます。トッピングの王様はごぼ天(ごぼうの天ぷら)。ささがきや棒状のごぼうを揚げて出汁に浸し、麺がやわらかいぶん歯ごたえのアクセントになります。あごや昆布の効いた澄んだ出汁とやわ麺の組み合わせは、コシ重視の讃岐うどんとは別物の郷土食。ごぼ天うどんは一杯おおむね450〜700円程度が目安で、福岡市の街なかのうどん店で気軽に味わえます。とんこつで攻めた翌朝、やさしい出汁で胃を休めるのも福岡の楽しみ方です。

明太子と「博多の台所」柳橋連合市場

土産だけでなく、その場で味わいたいのが辛子明太子福岡市の名物として全国に知られますが、その出発点は中洲でした。1949年(昭和24年)、中洲で食料品店を営んでいた川原俊夫が、幼少期を過ごした朝鮮・釜山で親しんだスケトウダラの卵の漬物にヒントを得て、日本で初めて「味の明太子」を売り出したのが始まりとされます。当初は「辛すぎる」と不評でしたが改良を重ね、しかも考案者は特許や商標を取らず製法を周囲に教えたため、福岡には150を超える明太子の作り手が育ちました。福岡市が明太子の街になった理由がここにあります。

その明太子や玄界灘の魚を間近で感じられるのが、中央区の柳橋連合市場。「博多の台所」と呼ばれる老舗市場で、幅1メートルほどの小路に鮮魚店を中心とした店がぎっしりと連なり、プロの料理人も仕入れに訪れます。明太子の量り売りや海鮮丼、立ち飲みなど、食べ歩きの楽しみも豊富です。観光地化しすぎていない「働く市場」の活気こそが見どころ。博多区の上川端商店街(川端商店街)も、博多の老舗や甘味が並ぶ食べ歩きに向いたアーケードで、屋台に繰り出す前の腹ごしらえにちょうどいいエリアです。

食べ歩きの実用メモ

福岡市B級グルメは、空港から市街地が近く、博多駅・天神・中洲が地下鉄やバスでコンパクトにつながっているのが強みです。昼は柳橋連合市場や川端商店街で明太子や海鮮、うどん店でごぼ天うどん。夜は中洲・天神・長浜の屋台でとんこつや焼きラーメンをはしごし、鍋を予約していればもつ鍋や水炊きで腰を据える——という一日の組み立てが王道です。

価格はいずれも一般的な相場の目安で、屋台や店によって幅があります。屋台では着席前にメニューと支払い方法を確認し、混雑時は長居を控えるのが地元の作法。鍋の専門店は週末を中心に混み合うので、人数が多いなら予約が安心です。とんこつの替え玉、屋台の焼きラーメン、〆のやわ麺うどんと、福岡市は「発祥の味」を一日で何皿もはしごできる食の街。ぜひ自分なりの食べ歩きコースを描いてみてください。

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Written by

山田 太郎

フードライター

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