グルメ
山形市のB級グルメ案内 ── 冷やしラーメン・芋煮・玉こんにゃくで巡る内陸の味
冷やしラーメンは、山形市が生んだ夏の発明
山形市のB級グルメを語るなら、まず外せないのが冷やしラーメンです。冷やし中華とは別物で、スープごとキンキンに冷たく、丼に氷が浮く一杯。発祥は山形市本町の老舗そば店「栄屋本店」とされ、戦後に出していた中華そばに対して常連客が「冷たい蕎麦はあるのに、冷たい中華そばは作れないのか」と問うたことがきっかけと伝わります。温かいスープをただ冷やすと脂が固まって口に残る——その壁を越えるため約1年を費やし、脂が固まらない冷たいスープを完成させて、昭和27(1952)年に世に出したのが始まりとされています。
盆地特有のフェーン現象で、山形市は夏に全国屈指の猛暑日を記録する土地。だからこそ「冷たい中華そば」への需要が切実だった、という風土と結びついた一杯です。今では市内の中華そば店や食堂の夏メニューとして広く根づき、価格は一杯おおむね900〜1,200円前後が目安。氷が溶けきる前にすするのが地元流です。
そもそも山形市は、ラーメンへの愛が数字に出る街でもあります。総務省の家計調査による中華そば(外食)の1世帯あたり年間支出額で、山形市は近年連続で全国1位を続けており、直近の集計でも年間2万5千円台と他都市を大きく引き離す“ラーメン消費日本一”の座を守っています。スープを冷たくしてでも一年中ラーメンを楽しもうとする土地柄が、冷やしラーメン発祥の背景にあると考えると腑に落ちます。
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芋煮 ── 山形市の核は「牛肉・醤油」の内陸風
山形の秋を象徴するのが芋煮ですが、ひとくちに芋煮と言っても県内で味が真っ二つに分かれることは、ぜひ知っておきたいところです。山形市を含む内陸(村山地方)は、牛肉に醤油・砂糖で味つけするのが基本。里芋を主役に、こんにゃく・ねぎ・ごぼう・きのこを合わせた、すき焼きを思わせる甘辛い醤油味です。一方、日本海側の庄内地方は豚肉に味噌仕立てで、厚揚げが入るのが特徴。同じ県内でも肉と調味がまるで逆という対比は、山形市の食を語るうえでの面白い切り口になります。
そして山形市の芋煮文化を象徴するのが、河川敷で鍋を囲む芋煮会です。家族や仲間が鍋と材料を持ち寄り、馬見ヶ崎川(うまみがさきがわ)の河原で火を起こして煮る——山形では新年会や忘年会と並ぶ年中行事として根づいています。毎年9月には同じ馬見ヶ崎川の河川敷で「日本一の芋煮会フェスティバル」が開かれ、山形鋳物でつくられた直径6メートル級の大鍋「鍋太郎」が登場。バックホー(重機)で大量の里芋や牛肉をかき混ぜ、内陸風の牛肉・醤油味を数万食ふるまう、市の名物イベントになっています。会場では庄内風の豚肉・味噌の鍋も別に用意され、両方を食べ比べられるのが粋な計らいです。
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玉こんにゃく ── 山寺ゆかりの“力こんにゃく”
串に刺さった真ん丸のこんにゃくを、観光地や祭りの屋台でほおばる——山形市民にとっての定番おやつが玉こんにゃく、通称「玉こん」です。3センチほどの球状のこんにゃくを醤油でキツネ色に煮含めたもので、店によってはスルメで出汁を取り、食べるときにからしを添えるのがスタンダードな食べ方。一串100〜200円程度が相場の、気軽な食べ歩きの主役です。
玉こんにゃくは、山形市郊外の名刹宝珠山立石寺(通称・山寺)と縁が深いと伝わります。寺の精進料理に使われたこんにゃくが周辺に広まり、やがて県内一帯へ——という由来が語られ、山寺の山門から奥之院へ続く1,000段超の石段の前で食べる「力こんにゃく」として、参拝客に親しまれてきました。観光のついでに、由来とセットで味わうとひと味違って感じられます。
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どんどん焼き ── 割り箸でくるりと巻く屋台のおやつ
山形市で育った人の“懐かしの味”として挙がるのがどんどん焼きです。水で溶いた小麦粉の生地に、青のり・紅しょうが・魚肉ソーセージ・かまぼこなどをのせて焼き、ソースを塗って割り箸に巻きつけて持つのが山形流。お好み焼きをくるくると巻き取った棒状のスタイルで、片手で食べ歩けるのが屋台向きです。
名前は、客寄せに太鼓を「ドンドン」と鳴らして売り歩いたことに由来すると言われます。山形内陸では、東京で修行した職人が昭和13年ごろにリアカーで売り始めたのが広まりのきっかけとされ、当初は経木(きょうぎ)にのせていたものを「子どもが熱くて持てない」ことから箸に巻く工夫が生まれた、という逸話が残ります。一本200〜400円程度が目安で、縁日や商店街のイベントで見かけたらぜひ。
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だしと板そば ── 内陸の食卓に根づく夏と通年の味
夏の山形市の食卓に欠かせないのが、郷土料理のだしです。きゅうり・なす・みょうが・大葉などを細かく刻んで醤油などで和えた薬味のような一品で、蒸し暑い盆地の夏に食欲が落ちても、これを熱々のごはんや冷奴、そばにのせるとさらさらと進む——という、暑さと向き合う知恵から生まれた料理です。食堂の定食や居酒屋の小鉢で出会えることがあり、見かけたら山形の夏の味として頼んでみる価値があります。
そば処としての山形市も見逃せません。村山地方で発達した板そばは、長い木の板にそばを盛りつける独特のスタイル。麺は太めで噛みごたえがあり、そばの香りが強い田舎そばの系統です。農作業の合間に大勢で分け合って食べた習わしが原型と伝わり、一枚を数人でつつくのも板そばらしい楽しみ方。中心市街地の七日町(なのかまち)界隈には江戸期創業の老舗そば店もあり、観光の合間に板そばで一息つくのに向いています。
> なお、鶏ガラのつゆを冷たくして親鶏とねぎをのせる「冷たい肉そば」は、山形市ではなく同じ村山地方の河北町(かほくちょう)谷地の名物が発祥です。山形市内でも提供する店はありますが、ルーツは隣町であることを覚えておくと、地元の人との会話がはずみます。
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食べ歩きの組み立て方
山形市のB級グルメは、季節と場所で攻め方を変えると満足度が上がります。夏なら冷やしラーメンとだし、秋なら芋煮(できれば河川敷の芋煮会シーズン)、通年で玉こんにゃくと板そば、そしてイベントや縁日に当たればどんどん焼き——という具合です。
街歩きの拠点は、JR山形駅から徒歩圏の中心市街地。駅から1キロほどの七日町(なのかまち)商店街は、旧城下町の面影を残す御殿堰(ごてんぜき)や、旧県庁舎の文翔館といった見どころと飲食店が混在し、食べ歩きと街歩きを兼ねられます。玉こんにゃくや力こんにゃくをじっくり味わうなら、少し足を延ばして山寺(立石寺)へ。盆地の山形市は、内陸ならではの牛肉醤油・そば・こんにゃくの食文化が一日で巡れる、コンパクトで濃いグルメの街です。
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