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熊本市B級グルメ食べ歩き案内 ― 太平燕・熊本ラーメン・馬刺しと城下町の味
グルメ
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熊本市B級グルメ食べ歩き案内 ― 太平燕・熊本ラーメン・馬刺しと城下町の味

熊本市は「中国・朝鮮・城下町」が混ざる食の町

熊本市B級グルメは、肥後熊本藩の歴史がそのまま皿に乗っているのが面白いところです。加藤清正が朝鮮へ出兵した記憶、その後を継いだ細川家の城下町文化、そして明治以降に中国・福建省から渡ってきた華僑の味——出自のまるで違う料理が、熊本城下のせまい範囲で同居しています。観光の拠点は上通(かみとおり)・下通(しもとおり)のアーケード街と、熊本城そばの観光交流施設「桜の馬場 城彩苑」。このあたりを歩けば、由来の異なる名物を半日で食べ比べられます。まずは町の成り立ちごと味わうつもりで、一品ずつその背景を知ってから口に運ぶと、熊本の食はぐっと立体的になります。

太平燕(タイピーエン)― 福建生まれの熊本ソウルフード

熊本を語るうえで外せないのが太平燕(タイピーエン)。春雨をスープに、炒めた白菜やきくらげ、豚肉、エビ、たけのこ、かまぼこなどをたっぷり合わせた具だくさんの中華風春雨スープです。ルーツは中国・福建省福州の家庭料理で、盆や正月など祝い事の席で食べられたものが、明治後期に福建出身の華僑を通じて熊本へ伝わったとされます。本場ではフカヒレや燕の巣を使うところを、揚げたゆで卵と春雨で代用したのが熊本流の始まりという説が知られています。今では中華料理店の定番にとどまらず、学校給食にも登場する県民食。スープは店ごとに塩味・しょうゆ味と幅があり、揚げ卵の香ばしさが効いた一杯は一食ワンコイン強〜千円前後が目安です。ヘルシーで重すぎないので、食べ歩きの一軒目に向きます。

熊本ラーメン ― マー油と揚げにんにくのまろやかさ

豚骨ラーメンというと博多が有名ですが、熊本のそれは少し性格が違います。久留米から玉名を経て熊本市周辺に伝わる過程で、豚骨スープに鶏ガラを合わせ、さらにマー油(にんにくを焦がした香味油)チップ状の揚げにんにくを効かせる形に育ちました。博多に比べてアクのとがりが抑えられ、にんにくの香ばしさでまろやかにまとまるのが熊本ラーメンの個性です。麺は玉名や博多よりやや太めを使う店が多く、こってりめのスープによく絡みます。マー油の焦がしにんにくは昭和30年代に考案されたといわれ、香りの濃さは店ごとに様々。価格は一杯おおむね700〜1,000円程度が相場で、上通・下通界隈には老舗系から新しい店までが点在します。締めの一杯にも、昼の腹ごしらえにも頼れる一品です。

馬刺し ― 清正ゆかりの「桜肉」を薬味で

熊本が全国に誇る馬肉文化の中心が馬刺しです。加藤清正が朝鮮出兵の際に軍馬を食したのが始まりと伝えられ、帰国後も好んだことから肥後・阿蘇に根づいたとされます。空気に触れると鮮やかな桜色になることから「桜肉」とも呼ばれます。注目したいのは部位の多彩さで、あっさりした赤身、とろける霜降り(中トロ)、コリコリした脂のたてがみ(コーネ)、あばらの三層肉フタエゴなど、一頭から個性の違う味が取れます。地元流は薄切りの赤身に同じ厚みのたてがみを重ね、すりおろしのにんにくや生姜、刻みねぎを添えて甘口しょうゆでいただくスタイル。薬味が脂のキレを良くし、後味がすっきりします。専門店や郷土料理の店で味わうのが本筋で、盛り合わせは内容と部位で価格が大きく動くため、メニューの相場感を見てから頼むのが安心です。

辛子蓮根 ― 細川忠利の養生食、九曜紋の断面

揚げ物の名脇役が辛子蓮根。蓮根の穴に和辛子を混ぜた麦みそを詰め、空豆粉などの衣をつけて菜種油で揚げた一品です。由来は江戸初期、病弱だった肥後藩主・細川忠利のために、羅漢寺の禅僧が滋養のある蓮根を勧め、城の料理人が辛子みそを詰めて供したのが始まりと伝わります。輪切りの断面が細川家の家紋「九曜紋」に似ていたことから、製法は門外不出の藩の秘伝とされ、明治以降に庶民へ広まったといいます。ツンと抜ける辛子の刺激とみその甘み、蓮根のシャキシャキが一度に来るので、ビールにも焼酎にも好相性。城彩苑や商店街の惣菜店、土産物店で輪切り単位やパックで買え、食べ歩きにも持ち帰りにも向きます。値段は店や量で幅がありますが、つまみとして気軽に試せる範囲が目安です。

いきなり団子・朝鮮飴 ― 城下町の甘味で締める

甘いものなら、まずは熊本弁で「手早く・簡単に」を意味するいきなり団子。輪切りのさつまいもを小麦粉やだんご粉の生地で包んで蒸した郷土菓子で、急な来客にもいきなり出せることが名の由来と伝わります。元は素朴な芋だけのものでしたが、近年はさつまいもと小豆あんを一緒に包む形が主流。ほくほくの芋、あんの甘み、生地のほのかな塩気が重なり、一個から気軽に買えるのが食べ歩き向きです。

もう一品、熊本の歴史を映す銘菓が朝鮮飴。もち米と水飴、砂糖を練って長方形に切り、片栗粉をまぶした求肥(ぎゅうひ)系の飴で、安土桃山期には長生飴・肥後飴と呼ばれていました。加藤清正が朝鮮出兵の兵糧に加え、長く携行しても風味が損なわれなかったことから「朝鮮飴」の名がついたと伝わります。江戸期には肥後藩の御用達として献上・贈答に使われた格式ある一品。日持ちするので土産にも向き、城下町・熊本の食べ歩きを締めくくる甘味としてうってつけです。

食べ歩きのコツ

効率よく回るなら、起点は上通・下通のアーケードと熊本城そばの城彩苑。アーケードは雨に濡れず歩け、太平燕や熊本ラーメンの店、辛子蓮根や朝鮮飴を扱う土産・惣菜店がまとまっています。城彩苑は江戸の城下町を模した小路に県内各地の食と土産の店が並び、馬肉やいきなり団子などを少しずつつまむのに便利です。価格はいずれも店や内容で動くため、本稿の相場はあくまで目安として、現地のメニュー表示で確かめてください。由来の異なる名物を一つずつ背景ごと味わえば、熊本市の食べ歩きは観光以上の発見になります。

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Written by

中村 陽子

クラフトジャーナリスト

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