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熊本の地酒と肴|香露に合う熊本県の絶品おつまみ
グルメ
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熊本の地酒と肴|香露に合う熊本県の絶品おつまみ

熊本は西日本有数の米どころであり、清冽な地下水と豊かな食文化が育んだ地酒の産地でもあります。なかでも「香露(こうろ)」は、熊本酵母の発祥蔵として全国の日本酒業界に多大な影響を与えた熊本県酒造研究所が醸す銘酒です。上品な甘みと穏やかな酸、澄み渡るような後味は、「食中酒の理想形」と称されることもあります。本稿では、香露の魅力を改めて掘り下げながら、熊本の食材・料理との絶妙な組み合わせを具体的にご紹介します。

香露とはどんな酒か——熊本酵母の故郷

香露を語るうえで外せないのが「熊本酵母(協会9号)」の存在です。現在、全国の吟醸酒の多くに使われているこの酵母は、熊本県酒造研究所が長年かけて分離・育成したもので、フルーティーな香りと雑味の少ないクリーンな酒質を生み出します。香露はその酵母を直に体感できる唯一の酒であり、いわば「日本酒の教科書」ともいえる存在です。

ラインナップは純米から大吟醸まで幅広く、純米吟醸は透明感のある甘みと清涼感が際立ちます。冷酒(10℃前後)で飲むと吟醸香がふわりと開き、常温ではふくよかな旨みが増す。温度帯によって異なる顔を見せるため、飲み比べも楽しい一本です。価格帯は純米が720ml約1,200円〜、大吟醸が720ml約2,500円〜と、品質に対して手頃な水準です。

馬刺し——香露との黄金コンビ

熊本の肴といえば、まず馬刺しを挙げずにはいられません。赤身のロース、霜降りのたてがみ(コウネ)、コリコリとした食感が特徴のフタエゴ(あばら周辺の二重構造の肉)など、部位ごとに風味も食感も大きく異なります。馬肉は牛肉よりも脂が淡泊で、糖質がほぼゼロ。鉄分・タンパク質が豊富な熊本を代表する健康食でもあります。

香露との相性が特によいのは、たてがみの霜降り部位です。口の中でとろける脂の甘さに、香露の穏やかな酸がさっぱりと寄り添い、後味をすっきりと整えてくれます。薬味には生姜と大蒜のすり下ろしを醤油に溶いた熊本スタイルがおすすめ。この薬味の辛みと香露の甘みがぶつかることなく調和するのは、酒の雑味の少なさゆえです。市内の老舗精肉店では100g単位で購入でき、盛り合わせ1人前(約150g)が1,500円〜2,000円が相場です。

辛子蓮根——揚げたての香りと香露のマリアージュ

熊本の郷土料理として全国区の知名度を誇る辛子蓮根は、蓮根の穴に辛子味噌を詰め、卵黄入りの衣で揚げたものです。サクッとした衣の食感、蓮根のほくほく感、そして鼻に抜ける辛子の刺激が一体となった複雑な味わいは、一度食べると忘れられません。

辛子蓮根のような「辛み×甘み」を持つ料理に対して、香露の上品な甘みはクッションの役割を果たします。辛子の刺激が走った後に一口含めば、口腔内が柔らかくリセットされる感覚があります。揚げたてをいただける居酒屋や惣菜店では、一皿(3〜4切れ)が400円〜600円程度。真空パックのお土産品(600円〜1,200円)も品質が高く、香露と一緒に持ち帰って自宅でペアリングを楽しむのもよいでしょう。

一文字ぐるぐる・れんこん煮——熊本野菜と地酒の深い関係

熊本は農業王国でもあり、特産の野菜を使った郷土料理が数多く存在します。「一文字ぐるぐる」は、ひともじ(分葱の仲間)を湯がいてくるくると巻き、酢味噌で和えたシンプルな一品。春から初夏にかけての旬の時期には、居酒屋の突き出しとして登場することも多く、素朴な甘みと酢の酸味が香露の旨みを引き立てます。

また、熊本産れんこんを甘辛く炊いた「れんこん煮」も名脇役です。九州醤油特有の甘みと、じっくり染み込んだ出汁の風味が、香露の純米クラスとぴたりと合います。根菜の土っぽい旨みに純米の骨格ある甘みが重なり、杯を重ねるごとに深みが増していきます。どちらも家庭料理として親しまれている素朴な料理ですが、地酒との組み合わせでその奥深さが際立つのです。

太平燕とからし高菜——〆の一杯に

熊本の居酒屋で〆の一品として選ばれることも多い太平燕(タイピーエン)は、春雨・野菜・海鮮・揚げ卵などをあっさりした塩スープで仕上げた中華風鍋料理です。もともとは中国福建省の郷土料理が熊本に根づいたもので、今や学校給食にも登場する市民食となっています。

からし高菜は、阿蘇高菜を使った漬物に唐辛子を効かせた熊本の定番漬け物で、ラーメンの薬味としても知られます。ご飯のお供としてはもちろん、日本酒の肴としても優秀で、酸味と辛みのバランスが香露のさっぱりとした後味を呼び起こします。太平燕の温かいスープを一口飲んだ後、香露を口に含むと、アルコールの温感がまろやかに広がり、食事の満足感をひとつ上のステージへ引き上げてくれます。

香露をもっと楽しむために——酒蔵見学と購入ガイド

熊本県酒造研究所は、見学・直売を受け付けており、事前申込制で醸造工程の一端を見ることができます(見学料・試飲込み1,000円前後)。直売所では市内では手に入りにくい限定品や、酒蔵ならではの生酒・槽口直詰めなどが購入可能です。また、熊本市内の老舗酒販店や百貨店の地酒コーナーでも充実した品揃えを誇り、スタッフに相談すれば料理に合わせた銘柄提案をしてくれることが多いです。

持ち帰りの際は、冷暗所もしくは冷蔵保存が基本。特に吟醸・純米吟醸クラスは香りが繊細なため、購入後はなるべく早めに、適温に冷やして開栓するのが理想です。熊本を訪れた際には、馬刺しや辛子蓮根といった地の食材を手元に揃え、香露と静かに向き合う夜を、ぜひ一度体験してみてください。

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Written by

鈴木 一郎

グルメジャーナリスト

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