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金沢のクラフトビール|地元醸造所が生む個性豊かな一杯
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金沢のクラフトビール|地元醸造所が生む個性豊かな一杯

# 金沢クラフトビール紀行―霊峰と清流が育む個性派の一杯

金沢のクラフトビールシーンは、ここ数年で目覚ましい盛り上がりを見せています。白山の霊峰から流れ出る恵みと、犀川・浅野川の清らかな水、そして地元産の農産物を組み合わせて生まれる個性豊かなビールたちは、大手メーカーの製品では決して味わえない特別な一杯といえるでしょう。ひがし茶屋街やにし茶屋街に点在するビアバーで、加賀料理やのどぐろを肴にじっくりと地ビールを味わうひとときは、金沢旅行における最高のご褒美の時間になるはずです。

金沢クラフトビール、いまここに

金沢周辺には石川県を代表するクラフトビール醸造所がいくつも存在し、それぞれが独自の哲学でユニークなビールを生み出しています。仕込み水には白山の霊峰と犀川・浅野川がもたらす伏流水を用い、地元産のホップや副原料を積極的に取り入れる点が、金沢クラフトビール共通の特徴となっています。

金沢でクラフトビール文化が本格的に根付き始めたのは2010年代後半のこと。全国的なクラフトビールブームの追い風を受けながらも、金沢らしさを前面に押し出す醸造所が次々に誕生していきました。加賀百万石の文化都市として、食や酒に強いこだわりを持つ金沢市民の舌の肥え方が、各醸造所のクオリティ向上を後押ししたとも言われています。醸造所直営のタップルームでは、その場でしか飲めない限定ビールを一杯600円〜800円ほどで楽しむことができます。IPAの力強い苦みから、ヴァイツェンの華やかなバナナ香、スタウトの重厚なコク、セゾンの爽やかな酸味まで、スタイルの幅の広さもまた大きな魅力です。年間を通じて10種類を超えるラインナップが用意され、季節限定ビールともなれば発売日のうちに完売してしまうことも珍しくありません。

訪ねてみたい醸造所とタップルーム

金沢でクラフトビールを味わい尽くすなら、まず醸造所そのものを訪れてみるのがおすすめです。にし茶屋街にある醸造所では、予約制の見学ツアー(30分・500円、試飲1杯付き)が人気を集めています。ブルワーから直接ビール造りの工程を教わりながら、できたてのビールを味わえる贅沢な体験です。麦芽の粉砕から糖化、発酵タンクの見学まで、ビール造りの全工程を短時間でわかりやすく解説してもらえる点も好評の理由となっています。見学後には併設のタップルームで、6種類のビール飲み比べセット(2,000円)を堪能できます。一口ごとに異なる味わいを比べながら、自分好みのスタイルを見つけていく楽しさは、醸造所訪問ならではの醍醐味といえるでしょう。

ひがし茶屋街エリアには、クラフトビア専門のバーもあり、石川県内外のクラフトビールが常時15タップ以上そろっています。パイント(580ml)が900円、ハーフパイント(290ml)が550円というのが相場で、気軽に何種類も試せるのがうれしいポイントです。格子造りの町家を生かした店内はレトロモダンな雰囲気に包まれており、旅の疲れを癒しながらゆったりとビールを味わえる心地よい空間が広がっています。

加賀料理・のどぐろとクラフトビールのペアリング

クラフトビールの醍醐味は、なんといっても料理とのペアリングにあります。のどぐろの塩焼きには、ホップの効いたペールエールがよく合い、その苦みが脂の乗った旨みを爽やかに洗い流してくれます。治部煮にはフルーティなヴァイツェンを合わせると、素材の甘みとバナナ様の香りが絶妙なハーモニーを奏でます。また、加賀棒茶を思わせる豊かなモルトの旨味を持つアンバーエールは、その香ばしさが加賀の食文化と深いところでつながっています。

金沢名物の「かぶら寿し」や「大野醤油」を使った料理との組み合わせも見逃せません。発酵食品ならではの複雑な旨味には、セゾンやランビックスタイルのビールが好相性で、発酵同士が共鳴し合うような奥深い味わいが生まれます。甘エビや加能ガニといった北陸の海の幸には、ホップが穏やかで苦みの少ないケルシュやピルスナータイプがよく合い、素材本来の繊細な甘みを損なうことなく楽しめます。

もりもり寿しでは、料理4品それぞれに最適なクラフトビールを合わせたペアリングコース(4,500円)が用意されており、プロによるセレクトを通じて味の組み合わせの妙を存分に体感することができます。ビールのアルコール度数は5〜7%が主流ですが、セッションIPAのように軽めの3〜4%のものもあるため、何杯も楽しみたい方はまずそちらから始めるのがおすすめです。

クラフトビールイベントと季節ごとの楽しみ

金沢では、一年を通じてクラフトビールを楽しめるイベントが数多く開催されています。夏に開かれる「ビアフェスティバル」では、石川県内外から20を超える醸造所が集まり、100種類以上のビールが一堂に会します。入場料は前売り2,000円(当日2,500円)で、専用グラスが付属。各ビールは一杯300円からのトークン制となっているため、気軽にいろいろな味を飲み比べることができます。

秋になると、地元農家と醸造所がコラボレーションした収穫祭連動のイベントが開かれ、収穫したばかりの生ホップを使ったフレッシュホップエールが登場します。生ホップは乾燥ホップとは異なり、青草を思わせる瑞々しい香りが特徴で、年に一度しか出会えない希少な一杯として人気を集めています。冬場のビールバーでは、暖かい室内で重厚なスタウトやバーレイワインを味わう「冬ビール」文化もすっかり定着しました。金沢百万石まつりの時期には限定コラボビールが醸造されることもあり、ラベルデザインにまで金沢らしさが反映された特別な一本は、コレクターズアイテムとしても根強い人気を誇っています。

クラフトビール旅の実践ガイド

金沢でクラフトビールを安全に楽しむためのポイントをまとめておきます。飲酒を伴う旅となるため、移動は公共交通機関を利用するのが基本です。小松空港から市内までは車で約40分、北陸新幹線なら東京から約2時間30分で到着します。ホテルに荷物を預けたあと、15時〜16時頃にタップルームを訪れるのがベストなタイミング。その後ひがし茶屋街のビアバーへ移動し、加賀料理やのどぐろとのペアリングディナーを楽しむプランが理想的な一日の流れとなるでしょう。

予算の目安は一人5,000円〜7,000円程度で、ビール4〜5杯と料理を十分に楽しめる金額です。翌日に醸造所見学を予定する場合は午前中に予約を入れておき、試飲を終えたあとは兼六園やひがし茶屋街の観光へ足を延ばすとよいでしょう。お土産にはボトルビール(一本500円〜800円)がおすすめで、瓶ビールは衝撃を与えないよう衣類などでしっかり包んで持ち帰ると安心です。地元醸造所のロゴ入りグラス(1,200円)は、ビール好きへの贈り物としても喜ばれる一品です。

クラフトビールの世界は奥深く、金沢という土地の個性と職人の情熱が凝縮された一杯には、旅の思い出を何倍にも豊かにする力が宿っています。金沢を訪れた際にはぜひ、地元の醸造所や専門バーに足を運び、この土地ならではのクラフトビール文化を全身で味わってみてください。

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Written by

吉田 麻衣

フォトグラファー

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