グルメ
盛岡のB級グルメ案内|三大麺と福田パンで巡る食べ歩きガイド
「三大麺」で語られる街、盛岡
盛岡のB級グルメを語るとき、最初に出てくるのが「盛岡三大麺」という言葉です。わんこそば・盛岡冷麺・盛岡じゃじゃ麺——出自も食べ方もまるで違う三つの麺が、同じ街の名物として並び立っているのが盛岡の面白いところです。城下町として栄えた歴史、戦後に大陸から引き揚げてきた人々が持ち込んだ味、そして雪国の食欲——いくつもの背景が重なって、この街の麺文化は他のどこにも似ていない厚みを持っています。盛岡駅から北上川に架かる開運橋を渡って大通・肴町方面へ歩けば、三大麺の専門店も老舗も徒歩圏内。一泊二日でも三大麺を踏破できる距離感が、食べ歩きの街としての盛岡を支えています。
盛岡冷麺——焼肉店から生まれた透明な麺
盛岡冷麺は、いわゆる韓国の冷麺とも別物の、盛岡独自の麺です。ルーツははっきりしていて、朝鮮半島の咸興(ハムフン)出身の人物が1950年代に盛岡市内で開いた焼肉店「食道園」で、故郷の咸興冷麺と平壌冷麺を盛岡の口に合うよう作り変えたのが始まりとされています。
特徴は何といっても麺とスープのコントラストです。小麦粉と片栗粉を生地に圧力をかけて押し出す製法でつくられる麺は、半透明でゴムのように強いコシがあり、噛むほどに弾みます。スープは牛骨を主体に取った澄んだ出汁で、見た目はあっさり、飲むと滋味深い。そこにキムチ(カクテキ)の辛味と酸味が加わり、夏にはスイカ、季節によっては梨などの果物がトッピングされるのが盛岡流です。
辛さが不安なら、注文時に「別辛(べつから)」と頼むのがコツ。キムチを別皿で出してもらい、自分のペースで辛さを足していけます。盛岡では冷麺が焼肉店の〆として定着しているため、味わうなら焼肉店併設の冷麺、あるいは冷麺専門店が王道です。一杯あたりおおむね900〜1,300円前後が相場の目安で、専門店ほど麺のコシに個性が出ます。
じゃじゃ麺——〆の「ちーたんたん」まで含めて一品
盛岡じゃじゃ麺は、三大麺のなかでもとりわけ「作法」が問われる一杯です。平打ちの温かいうどんのような麺に、肉味噌・きゅうり・ねぎをのせて出され、卓上のラー油・酢・おろしにんにくを自分で混ぜ込んで味を完成させます。最初の一口で「味が薄い」と感じたら、それは調味料を足す前。混ぜながら自分好みに育てていくのがこの麺の流儀で、地元には「三回食べないと本当のうまさが分からない」という言い回しがあるほどです。
起源は戦後の屋台にあります。旧満州で食べた炸醤麺(ジャージャー麺)を、盛岡市内で1950年代に創業した「白龍(パイロン)」の初代が盛岡の人の舌に合わせて作り変えたのが原型とされ、今では市内に専門店が点在します。
そして盛岡じゃじゃ麺の真骨頂が、食べ終えたあとの〆「ちーたんたん(鶏蛋湯)」です。麺を少し皿に残し、生卵を割り入れて店の人に渡すと、肉味噌と麺の茹で汁を注いで卵スープにして返してくれます。これが客の一言から生まれた即興メニューだったという逸話も、盛岡らしい人情味。じゃじゃ麺一杯はおおむね数百円〜700円前後が目安で、ちーたんたんは数十円程度の追加で頼めるのが一般的。麺とスープで二度楽しめると考えれば、コストパフォーマンスは抜群です。
わんこそば——岩手で味わう「日本三大そば」の一つ
「はい、じゃんじゃん」の掛け声とともに給仕がお椀へ次々とそばを放り込む、あの光景で知られるのがわんこそばです。「わんこ」とは木地の椀を指す方言で、一口大のそばを食べきっては注がれ、満腹で椀のふたを閉めるまで続く——量よりも、給仕とのテンポを楽しむ参加型の食事です。
発祥については花巻説・盛岡説の両方が語られており、南部の殿様に郷土のそばを椀で差し上げたところ何度もおかわりされた、という逸話も伝わります。どちらが本家かは諸説あるものの、わんこそばが長野の戸隠そば・島根の出雲そばと並ぶ「日本三大そば」の一つに数えられ、盛岡で本格的に味わえることは確かです。
一口分が小さいため、10〜15杯でようやく普通のそば一人前ほど。旅行者なら数十杯から、健啖家なら百杯超えに挑む人もいます。薬味やお代わりの作法が店ごとに整えられた専門店で体験するのが安心で、料金は食べ放題形式で一人3,000〜4,000円前後が相場の目安。一人で黙々と食べるより、数人でわいわい杯数を競うほうが断然盛り上がる、いかにもハレの日向きの名物です。
福田パン——盛岡市民のソウルフード「コッペパン」
麺以外に盛岡で外せないのが、コッペパン専門店の「福田パン」です。1948年(昭和23年)に盛岡市長田町で創業した老舗で、岩手大学の学生のお腹を満たすため、コッペパン一個でご飯二膳分のカロリーになるよう大きさを計算したという逸話が残ります。今や市内で一日に万単位のパンを売る、まさに「盛岡市民のソウルフード」です。
最大の魅力は、ふんわり大ぶりのコッペパンに、その場で好きな具材を挟んでもらえること。あんやジャムといった甘い系から、ポテトサラダ・焼きそば・コロッケなどの調理系まで、定番だけでも数十種類、日替わりを含めれば100種類以上から選べます。二種類を組み合わせる注文もでき、不動の一番人気は「あんバター」。価格は具材によりますが一個あたりおおむね200〜400円前後が目安で、ワンコインで二つ三つ買えてしまう手頃さも、市民食として愛される理由です。長田町の本店ではガラス越しに挟む様子を眺めながら待つのも楽しく、朝から地元客が列をつくります。
街歩きと一緒に味わうのが盛岡流
盛岡の食べ歩きは、街の地理を知っておくと一段と楽しめます。盛岡駅から北上川に架かる開運橋を渡った先に広がる大通商店街は、居酒屋や飲食店が密集する盛岡随一の繁華街。さらに中津川の方へ進んだ肴町商店街は、市内で唯一の全天候型アーケード「ホットライン肴町」を備え、雨や雪を気にせず歩けるのが雪国の街ならではです。
季節が合えば、材木町商店街で毎週土曜の夕方に開かれる「材木町よ市」もおすすめ。露店に岩手の野菜や工芸品、地元のB級グルメが並び、焼き物の匂いのなかをそぞろ歩く時間そのものがごちそうになります。三大麺と福田パンを核に、商店街の散策やよ市を絡めて組み立てれば、盛岡のB級グルメは一回の旅では到底味わい尽くせない奥行きを見せてくれます。
この記事のエリアでグルメを探す
RELATED COLUMNS
関連するコラム






