グルメ
高知市B級グルメ食べ歩き案内|藁焼きタタキ・屋台餃子・帽子パン
まずは藁焼きタタキを、炎の立つ場所で
高知市の食を語るうえで外せないのが、カツオの藁焼きタタキです。三枚におろした節の表面を、藁を一気に燃やした大きな炎で炙り、たっぷりのニンニク・ネギ・大葉などの薬味と合わせていただきます。観光客に人気なのが、高知城のふもと・帯屋町に近い屋台村スタイルの「ひろめ市場」。複数のタタキ専門店が軒を連ね、注文を受けてから藁を焚いて仕上げる実演を間近で見られます。買った皿を共用のテーブルへ運び、隣の見知らぬ人と相席で飲む独特の空気も、ここならではの体験です。
高知で覚えておきたいのが、ポン酢ではなく塩でいただく「塩タタキ」。脂より身そのものの旨みを楽しむ食べ方で、市場のタタキ店でも定番として選べます。カツオには旬が二度あり、春に黒潮に乗って北上する「初ガツオ」はさっぱりと、秋に戻ってくる「戻りガツオ」はのった脂が魅力。旅程が春か秋かで味の表情が変わるのも、現地で食べる醍醐味です。タタキ一皿はおおむね数百円〜千数百円が目安で、ビールや地酒と合わせて気軽につまめます。
高知の宴の主役「皿鉢料理」
もう一段ディープな高知の食文化が、皿鉢(さわち)料理です。これは特定の一品名ではなく盛り付けの様式を指し、直径36〜39センチほどの大皿に、刺身やタタキといった海の幸、揚げ物・煮物・寿司・果物・甘味までを一枚に豪快に盛り合わせます。刺身やタタキ中心の皿鉢、寿司の皿鉢、いろいろを少しずつ詰めた「組物」など種類があり、一皿でおおよそ三人前。減ってくると補充され、皿鉢の枚数で宴の規模がわかると言われます。
この皿鉢が振る舞われる宴会そのものを、高知では「おきゃく」と呼びます。起源は藩政時代の武家のもてなしにさかのぼり、明治以降に庶民へ広がったとされ、今も冠婚葬祭や祝い事で生きている文化です。一人旅で大皿は手が出しにくいと感じるかもしれませんが、市内の土佐料理店では一人前に仕立てた皿鉢風の盛り合わせや、複数人向けのコース仕立てを用意する店も多く、人数や予算に応じて土佐の宴の片鱗を味わえます。
〆は追手筋の屋台餃子で
夜遅くまで飲んだあとの〆として高知で根づいているのが、屋台の餃子です。全国的には屋台といえばラーメンの〆が一般的ですが、酒呑みの多い高知では、酒のアテにも〆にもなる餃子が支持され、独自の屋台餃子文化が育ちました。中心市街地では、高知城前を東西に走る追手筋(おうてすじ)の周辺などに屋台が出ます。
高知の屋台餃子は、野菜を多めに使うため水分が多く、皮が薄いのが特徴。その性質ゆえに作り置きができず、注文ごとに焼き上げる店が多いのも納得です。昭和40年代から続く老舗の屋台もあり、皮はパリッと、中はジューシーという対比が酔った胃袋にしみます。一人前で数百円程度が相場で、ビールやハイボールと合わせれば、それだけで気の利いた〆になります。屋台は営業日や場所が日によって変わることもあるため、その晩に出ているかは現地で確かめるのが確実です。
日曜の朝は街路市で食べ歩き
日曜に高知市にいるなら、ぜひ朝から「日曜市」へ。元禄期の1690年に始まったとされ、300年以上続く街路市で、追手筋に約1キロ・400軒超の露店が並ぶ規模は街路市として日本一とされます。野菜や果物、刃物や植木まで何でも揃いますが、旅行者の楽しみはなんといっても食べ歩きです。
その看板格が「いも天」。輪切りや細切りのサツマイモに衣をつけて揚げた、素朴で甘い揚げ菓子で、揚げたてのほくほくを紙袋ごと頬張るのが日曜市流。一袋数百円程度で、歩きながらつまむのにちょうどよいボリュームです。冷やしあめなどの懐かしい飲み物の屋台も出ており、朝の散策に彩りを添えます。
もう一つ、高知らしさが際立つのが「田舎寿司」。魚をほとんど使わず、山里の食材でつくる珍しい寿司です。柚子酢を効かせた酢飯に、りゅうきゅう(はす芋の茎)、みょうが、しいたけ、こんにゃく、たけのこなどを合わせ、彩りも鮮やか。柚子の酸味とみょうがの香りが効いた一口は、海の幸が並ぶ高知の食卓の中でも独特の存在感があります。日曜市の店先や市内の総菜店で手に取れます。
甘いものとパンも高知名物
高知の食べ歩きは、甘味とパンまで個性的です。まず外せないのが「ぼうしパン(帽子パン)」。丸いパン生地にカステラ生地をかぶせて焼いた、つばの広い帽子のような姿のご当地パンで、1950年代半ばに市内の老舗ベーカリーが、メロンパンを焼く際の手違いから生み出したのが始まりと伝わります。ふんわりした中央と、甘く香ばしいつばの食感差が魅力。市内のパン店や直営店で買え、価格は一般的な菓子パンと同程度です。
暑い季節に高知の街角で見かけるのが、カラフルなパラソルの下で売られる「アイスクリン」。乳脂肪分が控えめで、シャリッとした氷菓に近い口当たりと素朴な甘さが特徴です。大正期には高知に多くの職人がいて組合を結んだほど根づいた商売で、今もこれだけ街頭で当たり前に売られているのは高知ならでは。一個数百円ほどで、観光の合間のクールダウンに最適です。
土産にも食べ歩きにも向くのが「芋けんぴ」。サツマイモを細切りにして揚げ、砂糖蜜をからめた高知発祥の郷土菓子です。台風が多く水はけのよい土地でサツマイモ栽培が盛んだった高知ならではの菓子で、海洋深層水の塩を使った「塩けんぴ」など、甘じょっぱい派生も人気。カリッとした歯ごたえは一度食べ始めると止まりません。
食べ歩きの実用メモ
高知市の食の拠点は、JR高知駅から路面電車(とさでん交通)で数分の帯屋町・はりまや橋周辺に集まります。ひろめ市場や繁華街、日曜市の開かれる追手筋もこの徒歩圏で、宿をこのあたりに取れば移動が楽です。藁焼きタタキは昼から、皿鉢を出す土佐料理店は夜、屋台餃子は深夜、日曜市は日曜の早朝〜午後と、名物ごとに「旬の時間帯」が異なるのがこの街の面白さ。価格はいずれも特定店ごとに違うため、本文の数字はあくまで相場の目安として、現地の表示で確かめてください。藁の炎、大皿の宴、屋台の湯気、朝市の揚げたて——高知市の食は、味だけでなく場の空気ごと楽しむのが正解です。
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