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神戸さんぽ|北野の坂から旧居留地・元町へ、海と山を結ぶ歴史散策コース
観光・体験
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神戸さんぽ|北野の坂から旧居留地・元町へ、海と山を結ぶ歴史散策コース

海と山にはさまれた「坂の街」を歩く

神戸の街歩きを面白くしているのは、その独特な地形です。背後に六甲の山並みがそびえ、目の前には神戸港が広がるため、市街地は東西に細長く、南北の道はほとんどが坂になっています。地元では山の側を「山手(やまて)」、海の側を「海手(うみて)」と呼び分けますが、散策の基本は山手の高台から海手へ向かって下りていくこと。標高の高い北野の異人館街を出発点に、坂を下りながら旧居留地・元町・南京町へとたどれば、上り坂で息を切らすことなく、神戸の開港以来の歴史を順番に読み解けます。山と海の距離が近いからこそ、一日で性格の違う街並みをはしごできる——これが神戸さんぽの醍醐味です。

北野異人館街——坂の上に残る異国の街並み

散策はまず、街のいちばん高いところにある北野異人館街から。明治の開港後、外国人たちが暮らした北野町・山本通の一帯には、今も洋館がまとまって残り、「神戸市北野町山本通伝統的建造物群保存地区」に指定されています。洋風建築が三十数件、和風建築も数件が混在する、独特の景観です。

シンボルは国指定重要文化財の風見鶏の館(旧トーマス住宅)。レンガ外壁とドイツ伝統様式の意匠が美しく、屋根の上の風見鶏は北野のアイコンになっています。すぐ隣には、明治36年(1903年)にアメリカ総領事の邸宅として建てられた重要文化財の萌黄の館。その名のとおり萌黄色の外壁が印象的で、サンルームからは坂下の街並みが見渡せます。さらに坂を上がると、天然石のスレートを約4,000枚も葺いた外壁が魚のうろこに見えるうろこの家。神戸で最初に一般公開された異人館として知られ、その先には山手八番館や坂の上の異人館も控えています。

北野へは三宮方面から北野坂をまっすぐ上って徒歩15〜20分ほど、新神戸駅からなら約1km・徒歩10分前後が目安です。イギリス人実業家ハンターの邸宅にちなむハンター坂や、勾配と階段が混じるトーマス坂など、坂そのものに名前と物語があるのも北野ならではです。

トアロード——山手と海手を一本で結ぶ坂

北野からの下り道に選びたいのが、トアロードです。山手の北野と海手の旧居留地を南北に結ぶ全長およそ1kmの坂で、高低差はおよそ40m。もともとは「三宮筋」と呼ばれていましたが、明治40年(1907年)、坂の上に開業した外国人向けの「トアホテル」へ続く道として、いつしかトアロードの愛称が定着しました。

この道は、外国人たちのビジネスの場だった居留地と、生活の場だった北野とを結ぶ生活道路として発展しました。そのため西洋の暮らしぶりが早くから持ち込まれ、仕立て屋(テーラー)や洋装店、洋食レストラン、カフェなどが軒を連ねる、ハイカラで洗練された通りになっていきました。今もその面影を残す個性的な店が点在し、坂を下りながら左右の店をのぞいて歩くだけで、神戸の「ハイカラ文化」の出どころを体感できます。

旧居留地——格子の街区に立つ近代建築群

トアロードを下りきると、神戸でもっとも「都会の歴史」を感じる旧居留地に出ます。1868年の神戸港開港にあわせ、外国人が住み働く区画として整備されたエリアで、イギリス人技師の設計による碁盤目状の街路が今も残ります。1899年に日本へ返還されたのち、大正から昭和初期にかけて多くの企業が進出し、重厚な近代オフィスビルが次々と建てられました。

散策は大丸神戸店のあたりを起点にするのがわかりやすく、神戸市立博物館までは1km弱。写真を撮りながらでも30分〜1時間ほどでひとまわりできます。見逃せないのが、居留地時代の建物として唯一現存する旧居留地十五番館。1880年頃に建てられた旧アメリカ領事館で、開放的なベランダをもつコロニアル様式が特徴です。阪神・淡路大震災で全壊しましたが、元の部材の約7割を使い、免震構造を取り入れて建設当初の姿に復元されました。神戸市立博物館は昭和10年(1935年)築の旧横浜正金銀行神戸支店を転用した建物で、列柱の並ぶ堂々とした外観そのものが見どころです。さらに南の海岸通へ足を延ばせば、商船三井ビルディングや海岸ビルヂングといった大正・昭和の名建築が連なり、屋外の建築博物館を歩くようです。

元町商店街から南京町へ——庶民の街の歴史散策

旧居留地のすぐ西側は、神戸の「元(もと)」となった町・元町です。アーチ型のゲートをくぐると、ドーム形のアーケードがおよそ1.2kmにわたって続く元町商店街。日本で最初に造られたアーケード商店街とされ、ファッションや雑貨、老舗の喫茶など約300店舗が軒を連ねます。入口を彩るステンドグラスの装飾も含め、戦後神戸の歩みがそのまま街並みになったような通りです。

そのアーケードの途中から南へ一歩入ると、空気が一変して南京町——日本三大中華街のひとつに数えられる神戸の中華街です。東の長安門から西の西安門まで、東西およそ280mの通りに中華料理店や食材店、雑貨店がびっしりと並びます。歩きながら楽しむなら、点心や肉まん、小籠包といった食べ歩きグルメが中心で、手のひらサイズの軽食はおおむねワンコイン前後が相場。少しずつ味わいながら、提灯と看板でにぎわう通りを抜けるのが南京町らしい歩き方です。

相楽園——街なかの日本庭園でひと息

洋館と近代建築を歩き続けたあとは、趣ががらりと変わる相楽園(そうらくえん)で締めくくるのがおすすめです。神戸市の都市公園で唯一の本格的な日本庭園で、約2万平方メートルの敷地に池泉回遊式の庭が広がります。飛石や石橋、滝石組をたどる園内は、すぐ外が市街地とは思えないほど静かです。

ここにも神戸らしい異文化の重なりがあります。庭園の一角に立つ重要文化財の旧ハッサム住宅は、明治35年(1902年)にインド系イギリス人貿易商ハッサム氏の邸宅として建てられた異人館で、もとは北野から移築されたもの。和の庭に洋館がたたずむ景色は、神戸という街の成り立ちそのものです。江戸時代の川御座船の屋形を伝える「船屋形」や、明治の馬屋「旧小寺家厩舎」も園内に残ります。春のつつじ、秋の紅葉、冬の牡丹と、四季で表情を変えるのも魅力。JR・阪神元町駅から北西へ徒歩約10分、地下鉄県庁前駅からは徒歩約5分でたどり着けます。

歩く前に知っておきたいこと

神戸さんぽの基本動線は、北野(山手)→トアロード→旧居留地→元町・南京町(海手)と、北から南へ下る一本道。異人館から近代建築、中華街商店街へと街の表情が次々に移り変わるので、所要は見学を含めて半日ほどでも飽きません。北野は坂と石畳が多いため、歩きやすい靴は必須です。

最後に港の景色まで楽しみたいなら、元町から海手へさらに南下してメリケンパークの水際へ。ここからハーバーランドまでは海沿いの遊歩道を徒歩7〜8分でつなげられ、神戸ポートタワーを望む港町の眺めが散策の締めくくりにぴったりです。坂を下りきった先に海が広がる——その瞬間に、神戸が「海と山の街」であることをいちばん実感できるはずです。

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Written by

吉田 麻衣

フォトグラファー

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