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松山の和菓子めぐり|伝統の銘菓から新作まで
松山の和菓子文化は、夏目漱石「坊っちゃん」の舞台として知られるこの街の歴史と、3,000年の歴史を持つ道後温泉という日本最古の温泉文化に深く根ざしています。四国の雄藩・松山藩のお膝元として茶道文化が栄えた土地柄もあり、和菓子はその美意識と食文化の結晶として今も市民の暮らしに息づいています。道後温泉街から大街道、銀天街にかけてのエリアには老舗の和菓子店が点在し、それぞれが職人の技と心意気を感じさせる逸品を揃えています。お茶と共にゆったりと味わう和菓子の時間は、松山旅の隠れたハイライトになるでしょう。
松山和菓子の歴史と文化的背景
松山の和菓子文化が花開いたのは江戸時代のこと。松山藩が奨励した茶道文化とともに、上質な和菓子を求める素地が醸成されました。愛媛は全国有数の柑橘の産地であり、伊予柑・みかん・甘夏といった果物が和菓子の素材として古くから活用されてきました。また、石鎚山系に源を発する清冽な水と、温暖な瀬戸内気候が良質な小豆や米の産地を育み、これが松山の和菓子の質を底上げしてきたと言われています。
道後温泉との結びつきも見逃せません。全国から湯治客が訪れるこの温泉地では、旅の土産として和菓子が重宝され、各店が競うように銘菓を磨き上げてきました。温泉の湯を使った餡炊きや、道後の湯をイメージした意匠の練り切りなど、温泉地ならではの発想が松山和菓子のユニークさにつながっています。そうした積み重ねが、現代の松山を四国有数の和菓子どころとして押し上げているのです。
老舗の看板銘菓を訪ねて
松山で長年愛されてきた銘菓をいくつかご紹介します。まず外せないのが「労研饅頭たけうち」の看板商品です。創業以来のレシピを忠実に守り続けるこの饅頭は、一個200円前後と手頃ながら、その風味と食感は年季の入った職人技の賜物。白あんをしっとりした薄皮で包んだシンプルな構成の中に、深い滋味が宿っています。地元松山の人が帰省のたびに必ず買い求めるという、真の意味での郷土菓子です。
大街道エリアの老舗では、しまなみ海道の多島美と石鎚山の雄姿をモチーフにした練り切りが人気を集めています。一個320円で、四季の移ろいとともにデザインが変わる上生菓子は、まるで小さな風景画のよう。職人が指先だけで整形する繊細な造形美は、食べてしまうのがもったいないと感じさせるほどです。
道後温泉街エリアでは、温泉の湯で炊き上げた餡を使った温泉饅頭が散策のお供として定番。一個180円というリーズナブルな価格で、しっとりとした食感と深みのある甘さが疲れた足を癒してくれます。温泉街の石畳を歩きながら食べ歩きするのが地元流のたしなみ方です。
甘味処でくつろぐ至福の時間
和菓子は買って帰るだけでなく、甘味処でゆったりと楽しむのが松山流の醍醐味です。銀天街周辺の甘味処では、抹茶と上生菓子のセットが880円ほどで楽しめます。畳の座敷や小庭を眺めながらいただく抹茶の一服は、商店街の喧騒が嘘のような静寂に包まれ、日常を忘れさせてくれます。
道後温泉本館の近くには、砥部焼の器で季節の和菓子と煎茶を提供する茶房があります。セット750円前後で、愛媛が誇る伝統工芸品の器の美しさも相まって、五感すべてで和菓子を堪能できる体験は格別です。砥部焼の白磁に映える鮮やかな練り切りの色彩は、見る者の目を楽しませてくれます。訪問は午後2時前後が比較的空いており、ゆったりと過ごせます。
夏の季節には宇治金時かき氷(680円前後)が登場し、ふわふわの氷に自家製あんこと白玉が贅沢に乗った一品は行列必至。暑い松山の夏を和菓子で乗り切る、地元ならではの文化です。
新世代の和菓子クリエイターたち
近年、松山では若い和菓子職人たちが新しい風を吹き込んでいます。三津浜など市内の各所にオープンした和菓子アトリエでは、伝統の技法を土台にしながら、フルーツや洋菓子素材を大胆に取り入れた創作和菓子が話題を集めています。
旬の大粒いちごを求肥で優しく包んだいちご大福(一個350円)は、果汁があふれるジューシーさが魅力。カカオの苦みと小豆の甘みが絶妙にマッチしたチョコレート羊羹(一本1,200円)は、洋菓子好きの方へのギフトとしても喜ばれています。また、光を受けると宝石のように輝く琥珀糖は見た目の美しさからSNSでも注目を集め、若い世代を中心に新たな和菓子ファンを生み出しています。
こうした新世代の和菓子は、老舗の伝統と決して対立するものではなく、むしろ裾野を広げる存在として共存しています。松山の和菓子シーンは今まさに、守るべきものと挑戦すべきものが交差する、最も豊かな時期を迎えていると言えるでしょう。
季節を楽しむ松山の和菓子歳時記
松山の和菓子には、四季の風物詩を映した歳時記があります。春は道後の桜をかたどった淡紅色の上生菓子や、道明寺の桜餅が店頭を飾ります。夏は水羊羹や葛切りで清涼感を演出し、柑橘を使ったゼリー菓子も愛媛らしい一品です。秋は栗きんとんや芋羊羹、冬は松山の風物詩・椿をあしらった練り切りが並び、訪れるたびに異なる顔を見せてくれます。
また、松山まつりや道後温泉まつりの時期には限定の祭り菓子が登場し、地元の人々が行列を作る光景も見られます。旅行者にとっては、その季節にしか出会えない一期一会の和菓子を探す楽しみも生まれます。
和菓子土産の選び方ガイド
松山の和菓子をお土産に選ぶ際には、いくつかのポイントを押さえておくと失敗しません。日持ちを重視するなら、干菓子や焼き菓子系を選びましょう。2週間以上保存できるものが多く、職場への配り土産(一箱1,000〜2,000円)にも向いています。
大切な方への贈答には、老舗の上生菓子詰め合わせ(3,000〜5,000円)が格別の喜ばれ方をします。ただし、生菓子は日持ちが2〜3日と短いため、帰宅当日に手渡せる場合に限定するのが無難です。購入場所については、道後温泉・松山城周辺の観光土産店よりも、大街道エリアの各店本店で購入する方が種類が豊富で、職人こだわりの限定商品に出会えるチャンスも高くなります。夏場は保冷バッグを持参し、購入時に保冷剤の有無を確認しておくと安心です。
松山の和菓子は、単なるお菓子ではなく、この土地の歴史・自然・職人の矜持が凝縮された文化遺産です。ぜひ一軒一軒の店に足を運び、職人の技と心意気を舌で感じてみてください。
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