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横浜 三溪園
Photo: Robert Huffstutter from Kansas City, Missouri / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
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横浜の喧騒を離れた静寂の中に、時代を超えた日本の美が息づく。横浜市中区本牧にある三溪園は、明治・大正期の実業家・原三溪が私財を投じて造営した日本庭園で、都市の中にありながらも訪れる者を別世界へといざなう、横浜が誇る隠れた名園だ。

実業家・原三溪が遺した文化の殿堂

三溪園の生みの親である原三溪(本名:富太郎)は、1868年に岐阜県で生まれ、横浜の生糸貿易商・原善三郎の孫婿となったことで横浜に根を下ろした人物だ。明治から大正にかけて製糸業で巨万の富を築いた原は、その財力を文化・芸術の振興に惜しみなく注いだ。1906年(明治39年)には内苑を一般公開し、1914年(大正3年)には外苑も開放。横浜市民のための文化的空間として、三溪園はその歩みを始めた。

原は単なる富豪ではなく、優れた審美眼を持つ文化人でもあった。横山大観や下村観山など近代日本画の巨匠たちとも深く交流し、三溪園はアーティストたちが集うサロンの役割も果たしていた。原の死後、1953年には財団法人三溪園保勝会に引き継がれ、現在も多くの人に親しまれる日本庭園として維持・管理されている。

京都・鎌倉から集められた歴史的建造物

三溪園の最大の特徴は、約17.5万平方メートルの広大な敷地に点在する歴史的建造物の数々だ。京都・鎌倉・紀州などから移築された建造物は17棟を数え、そのうち10棟が国の重要文化財に指定されている。

なかでも園内の象徴的な存在が、1457年に建てられたとされる旧燈明寺三重塔だ。京都・木津川市から移築されたこの塔は、大池の水面に映るその姿が格別に美しく、三溪園を代表する景観として写真愛好家たちを魅了してやまない。また、旧西山艸堂(きゅうにしやまそうどう)は、17世紀末に建てられた農家建築で、茅葺き屋根の素朴な風情が庭園の景色に溶け込んでいる。

内苑に位置する鶴翔閣(かくしょうかく)は、原三溪の私邸として使用されていた大型建造物で、明治期の和風建築の粋を今に伝える。特別公開日には内部を見学できる機会もあり、当時の暮らしぶりを垣間見ることができる。これほどの数の歴史的建造物が一つの庭園に集約されている例は全国でも珍しく、三溪園は「屋根のない博物館」とも称される。

四季折々に彩られる庭園の表情

三溪園の魅力は、訪れる季節によって全く異なる表情を見せることにある。

春の到来を告げるのは、2月から3月にかけての梅の季節。白梅・紅梅が園内に清冽な香りを漂わせ、早春の訪れを感じさせる。3月下旬から4月初旬には桜が咲き誇り、三重塔や歴史的建造物と桜の競演は、訪れる人々の心を奪う絶景となる。夜桜のライトアップも開催され、昼間とは一変した幻想的な雰囲気を味わえる。

夏の見どころは、7月から8月にかけて大池を覆い尽くす蓮の花だ。早朝に花を開く蓮を観賞するため、夏の時期には早朝開園が行われる。朝もやの中で咲く白やピンクの蓮の花は、まるで極楽浄土を思わせる幽玄な光景だ。

そして秋、11月から12月にかけての紅葉シーズンは、年間を通じて最も多くの来園者が訪れる時期となる。イチョウやモミジが黄金色・深紅に染まり、池の水面に映り込む紅葉の美しさは息をのむほどだ。夜間の紅葉ライトアップ「観楓会(かんぷうかい)」では、幻想的な光の演出の中で日本の秋の美を堪能できる。冬には侘び寂びの静寂が園内を包み、雪が積もった日には別の顔を見せる。

園内の歩き方とおすすめコース

三溪園は大きく「外苑」と「内苑」に分かれており、それぞれ異なる雰囲気を楽しめる。外苑は開放的な芝生広場や大池を中心とした回遊式庭園で、三重塔の眺望が楽しめる。内苑は原三溪が特に力を入れた区画で、繊細に作り込まれた茶庭や数寄屋建築が集まり、より本格的な日本庭園の様式美を体感できる。

標準的な見学には1時間半から2時間程度を見ておくとよい。ゆっくりと建造物をめぐりながら季節の花々を愛でるなら、3時間程度の余裕を持つのが理想だ。園内にはカフェ・レストラン「三渓亭」があり、抹茶や和菓子のほか、食事も楽しめる。茶席での一服は、日本庭園の雰囲気をより深く味わう体験となるだろう。

また、春と秋の特別公開期間には、普段は非公開の建造物の内部を見学できるイベントが開催される。訪問前に公式サイトで開催情報を確認しておくと、より充実した見学ができる。

アクセスと周辺情報

三溪園へのアクセスは、横浜市営バスを利用するのが一般的だ。JR根岸線「根岸駅」または横浜市営地下鉄ブルーライン「上大岡駅」からバスで約10〜15分、「三溪園前」バス停で下車すればすぐに到着する。横浜駅・桜木町駅からもバスが運行しており、観光の足として使いやすい。マイカーでの来園は、隣接する駐車場が利用可能だ。

周辺エリアには、横浜港の歴史を感じられる「本牧市民公園」や、横浜の海を一望できる「本牧ふ頭」も近い。みなとみらい地区や中華街など横浜の主要観光スポットからもほど近く、横浜観光の際に組み合わせて訪れることができる。

開園時間は9時から17時(入園は16時30分まで)で、無休で開園しているが、年末年始や特定の日に臨時休園となることもある。入園料は大人500円と、これほどの規模の庭園にしては良心的な価格設定だ。横浜観光の際には、ぜひスケジュールに加えてほしい名園である。

アクセス

JR根岸駅からバス10分

営業時間

9:00〜17:00

料金目安

¥700(入園料)

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