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大谷寺・大谷観音

大谷寺・大谷観音

※写真はイメージです。

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栃木県宇都宮市大谷町に佇む大谷寺は、日本最古の石仏「大谷観音」を本尊とする天台宗の古刹である。大谷石の巨岩が織りなす渓谷に守られるように建ち、石仏・伝説・歴史の三層が積み重なったこの地は、参拝者だけでなく歴史や文化に関心を持つ旅人を絶えず引き寄せてきた。「大谷石文化が息づくまち宇都宮」として日本遺産に認定されたエリアの核でもある。

日本のシルクロード――千手観音が刻まれた経緯

本堂の岩壁に直接彫り込まれた千手観音(高さ約4メートル)は、奈良時代末期に制作されたと伝わる。長らく「平安時代810年に弘法大師が彫った」という伝承が信じられてきたが、近年の研究でアフガニスタンのバーミヤン石仏との造形的共通点が確認され、シルクロードを経由した僧侶の手による作品である可能性が浮上した。「日本のシルクロードと呼ばれる千手観音」という表現はまさに言い得て妙で、中央アジアの美術様式が日本の山中の岩壁に息づいているという発見は、大谷寺をただの地方寺院に留めない。

造像当初、観音の表面は朱で塗られ、粘土で細部を整え、漆を重ねた上に金箔が貼られ、金色に輝いていたという。現在の素朴な岩肌とはまるで異なる姿であったことを想像しながら手を合わせると、時の厚みを改めて実感する。

弘法大師と地獄谷の伝説

かつてこの一帯は「地獄谷」と呼ばれていた。岩壁に囲まれた谷の奥から毒蛇が棲みつき、毒水を流して鳥獣を死に至らしめ、人々の病を招き、五穀を枯らしたと伝えられる。810年ごろ、東国を巡錫中の弘法大師がこの惨状を聞きつけ、十余日をかけて谷に入り毒蛇を退治。人々が谷を覗くと、高い岩壁に光り輝く千手観音が刻まれており、その光明が山谷を金色に染めた――これが大谷寺の創建説話である。今も池の中央には弁財天が祀られており、毒蛇が改心して白蛇となり仕えているとされる。参拝後に白蛇の頭に触れると縁起が良いとされ、境内散策の楽しみのひとつになっている。

東の磨崖仏――10体の石仏と文化財指定

千手観音を含む本堂の石仏群は、脇堂に安置された釈迦三尊・薬師三尊・阿弥陀三尊を加えた計10体で構成される。これらは日本の石像彫刻のなかでも技巧の高さが際立つとして、1954年(昭和29年)に国の特別史跡に、1961年(昭和36年)には重要文化財に指定された。大分県の臼杵磨崖仏が「西の磨崖仏」と称されるのに対し、大谷寺の石仏群は「東の磨崖仏」として美術史的にも並び称される存在である。お堂内部は撮影禁止となっているため、肉眼でじっくりと向き合う時間が自然と生まれる。

平和観音――岩壁に刻まれた27メートルの祈り

境内を出て少し進むと、岩壁から彫り出された高さ27メートル(88尺8寸8分)の「平和観音」が目に飛び込む。太平洋戦争の戦死戦没者の供養と世界平和を祈念して制作されたもので、1948年(昭和23年)に東京芸術大学教授・飛田朝次郎氏が設計・制作に着手。大谷の石工たちが6年の歳月を費やして1954年(昭和29年)に完成させ、1956年(昭和31年)には日光輪王寺門跡・菅原大僧正によって開眼供養が執り行われた。現在は宇都宮市公園として管理され、誰でも自由に参詣できる。

大谷石の淡い緑灰色の岩肌から生まれたその姿は、見る角度や季節の光によって表情を変える。春の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、背景となる山の色が変わるたびに観音像の存在感も変化する。

御止山と徳川家・大正天皇との縁

寺の背後に広がる御止山は、大谷石の奇岩群と赤松が織り成す景観が「陸の松島」と称えられ、2006年(平成18年)に国の名勝に指定された。栃木県内では日光の「華厳の滝」に続く2例目という格式を誇る。

「御止山(おとめやま)」という名の由来は江戸時代にさかのぼる。当時は日光輪王寺宮の御用山として秋に松茸狩りが行われており、一般人の立ち入りが禁じられていた。江戸時代初期には徳川家康の長女・亀姫が江戸と日光を結ぶ中継所として大谷寺を復興し、歴代輪王寺宮の休憩・宿泊所として機能したことから、寺紋には「菊の紋」と「葵の紋」の双方が用いられている。大正天皇も度々参詣しており、山頂にはかつてお手植えの松があった(現在は記念碑)。現在も登山は可能だが、自然景観保護のため安全柵等は設置されておらず、足元の良い履物で訪れることが案内されている。

坂東霊場の19番札所として

鎌倉時代から坂東三十三観音の第19番霊場として知られ、御詠歌「名を聞くも めぐみ大谷の観世音 みちびき給え 知るも知らぬも」が今も唱え継がれている。御朱印は坂東札所専用帳面への直書きが可能で、巡礼者にとって欠かせない一寺となっている。春のつつじ・すずらん、夏の弁天堂の水辺、秋の紅葉、冬の雪景色と四季ごとに境内の表情が変わり、巡礼目的でなくとも繰り返し訪れたくなる場所だ。

アクセス

JR宇都宮駅西口から関東バス大谷立岩行きで30分、バス停「大谷観音前」下車、徒歩3分。自動車の場合は東北自動車道宇都宮ICから国道293号経由で8km、約10分。

営業時間

4月~9月: 8:30~16:30、10月~3月: 9:00~16:30 / 定休日: 木曜日(祝日は営業)、12月26日~31日 / 受付は20分前に終了

料金目安

大人500円、中学生200円、小学生100円 / 団体割引(25名以上): 大人400円、中学生150円、小学生70円

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