
こまめ食堂
GALLERY
小豆島のちょうど中央に位置する中山地区。農林水産省「棚田百選」に選ばれた石積みの棚田を見渡せる山間に、こまめ食堂は静かに佇む。昭和初期から地域の暮らしを支えた精米所をそのまま活かした建物で、「究極」でも「特別」でもない、いつもの味・ふるさとの味・小豆島の味を届けることを哲学に掲げる。
瀬戸内国際芸術祭から生まれた、島の灯り
こまめ食堂の出発点は2010年の瀬戸内国際芸術祭だ。100日間で90万人もの旅人が海を渡った夏、セミオフィシャルショップとして誕生したこの店は、芸術祭の閉幕とともに一度幕を下ろした。しかし「寂しくなったね。ほどほどでいいんだけど」という地元のおばあちゃんたちの言葉が、再出発の原動力となった。「ほどほどに忙しく、ほどほどにぎわいがある」お店を目指して再び扉を開いたのが、今のこまめ食堂だ。
芸術祭が「ハレ」の日なら、ここが伝えたいのは「ケ」の日——特別ではない日常の豊かさ。その言葉は店のあり方そのものに染み込んでいる。
棚田百選の米と銘水が生む「おにぎり定食」
看板メニューの「棚田のおにぎり定食」は、こまめ食堂でしか味わえない一皿だ。使う米は、食堂の目の前に広がる中山の棚田で丹精込めて育てられたもの。その棚田は1000年以上の歴史をもち、農林水産省の棚田百選(1999年選定)にも名を連ねる。炊くのは、棚田上流域から湧き出る「湯船の銘水」——名水百選にも選ばれた湧水で、日量約600トンを誇る。この豊かな水と、島特有の風が生む激しい寒暖差が、「魚沼産こしひかりと同等」とも評価されるほどの米を育てる。握りは小豆島の天然塩のみ。素材の力を引き出すシンプルさが、このおにぎりの全てだ。
定食のおかずは季節ごとに変わる近海の魚が主役。冬はカレイやシタベラメ、春はサワラ、夏から秋にかけては鯛やツバス、エビ・タコ・イカのフライが並ぶ。きんぴらや酢の物、南京の煮物、ナスの田楽など、手作りの総菜も季節の畑から。「食べ物との距離が近いことが一番のおいしさ」という言葉通りの食卓だ。
グルメ以外にも、オリーブ牛ハンバーガー・素麺・アイス・コーヒーも揃い、テイクアウトやお弁当にも対応する。
昭和初期の精米所が宿すもの
建物は地域の自治会が所有権を引き継ぎ、DREAMISLAND が運営する形で再生した。修復のテーマは「RE-SORT(元の状態に並べかえる)」——傷んだ部分には手を入れながら、歳月が刻んだ木や土壁の表情はそのまま残した。天井に残る大きな車輪状の精米機械と、入口のレトロな看板がかつての精米所の証しだ。
棚に並ぶのは、納屋の掃除で出てきた昭和のノベルティグッズたち。トムとジェリーのブーツグラス、アラレちゃんグラス、ディズニーキャラクター、三ツ矢サイダーのオリジナルグラス——どれも磨き直されて、ここだけのアートとして息を吹き返している。畳の下の床板は看板や家具へ、納屋に眠っていた酒ケースは椅子やテーブルの脚へと姿を変えた。捨てずに活かす、島の知恵そのものの空間だ。
予約と訪問のヒント
予約は当日朝9時〜11時の電話受付のみ(事前予約は不可)。来店は予約時刻の5分前までが必須で、遅れるとキャンセルとなる。営業時間は11時〜15時(ラストオーダー14時)、定休は火曜と木曜が基本だが詳細は公式サイトのカレンダーで確認を。
駐車場は近隣の小学校グラウンドで、食堂まで約200メートル。棚田の風景を眺めながらの徒歩移動が小さな旅になる。バスは土庄港・池田港から「中山線」に乗り「中山春日神社前」で下車すれば、バス停のすぐ隣が食堂だ。中山地区は棚田の石積み道を歩くだけでも絵になる場所。食後にのんびりと棚田を散策する時間も、こまめ食堂の旅の一部として組み込んでほしい。
アクセス
土庄港からバス中山線乗車→「中山春日神社前」下車(バス停の隣)。土庄港からは自転車で片道8km
営業時間
11:00〜15:00(ラストオーダー14:00)、定休日: 火曜・木曜
店舗詳細
- 対応言語
- 日本語
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