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金沢の歴史散策コース|茶屋街・庭園・用水沿いを歩く城下町さんぽ
観光・体験
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金沢の歴史散策コース|茶屋街・庭園・用水沿いを歩く城下町さんぽ

用水と石畳がつなぐ城下町を歩く

金沢は、戦災や大きな天災をほとんど免れたため、加賀百万石の城下町の骨格がそのまま残る、全国でも数少ない街です。だからこそ金沢の魅力は車窓からではなく、自分の足で路地に分け入ってこそ見えてきます。藩政期に城下へ引かれた用水が今も街なかを流れ、その水音をたどるように石畳の小径が伸びる——金沢は「歩いて読み解く街」なのです。

このコラムでは、犀川の河川敷を走るランニングや、愛犬との散歩とは少し趣の違う、茶屋街・庭園・用水沿いの武家屋敷をめぐる歴史散策に絞って、金沢ならではの三つのコースを紹介します。いずれも半日あれば歩いて回れる距離感で、起伏は穏やか。歩きやすい靴さえあれば、ガイドブックの点と点が一本の物語につながっていきます。

浅野川沿い、二つの茶屋街と坂の道

まずおすすめしたいのが、浅野川(あさのがわ)沿いの散策です。金沢には三つの茶屋街がありますが、なかでもひがし茶屋街は紅殻格子(べんがらごうし)の町家が石畳の通りに連なり、加賀百万石の風情がもっとも色濃く残るエリア。重要伝統的建造物群保存地区に指定された一角を、ゆっくり歩くだけで時代が巻き戻るようです。

ひがし茶屋街から浅野川大橋を渡れば、対岸に主計町(かずえまち)茶屋街。その距離はわずか約350メートル、徒歩5分ほどです。浅野川大橋・梅ノ橋・中の橋という風情の異なる三つの橋が架かり、川面に映る茶屋の灯りが、「女川」と呼ばれる浅野川のやわらかな景色をつくります。

主計町の見どころは、川沿いから一歩奥に隠れた坂道です。久保市乙剣宮(くぼいちおとつるぎぐう)の境内を抜けて主計町へ下る石段が暗がり坂。かつて旦那衆が人目を忍んで茶屋へ通った抜け道で、金沢に生まれた文豪・泉鏡花が幼い頃に通った道としても知られます。そのすぐ近くには、作家・五木寛之が自作の小説にちなんで名づけたあかり坂もあり、二本の坂を上り下りするだけで物語の余韻に浸れます。茶屋街と橋と坂をひとめぐりして、所要およそ1時間です。

加賀百万石回遊ルートで庭園をめぐる

金沢散策の王道は、やはり庭園です。日本三名園のひとつ兼六園は、「宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望」という、相反する六つの景観を兼ね備えることからその名がつきました。霞ヶ池のほとりに立つことじ灯籠、冬に縄を張る唐崎松の雪吊りなど、季節ごとに表情を変える園内は、ひと回りするだけで小一時間。広い園路はほぼ平坦で、歩くほどに景色が次々と切り替わります。

兼六園から石川橋を渡れば、目の前が金沢城の搦手門・石川門。重要文化財の門をくぐって金沢城公園へ入れば、五十間長屋や菱櫓が連なる広大な城内が広がります。さらに復元された玉泉院丸庭園(ぎょくせんいんまるていえん)へ下り、鼠多門橋(ねずみたもんばし)を渡ると、加賀藩祖・前田利家公を祀る尾山神社へ。和・漢・洋の様式が混ざり合った神門は重要文化財で、最上部にはめ込まれたギヤマン(ステンドグラス)が夕暮れに灯ると、150年前の「現代アート」が浮かび上がります。

兼六園・金沢城公園・金沢21世紀美術館を結ぶこの一帯は「加賀百万石回遊ルート」と呼ばれ、いずれも徒歩圏内。兼六園からひがし茶屋街までは約1キロ・徒歩12〜13分という近さなので、庭園と城と神社をつないで歩けば、加賀藩の歴史が立体的に立ち上がってきます。

用水沿いの武家屋敷とせせらぎの小径

三つめは、用水と土塀がつくる静かな小径です。香林坊(こうりんぼう)の繁華街から一本入ると、そこは長町武家屋敷跡。加賀藩士が暮らした屋敷地で、黄土色の土塀が続く石畳の路地に、藩政期の空気がそのまま残ります。

このエリアを歩く鍵が、二本の用水です。屋敷地の縁を流れる大野庄用水(おおのしょうようすい)は、1590年頃に引かれた金沢最古の用水で、長町一の橋から八の橋まで小さな橋がいくつも架かります。土塀沿いを潤す水音を聞きながら歩けば、冬には土塀を雪から守る薦掛け(こもがけ)も季節の見どころに。屋敷跡の一角にある野村家の庭は、海外の格付けでも高く評価された名庭として知られます。

もう一本が鞍月用水(くらつきようすい)。1600年代の初めに城の堀の役割も兼ねて引かれた全長約15キロの用水で、その流れに沿うせせらぎ通りは、用水のせせらぎとレトロモダンな商店が同居する人気の散歩道です。香林坊から犀川の方角へ足を延ばせば、三つめの茶屋街・にし茶屋街もすぐ。華やかなひがしに対し、こぢんまりと落ち着いたにし茶屋街は、散策の締めくくりに似合います。

季節と時間で、金沢は表情を変える

金沢散策は、いつ歩くかで印象が大きく変わります。冬は兼六園や長町の土塀を彩る雪吊りが見もので、雪化粧の城下町は一年でもっとも金沢らしい景色。一方で「弁当を忘れても傘を忘れるな」と言われるほど天気は変わりやすいので、折りたたみ傘は一年を通して持ち歩くのが地元の常識です。

夜の散策もおすすめです。尾山神社の神門は日没後から夜22時頃までライトアップされ、ギヤマンの光がやわらかくにじみます。茶屋街の石畳も淡い明かりに照らされ、昼とはまったく違う情緒に包まれます。和菓子や金箔、加賀棒茶など金沢らしい味は茶屋街や用水沿いの店で気軽に楽しめますが、価格や品ぞろえは店によって幅があるので、気になる一軒をのぞいてみるのがおすすめです。

歩いて回るための実用メモ

紹介した三つのコースは、いずれも半日(2〜3時間)あれば歩いて回れる距離です。兼六園からひがし茶屋街までは約1キロ・徒歩12〜13分、ひがし茶屋街と主計町は約350メートル・徒歩5分と、エリア間はほどよく近く、一筆書きのように歩いてつなげられます。

移動に疲れたら、主要な観光地を循環する「城下まち金沢周遊バス」が便利です。金沢駅を起点に、武蔵ヶ辻・近江町市場、香林坊、兼六園下、ひがし茶屋街などを結びます。歩く区間と乗る区間を組み合わせれば、体力に合わせて無理なく回れます。

最後に足もとの注意を一つ。金沢の魅力は石畳の小径と用水沿いの道にありますが、用水には柵のない区間も多く、雨や雪の日は石畳が滑りやすくなります。底のしっかりした歩きやすい靴で、水音をたどりながら、加賀百万石の城下町をゆっくり味わってください。

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Written by

松本 海斗

トラベルエディター

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