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坂の街・函館を歩く ― 元町の名坂からベイエリア、五稜郭まで
観光・体験
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坂の街・函館を歩く ― 元町の名坂からベイエリア、五稜郭まで

函館は「坂を上り下りして歩く」街

函館の街歩きは、平らな道を真っ直ぐ進む散歩とは少し勝手が違います。標高334メートルの函館山(臥牛山)の麓に、西部地区の市街地が扇を広げたように坂を連ねて張り付いているからです。海へ向かって下り、山へ向かって上る——その高低差そのものが函館の風景であり、名前のついた坂だけでも19本を数えます。坂を一本のぼるたびに港と津軽海峡が眼下に開け、振り返れば異国情緒あふれる教会や洋館が並ぶ。走る人や犬と歩く人とはまた違う、「坂と港と歴史を味わう」散策の楽しみが、この街には詰まっています。本稿では距離や所要時間、足元の注意点とあわせて、函館ならではの歩き方を紹介します。

元町の名坂をめぐる王道コース

まず歩きたいのは、坂と教会が密集する元町です。市電の末広町電停から十字街電停までを結ぶ定番ルートは、徒歩でおよそ1.5キロ。見学を含めて2〜3時間ほどで、函館らしさを凝縮して味わえます。

起点近くの基坂(もといざか)は、坂下に「北海道里程元標」が置かれ、ここが札幌など各地への距離を測る起点だったことが名前の由来です。坂を上り切ると、左右対称のブルーグレーの洋館、旧函館区公会堂が現れます。隣の八幡坂(はちまんざか)は、函館でもっとも写真に撮られる坂。坂上から海へ向かってまっすぐ視界が抜け、その先に港と摩周丸が浮かぶ構図は、函館の絵はがきそのものです。かつて坂の上に函館八幡宮があったことが名の由来とされます。

教会群もこの一帯に集まります。緑の屋根の函館ハリストス正教会カトリック元町教会、とんがり屋根の函館聖ヨハネ教会が徒歩数分の範囲に隣り合い、その間を抜ける細く急な坂が「チャチャ登り」です。さらに進むと、紅葉の名所として知られ「日本の道100選」にも選ばれた大三坂(だいさんざか)、そして石畳と並木が美しい二十間坂(にじゅっけんざか)へ。二十間坂はその名のとおり道幅が二十間(約36メートル)もあり、たびたび大火に見舞われた函館が火除け地として広く取った歴史の名残です。

坂をうまく歩くコツ

短い坂が連続するので、体力配分が肝心です。下から見上げる開放感を味わうなら基坂や大三坂、見下ろす絶景を狙うなら八幡坂を上り切ってから振り返るのがおすすめ。坂はどれも数百メートルと長くはありませんが、上り下りを繰り返すと意外に脚にきます。歩きやすい靴で、こまめに足を止めて景色を眺めながら進むとちょうどよいでしょう。

海から街を振り返る ― ベイエリアと緑の島

坂を下りきった先、末広町の海沿いに広がるのがベイエリアです。象徴的な金森赤レンガ倉庫は、明治2(1869)年に金森洋物店を興した初代・渡邉熊四郎にさかのぼる倉庫群で、現存する建物は明治42(1909)年の築。レンガを長手と小口で交互に積む「イギリス積み」の壁が、港の景色によく映えます。倉庫沿いの遊歩道は平坦で、坂続きの元町とは打って変わって歩きやすい区間です。

もう一歩足を延ばすなら、人工島の緑の島へ。新島橋で陸とつながり、芝生と遊歩道が整う港の緑地で、5〜8月には遊歩道沿いのハマナスがピンクや白の花をつけます。ここからは赤レンガ倉庫群、函館山の全景、教会群までを海側から一望でき、街の輪郭を逆方向から確かめられるのが面白いところ。市電「大町」電停から徒歩3分ほどです。

歩いて登る函館山

体力に余裕があれば、函館山そのものを歩いて登るのも函館らしい散策です。ロープウェイで一気に山頂へ上がる人が多いなか、麓から続く「旧登山道コース」は片道3キロ弱、ゆっくり登っておよそ1時間(健脚なら40分ほど)。傾斜はゆるやかで案内板も整い、地元の幼稚園の遠足にも使われるほどの初心者向けです。山中には全部で11本もの散策路が張りめぐらされ、季節の山野草を眺めながら歩けます。下りはロープウェイを使う、といった組み合わせも自由です。

五稜郭公園、星形の堀を一周する

元町とはまったく性格の違う散策ができるのが、五稜郭公園です。幕末に築かれた星形の洋式要塞で、五つの稜堡が突き出した堀の外周は、一周およそ1.8キロ(約1815メートル)のジョギング・ウォーキングコースとして整備されています。歩いて一周しても30分ほど。堀端は平坦で、春は桜、夏は新緑、秋は紅葉と季節ごとに表情を変え、坂で脚を使ったあとの平らな周遊として相性がよい場所です。隣接する五稜郭タワーから星形を見下ろしてから歩くと、足元の地形が立体的に理解できます。

大森浜と、啄木が歩いた砂浜

港の西部地区から東へ目を転じれば、津軽海峡に面した大森浜が広がります。歌人・石川啄木がこよなく愛し、好んで散策した砂浜で、日乃出町側の啄木小公園には海を見つめる啄木の座像が置かれています。台座には「潮かをる 北の浜辺の 砂山の かの浜薔薇(はまなす)よ 今年も咲けるや」の歌が刻まれ、浜辺の砂山とハマナスを詠んだ啄木の視線をたどれます。日中は函館山と青い海峡を、夜は沖に揺れるいさり火を眺められる、静かで余韻のある散策路です。

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季節と足元のこと

函館は北海道のなかでは温暖なほうですが、それでも1〜3月は根雪となり、坂の街は雪と凍結に覆われます。観光名所の八幡坂は階段部分にロードヒーティングが入っていますが、坂道自体は滑りやすく、油断は禁物です。市内の滑りやすい道沿いには「砂箱」が置かれ、中の滑り止め用の砂は誰でも自由にまけます。冬に歩くなら、歩幅を小さく、急がず、足の裏全体を路面につけるように、そして両手をふさがないこと。これが地元流の転ばない歩き方です。冬の夜には坂や教会がライトアップされる「はこだてイルミネーション」も見もので、寒さ対策と滑りにくい靴を整えて、坂の街の灯りを楽しんでください。

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Written by

藤田 ゆかり

子育て移住アドバイザー

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