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静岡市の旬の食材カレンダー|駿河湾と山が育てる味覚
グルメ
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静岡市の旬の食材カレンダー|駿河湾と山が育てる味覚

駿河湾と山が同居する街の食卓

静岡市の旬は、よくある「春・夏・秋・冬」のカレンダーには収まりません。目の前には水深約2,500mと日本一深い駿河湾が広がり、背後には南アルプスの山々と安倍川・興津川の清流が控えています。海の幸は深海性のものが多く、山あいではわさびやタケノコが育ち、温暖な気候のおかげで本来は冬の果物が初冬から実ります。同じ食材でも年に二度旬が来たり、温室で通年味わえたりと、暦の常識が少しずつずれているのが静岡市の面白さです。ここでは市内とその周辺で味わいたい食材を、季節の移ろいとともにたどります。

桜エビ ― 年に二度の旬を持つ駿河湾の宝石

静岡市の食を語るうえで外せないのが桜エビです。透き通った桜色の体から「駿河湾の宝石」とも呼ばれるこの小さなエビは、国内では駿河湾でしか水揚げされません。世界を見ても生息地は駿河湾と台湾沖ほどしかなく、さらに生で味わえるのは駿河湾産だけといわれます。水揚げ港は静岡市清水区の由比港と、隣の大井川港のみ。由比はかつて東海道の宿場町で、今も漁港の食堂で旬の桜エビを楽しめます。

桜エビには漁期が年に二度あります。春漁はおおむね3月下旬から6月上旬、秋漁は10月下旬から12月下旬にかけて。その間の6月中旬から9月末は産卵期にあたるため禁漁となり、資源を守るしくみが法と漁協の自主規制の両面で続いています。近年は不漁の年もあり「幻の桜エビ」と呼ばれることも増えました。だからこそ漁が解禁される時期に、生のぷりっとした甘さや、釜揚げの上品な風味を味わう価値があります。

食べ方も静岡市ならでは。生・釜揚げ・かき揚げが定番で、ほかほかのご飯にのせた桜エビ丼は由比の名物です。漁師の賄いから生まれた沖あがりという郷土料理もあり、生の桜エビを割り下で豆腐やねぎとさっと煮る、すき焼き仕立ての一品。漁から帰った漁師が体を温めた素朴な味で、店によっては味わえます。

用宗の生しらす ― 港から市場まで十数分の鮮度

桜エビと並ぶ静岡市の海の名物がしらすです。とりわけ静岡市駿河区の用宗(もちむね)漁港は生しらすの産地として知られます。用宗では水揚げから十数分で港の市場に運ばれて競りにかかるため、傷みやすい生しらすを鮮度の高いまま味わえるのが強みです。

しらす漁は例年3月下旬の解禁から翌年初めごろまで続き、とくに脂がのる春と秋がおいしい時期とされます。とろりとした生しらす丼はこの土地に来たからこそ。茹でたての釜揚げしらすは通年に近く楽しめ、桜エビとあわせた二色丼も人気です。価格は丼もので千円台が目安ですが、漁の状況で生しらすが出ない日もあるため、生にこだわるなら漁のある時期を狙うのが確実です。

山が育てる春 ― タケノコとわさび

海ばかりが静岡市ではありません。清水区の両河内(りょうごうち)は、興津川の清流に育まれたタケノコの名産地として知られ、えぐみが少なくやわらかいのが特徴です。タケノコの旬は3月から5月ごろ。掘りたては数日で固くなるため、産地の春の味です。

そして静岡市を象徴する山の幸がわさび。水わさびの栽培は今からおよそ400年前、静岡市の山間部(有東木=うとうぎ)で始まったと伝えられ、発祥の地とされます。安倍川や興津川の冷たく清らかな水を引いた段々の「わさび田」で育てる伝統的な栽培法は、「静岡水わさびの伝統栽培」として世界農業遺産(GIAHS)に認定されています。わさびそのものは通年で味わえますが、すりたての香りと辛みは産地ならでは。すり身とともに練り込んだわさび漬けは土産にも向きます。

温暖な気候がもたらす初冬の果実 ― 久能の石垣いちご

静岡市の冬は穏やかです。その温暖さを生かした名物が、駿河区久能(くのう)一帯の石垣いちご日本平から駿河湾へ落ちる南向きの斜面に石を積み、その輻射熱を使っていちごを育てる独特の栽培法で、全国的には冬本番から出回るいちごを早ければ初冬から収穫できます。いちご狩りはおおむね12月中旬から5月下旬まで楽しめ、甘みののる真冬から早春が特に狙い目です。海を見下ろす石垣の畑でいちごを摘めるのは、温暖な静岡市の海沿いならではの体験といえます。

ミカンも静岡市が誇る柑橘です。秋から冬が旬で、清水の海沿いの斜面が産地として知られます。じつは温州みかんの代表品種「青島(あおしま)みかん」は、昭和初期に静岡市福田ヶ谷で偶然見つかった枝変わりが起源とされ、貯蔵してコクと甘みを増してから出回る12月以降が食べごろ。なお全国的に有名な三ヶ日みかんは浜松市の産で、静岡市のミカンとは産地が異なります。

緑の季節の主役 ― 静岡茶と新茶

静岡市は全国有数の茶どころでもあります。安倍川流域や清水の山あいに茶畑が広がり、新緑の季節に一年で最も瑞々しいお茶が生まれます。その年の最初に摘んだ一番茶のうち、おおむね4月下旬から6月初旬までに摘まれたものが「新茶(しんちゃ)」。日光をあまり浴びていないやわらかな新芽から淹れる一杯は、渋みがおだやかで香り高く、初夏の静岡市を味わう一服になります。桜エビの春漁、タケノコ、新茶と、静岡市の春は海と山の旬がいっせいに重なる、最ものぼり調子の季節です。

隣町へ足をのばす ― 鰹・深海魚・温室メロン

静岡市内だけでなく、近隣に目を向けるとさらに旬の幅が広がります。市の西隣の焼津(やいづ)港はカツオの水揚げで全国トップクラス。初夏に北上する身の締まった「初鰹」と、秋に脂をのせて南下する「戻り鰹」と、年に二度の旬があります。静岡おでんに欠かせない灰色の練り物黒はんぺんも、もともとは焼津の特産。鯖や鰯を骨ごとすり身にしたもので、今では静岡市内全域で親しまれ、駄菓子屋でも売られる静岡おでんの定番具材です。

駿河湾の深海も独特の食文化を生みました。日本一深い湾には深海性の生き物が多く、沼津市戸田(へだ)のタカアシガニや金目鯛がよく知られます。これらは沼津側の名物で静岡市の産ではありませんが、同じ駿河湾が育てた味として足をのばす価値があります。果物では、上品な甘さの高級マスクメロンクラウンメロンが県西部の袋井市を中心に温室で栽培され、品種を組み合わせることで通年出荷されています。これも静岡市の産ではありませんが、暦に縛られない静岡県らしい果実です。

旬を逃さないためのメモ

静岡市の旬は、海・山・温暖な気候が重なって独特のリズムを刻みます。春は桜エビ春漁・生しらす・タケノコ・新茶がそろう最も華やぐ季節、初夏から秋は鰹秋は桜エビ秋漁とミカン冬は石垣いちごと、主役が入れ替わります。桜エビやしらすは漁の有無で味わえる日が左右されるため、生にこだわるなら漁期と当日の漁況を確かめて訪れると安心です。価格は丼ものなら千円台が目安。海の幸は由比・用宗の漁港まわり、おでんや黒はんぺんは葵区の青葉横丁あたりと、名物の居場所がはっきりしているのも静岡市らしさです。旅の季節に合わせて、駿河湾と山が育てた旬を味わってみてください。

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Written by

渡辺 リカ

ワークスタイルエディター

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