グルメ
静岡市のB級グルメ案内 ― 黒はんぺんの静岡おでんと駿河湾の幸を食べ歩く
静岡市のB級グルメは「静岡おでん」から
静岡市で何か一つ食べるなら、まずは静岡おでんです。具を一本ずつ串に刺し、牛すじや濃口醤油を継ぎ足して守られてきた真っ黒なだしでじっくり煮込み、食べる直前に魚の「だし粉」と青のりをたっぷりかける――この独特のスタイルが、ほかのどの土地のおでんとも違う静岡市の顔です。地元では「静岡おでんの5か条」として、(1)黒はんぺんが入っている (2)黒いだし (3)串に刺してある (4)青のり・だし粉をかける (5)駄菓子屋にもある、という5つが語り継がれています。
主役の黒はんぺんは、サバやイワシを骨や皮ごとすり身にして茹でた半月形の練り物で、つみれに近い濃い灰色をしています。一般的な白いはんぺんとは別物で、この色の濃さと魚の旨みこそが黒いだしと合うわけです。だしが黒く見えるのは、牛すじを煮込んで濃口醤油を継ぎ足してきた歴史の積み重ねによるもので、見た目ほど塩辛くはありません。
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食べ歩きの起点は青葉横丁・青葉おでん街
静岡おでんを味わう拠点になるのが、JR静岡駅から歩いて15分ほど、葵区常磐町にある青葉横丁と青葉おでん街です。戦後、青葉公園通り一帯には200台ものおでん屋台がひしめいていたと伝わり、昭和43年に屋台が撤去された後、その灯りの一部がこの2本の細い路地に移って今に続いています。ビルの谷間に赤提灯が連なり、小さなカウンターで店主や常連と肩を寄せ合う昭和レトロな空気は、静岡市ならではの夜の風景です。
値段の感覚としては、おでんは1串およそ100〜200円が相場で、黒はんぺん・牛すじ・大根・卵などを数本見つくろっても、お酒を一杯添えて1,000円台で楽しめることが多いのが嬉しいところ。あくまで目安なので、串の本数や店構えによって上下します。
もう一つ覚えておきたいのが「駄菓子屋おでん」の文化です。静岡市では駄菓子屋の店先におでん鍋が置かれ、子どもが小銭でおやつ代わりに黒はんぺんをつまむ光景が当たり前でした。今も市内には駄菓子屋スタイルのおでんを出す店が点在し、1串数十円から気軽に味わえます。観光客にも開かれているので、レトロな店構えを見かけたらのぞいてみてください。
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駿河湾の宝石、桜えびと生しらす
静岡市は日本一深い駿河湾に面した港町でもあり、B級グルメの幅を海の幸が大きく広げています。なかでも桜えびは、国内では駿河湾でしか本格的な漁が行われない希少な小えびで、その透き通った桜色から「駿河湾の宝石」と呼ばれます。水揚げの拠点が静岡市清水区の由比港で、春漁(3月下旬〜6月上旬)と秋漁(10月下旬〜12月下旬)の解禁期には、由比一帯の食堂や専門店が活気づきます。定番は、ふわっと揚げたかき揚げと、釜揚げや生をのせた桜えび丼。丼ものはおおむね1,500〜2,500円前後が目安で、旬の生桜えびはその時期にしか味わえない贅沢です。
もう一つの海の名物が生しらす。静岡市駿河区の用宗(もちむね)港は県内有数のしらすの水揚げ地で、JR東海道線の用宗駅が最寄りです。しらすは鮮度落ちが早く、生しらすは水揚げのあった日にしか出回らないため、港の直売所や食堂で味わうのが王道。とろりとした生しらす丼や、生・釜揚げの食べ比べ丼などが楽しめ、こちらも1,000〜2,000円前後が相場です。海が荒れた日や禁漁期(おおむね1月中旬〜3月中旬)は生しらすが出ないので、釜揚げで楽しむことになります。
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東海道が育てた安倍川もちと丸子のとろろ汁
静岡市は江戸時代、東海道の府中宿・丸子宿として旅人でにぎわった土地で、街道がもたらした名物も健在です。安倍川もちは、つきたての餅にきな粉をまぶし白砂糖をかけたもの、または餡をからめた和菓子。安倍川を視察した徳川家康に地元の男が献上し、川の砂金になぞらえた機知から家康が「安倍川もち」と名付けた、という命名伝説が語られています。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』にも登場する街道菓子で、今も安倍川橋のたもとに数軒が軒を連ねています。1人前は数百円程度で、食べ歩きや甘味の〆にちょうどよい量感です。
丸子(まりこ)宿の名物がとろろ汁。すりおろした自然薯をかつおだしの白味噌汁でのばし、麦飯にかけて食べる素朴な一品で、歌川広重の浮世絵や松尾芭蕉の句にも残る街道の味です。サラリとしながら粘りのある自然薯のとろろは、海の幸が続いた旅程の箸休めにもなります。
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お茶どころならではの一杯と、清水のもつカレー
忘れてはいけないのが静岡茶。静岡市は古くからの茶の集散地で、葵区の茶町には茶問屋が集まり、市内には深蒸し茶を急須でていねいに淹れて出す喫茶店や茶店が点在します。脂ののった海の幸や甘い安倍川もちの合間に、香り高い緑茶でひと息つくのが地元流。抹茶やほうじ茶を使ったスイーツも豊富で、お茶そのものがちょっとしたグルメ体験になります。
もう一品、静岡市清水区のB級グルメとして根強いのが清水もつカレー。串に刺して甘辛く煮込んだもつを、カレー風味の黒いだしにくぐらせた屋台発祥の味で、清水駅周辺の居酒屋や大衆店で親しまれています。1串100〜200円ほどが目安で、見た目は静岡おでんと似ていますが味の方向はまったく別。おでんの黒いだしとカレーのもつ、二つの「黒」を食べ比べるのも清水ならではの楽しみです。
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静岡市の名物と「県内の別の街」の名物を混同しない
最後に旅行者が間違えやすい点を一つ。静岡県のB級グルメというと富士宮やきそばや浜松餃子が有名ですが、前者は富士宮市、後者は浜松市の名物で、いずれも静岡市の味ではありません。県内で人気のハンバーグチェーン「さわやか」も発祥は静岡市外です。静岡市で味わうべきは、あくまで黒はんぺんの静岡おでんを核に、桜えび・生しらす・安倍川もち・とろろ汁・清水もつカレー、そして静岡茶。駅前の青葉横丁から港町の用宗、街道筋の安倍川・丸子まで足を延ばせば、駿河湾と東海道が育てた静岡市だけの味を一日でめぐることができます。
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