グルメ
箱根の温泉街で見つける季節の味|湯けむりと共に楽しむグルメの旅
箱根といえば、温泉と美しい自然。しかし、この山々に囲まれた地域の真の魅力は、そこに暮らす人々が丁寧に育てた「食」にあります。箱根旧街道の石畳を歩めば、湯けむりの向こうからいい匂いが漂ってきます。それは、季節ごとに変わる箱根の味わい。標高700メートルを超える山岳地帯特有の気候が育む食材は、平地のものとは一線を画す濃厚な甘みと旨みを持ちます。今回は、温泉郷で出会える、心も身体も温かくなるグルメスポットをめぐる旅へ皆さんをお招きします。
芦ノ湖の清流が育む、旬の川魚料理
箱根の象徴である芦ノ湖。標高723メートルに位置するこの火口湖は、年間を通じて水温が低く、透明度の高い清らかな水を保っています。その水が育てる川魚は、箱根グルメの代表格です。春から初夏にかけて旬を迎えるニジマスやヒメマスは、脂がのり、身が引き締まった最高の状態。湖畔の飲食店では、炭火焼きや塩焼き、唐揚げなど、素材の味を引き出した調理法で提供されています。
特に注目したいのが、地元漁師から直接仕入れた朝獲れの魚を使う店です。午前中に水揚げされたものは、その日の昼食時には既にお客さんの食卓に上がります。透明感のある身、ほのかな川の香り——こうした新鮮さは、箱根の山奥だからこそ成立する贅沢です。塩だけで焼いたシンプルな一皿に、芦ノ湖の水の豊かさがそのまま宿ります。
なかには、燻製に仕上げた川魚を使ったサンドイッチや、魚介のだしを活かした蕎麦を提供するカフェ風の店も増えています。予算の目安は一皿1,500円から3,000円程度。箱根駅伝のコースとしても知られる芦ノ湖沿いの散策後、立ち寄るのにぴったりです。
山の恵みを詰め込んだ、春の山菜料理
冬が終わり、雪解け水が箱根の山々を潤す3月下旬から5月にかけて、箱根は「山菜の宝庫」に変わります。フキノトウ、タラの芽、コシアブラ、ワラビ、ゼンマイ——地元農家や山の達人たちが丁寧に採取した山菜は、独特のほろ苦さと芳しい香りが特徴です。
温泉宿の朝食や、町の食堂では、こうした春の山菜を使った天ぷらや煮浸し、白和えが並びます。特に人気なのが、複数の山菜を一度に味わえる「山菜定食」。白いご飯の上に、揚げたての天ぷらがずらりと並ぶ光景は、季節の到来を高らかに告げています。天ぷらにする際は、衣を薄くつけて素材の色と香りを損なわないのが箱根流。タラの芽のほのかな苦みとコシアブラの清々しい香りは、一度味わうと忘れられません。
予算は800円から1,500円程度が相場。採取の手間を考えると非常にリーズナブルです。箱根町や元箱根の小規模な食堂が穴場で、営業時間は多くが11時から14時頃までの昼間営業。早めの行動と、事前の確認をおすすめします。
温泉の熱を活かした、箱根ならではの創意工夫グルメ
箱根の温泉地ならではのユニークな料理が、温泉熱を利用した調理法です。大涌谷周辺では、90度以上の高温源泉を活用して食材を加熱する体験が観光の定番となっています。黒卵(くろたまご)はその最たる例で、強酸性の源泉で茹でることで殻が黒く変色した温泉卵。硫黄の香りがほんのりと漂い、普通のゆで卵とは一味異なる体験です。
さらに近年は、温泉熱を使って蒸した地元産トウモロコシやジャガイモを提供する屋台や店舗が増えています。甘さが凝縮され、素材本来の旨みが引き出された蒸し野菜は、シンプルながら箱根でしか味わえない一品。源泉に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが食材にわずかに移り、独特の奥行きある風味を生み出しているとも言われています。
こうした料理は、温泉宿の夕食メニューや観光地の食堂、屋台で手軽に楽しめます。予算は500円から2,000円程度。大規模なチェーン店では決して味わえない、地熱という自然の恵みを調理に取り入れた創意工夫の味です。
地元農家と手を組む、箱根野菜の新しい食べ方
箱根周辺の農業従事者は、地域の食文化を守ることに強い誇りを持っています。昼夜の寒暖差が大きい山地の気候は、野菜に豊かな甘みと旨みをもたらします。最近では、こうした地元野菜を前面に打ち出したカフェやビストロが増え、新しい食べ方が提案されています。
夏場に収穫されるナスやトマト、赤ピーマン。冬のダイコンや里芋、キャベツ。それぞれの季節の野菜を活かしたプレートランチやスープは、見た目にも鮮やかで、旅の思い出に彩りを添えます。特に箱根産のトマトは糖度が高く、生でも加熱しても甘みが際立ちます。地元シェフがイタリアンや和食の技法を組み合わせた創作料理として提供する店も人気です。
こうした飲食店の多くは、箱根旧街道沿いや湯本・強羅エリアに点在しています。素朴な外観の店内で、洗練された野菜料理が味わえるのが箱根流。予算は1,000円から2,500円程度。季節ごとにメニューが入れ替わるため、何度訪れても新しい発見があります。
秋の実りを堪能する、きのこと栗の旬食材
箱根の秋は、山の幸がもっとも豊かに実る季節です。9月下旬から11月にかけて、ブナやナラの林ではマイタケ、シイタケ、ナメコなど、多彩なきのこが採れます。地元の食堂では、秋限定のきのこ鍋や土瓶蒸し、炊き込みご飯が登場し、山の恵みを余すことなく堪能できます。
また、箱根の山麓に広がる里山では栗の栽培も盛んです。地元産の栗を使ったモンブランや栗ご飯、渋皮煮は、秋の箱根を代表するスイーツ・料理として観光客にも高い人気を誇ります。湯本温泉街には、栗を主役にした和菓子店も複数あり、旅の土産としても喜ばれます。
紅葉の絶景と合わせて、秋の旬食材を楽しむのが通な箱根の旅の流儀。芦ノ湖畔や仙石原のススキ野原を歩いた後、温かいきのこ鍋で体を温める——そんな旅程が、箱根の秋を最大限に味わう王道ルートです。
夜の温泉街で楽しむ、地元の人が愛する居酒屋文化
箱根の温泉街には、観光客だけでなく、地元の人も足しげく通う小さな居酒屋が点在しています。こうした店では、その季節に最も新鮮で安価な食材が、最も美味しい調理法で提供されます。旬の刺身、季節の野菜の炒め物、そして地元で獲れた川魚の煮込み。カウンター越しに店主と会話しながら、一品一品を選ぶ楽しさも格別です。
神奈川県内の地酒や、静岡の地ビールを揃えている店も多く、料理との相性を店主に相談しながら飲み進めるのが、地元流の楽しみ方。箱根の肌寒い夜に、熱燗と川魚の煮付けを合わせれば、旅の疲れもほぐれていきます。
夜間営業の時間帯は多くが17時から23時程度。予算は一人3,000円から5,000円で、飲み物込みでの利用が一般的です。地元の常連客と会話を楽しむ中で、口コミでしか知れない穴場の食堂情報や、翌朝に立ち寄るべき朝市の情報を得られることも少なくありません。
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箱根への訪問は、温泉での癒しと同じくらい、食事での満足感が旅の質を左右します。今回ご紹介したグルメは、どれも箱根の豊かな自然と、そこに暮らす人々の丁寧な仕事が詰まったものばかり。次の箱根旅行では、温泉に浸かるのと同じくらい、季節の味わいに心を傾けてみてください。春の山菜、夏の川魚、秋のきのこと栗、冬の温泉鍋——四季折々に異なる表情を見せる箱根グルメの虜になること、間違いなしです。
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