観光・体験
仙台サイクリングガイド——海岸ロングと泉ヶ岳の坂を走る
仙台は「海岸ロング」と「山の坂」を一日でつなげられる街
仙台のサイクリングが面白いのは、性格の正反対なフィールドが市内に同居している点です。東に向かえば、貞山運河沿いにほぼ平坦・ほぼ直線で延びる海岸の自転車専用道。北西を仰げば、標高1,000mを超える泉ヶ岳へと続く本格的なヒルクライム。朝に太平洋を眺めながら巡航し、午後は森の中の坂で追い込む——そんな欲張りな一日が、街なかから自走で組み立てられます。中心部の広瀬川や青葉城まわりはランニング・散歩で味わうことにして、ここでは自転車ならではの「遠くまで・速く」を活かした海と郊外の走り方を紹介します。
復興の海岸線を走る——仙台亘理自転車道
仙台の海岸サイクリングの背骨が、宮城県道227号「仙台亘理自転車道線」です。宮城野区の岩切を起点に七北田川沿いを下り、河口で太平洋岸へ折れて貞山運河に沿って南下し、亘理町まで続く総延長43.4kmの自転車・歩行者専用道。大部分が運河沿いの直線で信号も車もなく、初心者でも淡々と距離を稼げます。仙台市内の核となるのは、若林区の荒浜から名取川河口の閖上にかけての一帯です(亘理側まで走り切ると市域を越えるので、距離感には注意してください)。
この道は2011年の津波で壊滅的な被害を受け、仙台市内区間は2019年までに復旧して「仙台市海岸公園サイクリングロード」として整備されました。沿道には太平洋を一望できる避難の丘や、震災遺構として保存・公開されている旧荒浜小学校、収穫体験ができるJRフルーツパーク仙台あらはまが点在します。深沼海岸の砂浜を横目に、追悼と再生の風景の中をペダルを回す——速さを競うより、その意味を噛みしめながら走りたい一本です。
名取・閖上へ——荒浜貞山堀周遊コース
もう少しコースとしてまとまった走りを楽しむなら、名取市が案内する「仙台荒浜貞山堀周遊コース」が手頃です。距離は約23km、所要は2時間ほど、標高差112mとほぼフラットで、小学生以上のファミリーでも完走できる設計です。貞山運河沿いの走りやすい区間を軸に、避難の丘やフルーツパークを巡る構成になっています。
名取川河口の閖上には、震災後に生まれた「かわまちてらす閖上」があり、海の幸や軽食でひと息つける折り返し点として定番です。海沿い・川沿いの宿命として風が強い日が多いので、往路で追い風に飛ばされすぎず、復路の向かい風を計算に入れて引き返すのが賢い走り方になります。
七北田川をたどって河口へ抜ける
227号の北側は七北田川の堤防上を走る区間です。泉中央あたりから川を下り、河口で海岸の運河ルートへ合流すれば、市街地の信号にほとんど引っかからずに海まで抜けられます。水鳥や、ときに路上を横切る大きなカニに出会えるのも、この自然豊かな堤防道ならでは。梅田川・七北田川・名取川・広瀬川と貞山運河を一筆書きでつなぐ約45kmの市内一周コースを描くこともできますが、一般道や工事区間をまたぐ箇所があり、ルート確認の要る中上級者向けです。まずは七北田川下りで河口往復に慣れるのがおすすめです。
坂を登るなら泉ヶ岳——仙台のヒルクライム聖地
登りで脚を試したくなったら、泉区の泉ヶ岳へ。地元サイクリストが「ヒルクライムの聖地」と呼ぶ定番で、市内から自走でアプローチできます。多くの人がタイムを計る区間は、ふもとのバス停付近から泉ヶ岳スキー場の駐車場までの約7.2km。さらに上のスプリングバレースキー場まで取ると、走行距離は約11.4km、標高差はおよそ589m、平均勾配は約5%前後とされ、終盤は本格的な上りが続きます(数値は計測区間や資料により幅があり目安です)。中盤までのアップダウンで脚を削られるため、登り慣れた人ほど序盤の抑えがものを言うコースです。下りはスピードが出やすいので、ブレーキと路面の砂利には十分注意してください。
足を延ばして日本三景・松島へ
海の景色をもっと欲張るなら、松島湾へのツーリングも選択肢です。松島町や塩竈市は仙台市の北東に位置し、自転車だと片道おおむね2時間前後、JR仙石線なら松島海岸駅まで30分ほどの距離感です(自走距離は経路により変わります)。塩竈から松島へ抜ける国道45号沿いは湾の眺めが良く、日本三景を島影とともに楽しめます。さらに東の東松島市・奥松島まで足を延ばせば、野蒜駅を拠点に島と入り江を巡る周回ルートが取れます。アップダウンと交通量がある区間なので、初心者は無理に自走せず輪行で現地入りし、湾岸だけ走るのも快適です。
走り出す前に——レンタサイクルと装備のメモ
自分の自転車を持たない旅行者は、レンタサイクルが入り口になります。松島海岸駅周辺では、かご付きシティサイクルが2時間で数百円程度の目安で借りられ、奥松島の野蒜駅近くにはクロスバイクや電動アシストを貸し出す拠点もあります。料金・営業時間・台数は季節や店舗で変わるため、事前確認をおすすめします。
海岸ルートは平坦で初心者向きですが、遮るもののない直線では向かい風がこたえます。風向きを見て折り返し地点を決め、ボトルと補給食、パンク修理の備えを忘れずに。ヘルメットの着用も習慣にしておくと安心です。海岸ロングで一日かけて復興の風景をたどるもよし、泉ヶ岳の坂に挑むもよし——仙台ならではの振れ幅の大きな自転車旅を、体力と気分に合わせて組み立ててみてください。
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