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長崎サイクリングガイド——坂の街を抜けて、半島と島の海岸線を走る
観光・体験
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長崎サイクリングガイド——坂の街を抜けて、半島と島の海岸線を走る

まずは正直に——長崎市街は自転車向きの街ではありません

長崎のサイクリングを語るうえで、最初に断っておきたいことがあります。すり鉢状の地形に家々がびっしり張りつく長崎市街は、坂と階段の街であって、自転車で気持ちよく流せる街ではありません。グラバー園や東山手の洋館をめぐるなら歩くほうが向いていますし、平坦な距離を稼ぎたいランナーは浦上川沿いや稲佐山麓を選びます。

では長崎は自転車に不向きかというと、まったく逆です。長崎県は海岸線の長さが全国でも有数で、市街地の坂を一度抜けてしまえば、その先には半島と離島の海沿いの道がどこまでも続いています。長崎のサイクリングの主役は、中心部ではなく郊外と半島。坂を上り切ってから始まる海岸線のロングライドこそが、この街でペダルを踏む醍醐味です。本稿では、長崎市内とその周辺で実際に走れる海沿いのコースを、距離とともにご紹介します。

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長崎半島を南下する——野母崎サイクリングロードと軍艦島の眺め

長崎のサイクリングでまず名前が挙がるのが、市の南へ細長く伸びる長崎半島(野母半島)です。半島の先端部には、起点を江川町、終点を野母町とする野母崎サイクリングロード(全長20.7km・道路幅3.0m)が整備されています。長崎県内でも数少ない本格的な大規模自転車道で、四季を通じて海を眺めながら走れる、半島ライドの背骨ともいえる道です。

この半島の見どころは、なんといっても沖合に浮かぶ端島(軍艦島)の眺めです。半島南端の権現山展望公園や、水仙の名所として知られる野母崎の水仙の里公園からは、廃墟の島影が海上にくっきりと浮かびます。軍艦島は上陸せずとも「望む」だけで十分に絵になり、自転車を停めて海を眺める時間がそのままハイライトになります。

ただし、半島は平坦ではありません。市街地から半島の先端まではアップダウンの連続で、入り江ごとに小さな峠を越えていくイメージです。中心部から先端を往復すれば、おおむね半日仕事のロングライドになります。途中には道の駅もあり、補給と休憩の拠点に使えます。脚に自信のない方は、後述する電動アシスト自転車を強くおすすめします。

橋を渡って島へ——伊王島ひとめぐり

「離島サイクリングは敷居が高い」という方に最初の一歩としておすすめなのが、伊王島です。かつては船でしか渡れなかったこの島は、2011年に伊王島大橋(橋長876m)が開通し、長崎市香焼町から地続きで渡れるようになりました。橋の上から見渡す海と、潮風を真横から受けて走る橋越えは、それだけで小さな旅の気分にさせてくれます。

伊王島は周囲がおよそ7kmの小さな島で、信号もほとんどありません。海沿いの道をのんびり一周しても10km前後と、半島ライドに比べればずっと気軽です。島内には伊王島灯台や海水浴場、温泉やレンタサイクルを備えたリゾート施設(i+Land nagasaki)があり、自転車を借りて灯台まで往復し、ひと風呂浴びて帰る——といった日帰りの組み立てがしやすいのも魅力です。レンタサイクルや電動自転車は施設で借りられますが、料金や貸出条件は時期によって変わるため、料金は目安と考え、出かける前に最新情報を確認してください。

野母崎の本格ロングと違い、伊王島は子ども連れや初心者でも一周しきれるスケール感。長崎のサイクリングを「まず一度試してみたい」人にぴったりの入門コースです。

角力灘の海岸線——外海・出津の祈りの道

もう一つ、長崎ならではの情緒を味わえるのが、市の北西に広がる外海(そとめ)地区の海岸線です。外海はかつて独立した町でしたが、2005年に長崎市へ編入され、いまは長崎市の一部。市街地からは国道202号を北上し、角力灘(すもうなだ)に沿って走る、海を右手に見続けるルートになります。市街から外海中心部までは車でおおよそ33km・50分ほどの距離感で、自転車ではしっかりとしたロングライドです。

この海岸線の核は、潜伏キリシタンの歴史を伝える祈りの風景です。フランス人宣教師ド・ロ神父が1882年に手がけた出津(しつ)教会堂、『沈黙』で知られる作家にちなんだ遠藤周作文学館、そして角力灘に沈む夕陽を望む道の駅 夕陽が丘そとめ——海と教会と文学が一本の道沿いに連なります。とくに夕暮れどきは、五島灘へ落ちる夕陽が外海随一の名物。日没の時間から逆算して走り出すと、忘れがたい一枚に出会えます。

こちらも入り江ごとに上り下りを繰り返す起伏のある道で、国道は路線バスや車も通ります。交通量のある区間では無理な追い越しを避け、海側の眺めに気を取られすぎないよう、安全運転を心がけてください。

さらに北へ——西彼杵半島と西海橋

体力と時間に余裕があれば、外海からさらに西彼杵半島を北上する手もあります。半島の北端、針尾瀬戸に架かるのが西海橋(全長316m・1955年開通)と、その隣に並ぶ歩道付きの新西海橋(全長620m・2006年開通)です。橋の下では、鳴門・関門と並ぶ日本三大急潮のひとつ・針尾瀬戸のうず潮が渦を巻きます。

ただしこの一帯は、長崎市内ではありません。西海橋は佐世保市の針尾島と西海市の西彼杵半島を結ぶ橋で、いずれも長崎市外です。市街地から自転車で目指すとなると一日がかりの本格ロングになりますので、車に自転車を積んで現地起点で走る「輪行+現地ライド」のほうが現実的でしょう。所在地と所要時間をよく確かめたうえで計画してください。

走り出す前に——長崎ライドの実用メモ

最後に、長崎で自転車を楽しむための実用的な注意点をまとめます。

  • 電動アシスト(e-bike)を前向きに検討する:長崎のライドはとにかく坂が多く、半島も外海も入り江ごとに上り下りが続きます。普段ロードバイクに乗らない方や旅行で軽く走りたい方は、電動アシスト自転車を選ぶと景色を楽しむ余裕が生まれます。
  • 距離・標高は「目安」で受け止める:本稿の半島ロングの総距離や勾配は、走るルートや起点で大きく変わります。出発前に自分のルートを地図で引き、無理のない折り返し地点を決めておきましょう。
  • 海風と日差し対策を:海沿いは横風が強い日があり、夏場は照り返しも厳しめです。風向きと天候を確認し、水分と日焼け対策を忘れずに。
  • 補給は計画的に:半島や外海は店が点在する程度で、市街地ほど補給は容易ではありません。道の駅や集落で早めに補給を。食事は海沿いの食事処でちゃんぽんや皿うどんといった長崎の麺ものを味わうのが定番で、価格はおおむね一般的な相場と考えておけばよいでしょう。
  • 軍艦島は「望む」もの:島影は半島の展望地から眺めるのが基本で、上陸には別途クルーズの予約が必要です。自転車で渡れるわけではない点にご注意ください。

坂の街・長崎は、裏を返せば「上り切った先に必ず海が待っている街」です。市街の喧騒を抜け、半島と島の海岸線へ。長崎のいちばん広い表情は、ペダルを踏んだ人だけが見られます。

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Written by

加藤 誠

地域活性化プランナー

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