グルメ
神戸B級グルメ食べ歩き案内 ―― 長田の粉もん、南京町の点心、港町の洋食とスイーツ
神戸の味は「港」と「下町」が育てた
神戸のB級グルメを一言でいえば、1868年の開港で世界中の文化が流れ込んだ港町と、職人や工場で働く人々が暮らした下町、その二つが交わって生まれた味です。元町から栄町にかけて広がる旧居留地周辺では外国人コックが伝えた洋食が根づき、JR神戸線で西へ向かった長田の鉄板からは粉もんのご当地料理が次々と生まれました。観光地のステーキ店だけが神戸の食ではありません。商店街の鉄板や精肉店の店先、中華街の行列にこそ、地元の人が日常的に通う「神戸の本当の味」が詰まっています。ここでは高級店ではなく、ワンコイン前後で楽しめる神戸ならではの食べ歩きを、エリアごとに案内します。
長田は粉もんの聖地 ―― そばめしとぼっかけ
神戸のB級グルメを語るうえで外せないのが、長田区です。なかでも新長田駅の南、大正筋商店街や本町筋を歩くと、ソースの匂いをまとったお好み焼き店が驚くほど密集しています。横山光輝さんの故郷でもあり、駅前には巨大な鉄人28号のモニュメントが立つこの下町こそ、神戸の粉もん文化の中心地です。
名物の筆頭はそばめし。これはソース焼きそばと白ごはんを鉄板の上で細かく刻みながら混ぜ合わせて焼く、長田発祥のソウルフードです。昭和30年代、新長田のお好み焼き店で、近所の工員が弁当の冷やごはんを焼きそばに混ぜてほしいと頼んだのが始まりと伝わります。今では全国区になりましたが、本場で食べる地ソースのきいた一皿は格別。お好み焼き店のサイドメニューとして提供されることが多く、一皿はおおむねワンコイン前後から千円程度が目安です。
もう一つの主役がぼっかけ(すじこん)。牛すじとこんにゃくを甘辛く煮込んだもので、これをうどんや焼きそば、ごはんに「ぶっかける」ことから名がついたとされます。ルーツは大正期、長田に開かれた屠場で安く出回った牛すじを地元の人が無駄なく煮込んだ庶民の知恵にあります。じつは地元では「すじ」「すじこん」と呼ぶのが普通で、「ぼっかけ」という名が広まったのは、震災復興のなかで開かれた食のイベントがきっかけと言われています。ぼっかけ焼きそばや、すじこんをのせたお好み焼きで味わうのが定番です。
南京町で味わう元祖「豚まん」と点心
元町の南、約200メートルの通りに約100店がひしめく南京町は、横浜・長崎と並ぶ日本三大中華街の一つ。ここでの食べ歩きの主役は、なんといっても豚まん(ぶたまん)です。関西で肉まんを「豚まん」と呼ぶのは、じつは神戸が発端。大正4年(1915年)に南京町で創業した店が、中国・天津の包子をもとに日本人の口に合う醤油だれの中華まんじゅうを「豚饅頭」として売り出したのが「ぶたまん」の始まりとされ、今も行列の絶えない名物になっています。
蒸したての豚まんは一個から買え、皮の甘みと肉汁を熱いうちにほおばるのが醍醐味。価格は一個あたり百円台が相場で、食べ歩きにちょうどよい大きさです。豚まんのほかにも、焼き小籠包や春巻き、肉団子、ごま団子といった点心を一品ずつ買い、東西の楼門のあいだに広がる通りを歩きながらつまむのが南京町流。旧正月の時期には春節祭で龍の舞や中国獅子舞が練り歩き、街全体がいっそうにぎわいます。
開港が育てた「神戸洋食」
中華街と並んで神戸の食を語るうえで欠かせないのが、洋食文化です。開港後、居留地に暮らした欧米人や、港に入る外国船のコックたちが持ち込んだ西洋料理が、神戸の人々の手で和洋折衷の家庭的な味に変わっていきました。
その象徴がビフカツ(ビーフカツレツ)。薄く伸ばした牛肉に衣をつけて揚げ、デミグラスソースをかける関西洋食の代表格で、神戸の老舗洋食店が育てた一皿です。ほかにもクリームコロッケやオムライス、ハンバーグといった「街の洋食屋さん」の定番が、三宮・元町界隈の路地に点在しています。これらの店は阪神大水害、神戸大空襲、阪神・淡路大震災をくぐり抜けて暖簾を守ってきた歴史を持つことも多く、価格帯は専門店だけにB級というより「ハレの日のごちそう」寄りですが、神戸の食文化を知るうえで一度は味わいたい味です。
もっと気軽に洋食気分を楽しみたいなら、元町の老舗精肉店の店先で売られる揚げたてのコロッケやミンチカツがおすすめ。良質な牛肉を扱う店ならではのコクのある一個は、紙に包んでもらってそのまま歩きながら食べられます。値段は一個百円前後からと手ごろで、神戸牛で知られる土地の肉文化を、行列に並ばずとも体感できる入り口になっています。
「神戸スイーツ」の原点も食べ歩きで
神戸はスイーツの街としても全国に名を知られますが、その源流もまた港町の歴史にあります。大正から昭和初期、戦乱を逃れて神戸にたどり着いた外国人たちが、本場の洋菓子づくりを持ち込みました。ドイツ人菓子職人が伝えたバウムクーヘン、ロシア系の一家が広めたチョコレートやプリンなど、今に続く神戸の老舗洋菓子ブランドの多くが、この時代にこの街で産声を上げています。
食べ歩きやお土産には、元町・三宮の本店や百貨店の地下で買える焼き菓子やチョコレートが定番です。一個から買えるシュークリームやプリン、小箱のクッキー詰め合わせなど、価格帯も手ごろなものからそろっています。粉もんでお腹を満たし、点心と洋食で港町の混血の味を知ったあとは、最後に洋菓子で締めくくる。これが、食の街・神戸をいちばん神戸らしく歩く順路です。
食べ歩きの実用メモ
長田の粉もんを目指すならJR・地下鉄海岸線の新長田駅、南京町と洋食・スイーツは元町・三宮が拠点です。両エリアはJR神戸線で数分とアクセスがよく、半日あれば「長田で粉もん→元町・南京町で点心と洋食→三宮でスイーツ」と一筆書きで回れます。商店街の鉄板店や中華の人気店は昼どきや週末に混み合うので、時間をずらすか、テイクアウトを上手に使うのがコツ。神戸は六甲の山と海のあいだに街が細長く広がっているため、一度に詰め込みすぎず、ハーバー方面の散歩を挟みながらゆっくり味わうのがおすすめです。
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