首都圏でありながら、都市の喧騒を忘れさせてくれる本格的な日本庭園が、立川市の国営昭和記念公園の一角に広がっています。四季折々の草花や木々が彩る約6ヘクタールの広大な庭園は、訪れるたびに異なる表情を見せてくれます。
首都圏最大規模を誇る、昭和記念公園の日本庭園
平成9(1997)年4月に誕生した国営昭和記念公園の日本庭園は、戦後につくられた日本庭園としては首都圏最大規模を誇ります。約6ヘクタールという広大な敷地に、伝統的な造園技術が随所に施され、都市の中に非日常の空間が生み出されています。
この庭園は「緑の回復と人間性の向上」という昭和記念公園全体の基本理念に基づいて造られました。日本人が長い歴史の中で育んできた自然との関わり方を凝縮し、訪れる人々に伝統的な文化体験の場を提供することを目的としています。立川ゲートから徒歩約25分、西立川ゲートから約20分、砂川ゲートからは約15分という園内の奥まった位置にあるため、公園の賑わいから少し離れ、静かな時間を楽しめる場所でもあります。
江戸時代の美学を伝える「池泉回遊式庭園」
庭園の構成様式は、江戸時代に大きく発展した「池泉回遊式庭園」と呼ばれるものです。池を中心に置き、その周囲をめぐりながら刻々と変わる景色を楽しむことができる設計が特徴で、歩を進めるたびに異なる角度から庭の表情を眺められるため、同じ場所を繰り返し訪れても飽きることがありません。
園内には日本庭園の伝統技術が数多く散りばめられています。北側には「野面積み(のずらづみ)」と呼ばれる自然石をそのまま積み上げた石組みが設けられており、加工された石では出せない素朴な風合いが楽しめます。木橋のたもとには「つくばい」が置かれ、冬になると「マツの雪吊り」が庭園に独特の風情を添えます。さらに竹垣、露地、飛石、延べ段といった要素が随所に配置され、日本庭園の様式美を全体で体感できる構成となっています。
庭園北側には高低差30メートルという存在感ある人工の山が造られており、マツやコナラなどの樹木に覆われたこの山が借景として取り込まれています。借景とは庭の外の景色を庭の一部として見せる伝統的な技法で、この山を取り込むことで庭園に奥行きと広がりが生まれ、都市の中にいることを忘れるような景観が実現しています。庭園の外周部にはカシやシイノキなどの常緑樹、モウソウチクが植えられており、周囲の建築物を視界から遮断することで、日常と切り離された独自の空間を生み出しています。
一年中楽しめる、豊かな四季の植栽
この庭園の大きな特徴の一つが、落葉広葉樹を積極的に取り入れた植栽設計です。モミジやコナラなどの落葉広葉樹が全体の約6割を占めており、これは明るい武蔵野の樹木林をイメージしたもの。歴史ある日本庭園は常緑樹が多く重厚な雰囲気が主流ですが、ここでは木漏れ日が差し込む開放的な空間が意識されています。
春から冬まで、一年を通じて様々な花が咲き誇ります。早春にはウメや二ホンズイセン、サンシュユが咲き始め、春にはサクラ、ボタン、ツツジ、イチハツ、シャガが続きます。初夏にはアジサイやハナショウブが池や小径を彩り、夏はスイレン、キキョウ、カンゾウが涼しげな雰囲気を演出します。秋にはホトトギス、コムラサキの実、ツワブキが見ごろを迎え、庭園を包む紅葉が圧巻の景色を見せてくれます。冬はマンリョウの赤い実、カンツバキ、サザンカが寒さの中でひっそりと咲き、マツの雪吊りとともに凛とした冬の美を醸し出します。
この庭園の誕生によって、昭和記念公園では以前は楽しめなかった本格的な紅葉が見られるようになったのも、秋の訪問を特に魅力的にしている理由の一つです。
数寄屋大工の技が光る「歓楓亭」で茶の文化を体験
庭園の西側の岸には「歓楓亭(かんふうてい)」が建てられています。銅板葺きの木造平屋建てによる数寄屋建築で、日本でも数少なくなった数寄屋大工などの職人が受け継いできた伝統技術が随所に活かされています。床の間を備えた広間、次の間、小間、控えの間、立礼席、水遣などで構成される内部空間は、本格的な茶会が開けるほどの格式を持っています。
歓楓亭では、有料でお菓子とお抹茶のセット(呈茶)を楽しむことができます。茶道の作法や知識がなくても、庭園を眺めながら一服のお茶をいただくだけで、日本の伝統文化に触れる贅沢な時間が過ごせます。また「はじめてのお茶室」と題したイベントも定期的に開催されており、初めてお茶室を訪れる方でも気軽に参加できる機会が設けられています。個人や団体への貸し出しも行っており、本格的な茶会や文化活動の場としても広く活用されています。
水景と四阿が織りなす庭園の風景
歓楓亭の南側には「清池軒(せいちけん)」が配置されています。この建物は池に突き出すように建てられており、対岸から眺めると水面に浮かんでいるように見えるのが特徴です。庭園内を歩き回る中で、様々な角度から見える清池軒の姿が、庭の景観に落ち着いた格調を添えています。
庭の北の高台には四阿(あずまや)の「昌陽(しょうよう)」があります。ここからの眺めは特別で、四阿の柱や屋根が額縁のような役割を果たし、その枠の中に北の山の景色と池に映る姿が収まるように計算されています。まるで一枚の絵を眺めているような景観が広がり、訪れる人々を思わず立ち止まらせます。
また「涼暮亭(りょうぼてい)」は滝を眺めるための四阿です。その脇には北の森から湧き出した水が落差7メートルの岩組を勢いよく流れ落ち、渓流となって池へと注ぎ込む様子を間近に感じられます。水音が静かに響く空間は夏の暑い時期でも涼やかで、庭園を訪れる大きな楽しみの一つとなっています。
訪問前に確認したい基本情報
日本庭園は開園時間9時30分から閉園30分前まで利用できます。公園への入場には別途入園料が必要です。庭園内はペットの同伴、喫煙、飲食、レジャーシートやテントの利用は禁止されていますが、熱中症予防のための水分補給は可能です。これらのルールを守ることで、静かで落ち着いた庭園の雰囲気が保たれています。
アクセスはJR青梅線・立川駅から昭和記念公園に入場後、立川ゲートから徒歩約25分、西立川ゲートからは徒歩約20分、砂川ゲートからは徒歩約15分です。広い公園の奥に位置するため、公園内のレンタサイクルやパークトレインなどの移動手段を活用するとよりスムーズに訪れることができます。
Access
立川ゲート 徒歩約25分 西立川ゲート 徒歩約20分 砂川ゲート 徒歩約15分
Hours
9:30~閉園30分前まで
Budget
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