水戸駅から程近い備前町に、茨城の歴史と文化、そしてお金の不思議が一堂に会するユニークな施設がある。無料で入館できる常陽史料館は、地域の知的好奇心を満たす穴場スポットとして、地元市民から観光客まで幅広く親しまれている。
常陽銀行60周年記念として生まれた文化拠点
常陽史料館が開館したのは1995年(平成7年)のこと。地域に根ざした金融機関として茨城県内で長く歩んできた常陽銀行が、創立60周年の節目を記念して設立した施設だ。単なる銀行の記念館にとどまらず、郷土の歴史・芸術文化・金融経済に関する幅広い資料を収集・公開する総合文化施設として、公益財団法人常陽藝文センターが運営している。
「芸術・文化を通じて潤いのある郷土づくりに貢献する」という理念のもと、入館料は無料。開館時間は10時から17時で、月曜・日曜を定休日としている。水戸市の文化振興に真摯に向き合う姿勢が、30年近くにわたって多くの来館者に支持されてきた理由のひとつだろう。
貨幣ギャラリー:お金と銀行の歴史をたどる旅
館内の目玉コーナーのひとつが「貨幣ギャラリー」だ。日常生活に欠かせない「お金」と、それと深く関わる「銀行」の誕生から現在に至るまでの歴史を、実物資料とともに丁寧に紹介している。
展示のシンボルともいえるのが、土浦市手野町で出土した「埋銭」——中国から輸入された渡来銭の実物だ。土の中に眠っていた貨幣が放つ歴史の重みは、ガラスケース越しでも十分に伝わってくる。古銭コーナーでは、日本最古の金属貨幣として知られる和同開珎をはじめ、皇朝十二銭、武田氏の甲州一分金、豊臣氏の永楽通宝、徳川氏の慶長小判や享保大判など、江戸時代までに作られた貨幣77種類が一堂に並ぶ。これだけの古銭が無料で見られる施設は全国的にも珍しい。
江戸時代の両替商の店先を再現したコーナーでは、算盤や秤、銭箱といった当時の道具も展示。複雑な換算率が必要だった江戸期の貨幣制度についても分かりやすく解説されており、子どもから大人まで楽しみながら学べる構成になっている。水戸藩独自の藩札や、全国に先駆けて水戸藩が鋳造を始めたという寛永通宝なども展示されており、地元茨城の視点からお金の歴史を掘り下げる内容は特に興味深い。
体験型の展示も充実している。「重さ比べ」コーナーでは小判が詰まった千両箱と1億円分の1万円札の重量を実際に体感でき、「偽造防止技術」コーナーでは1万円札の精巧な安全装置を拡大模型で確認できる。回転式ケースから見たい貨幣を呼び出せる「貨幣のいろいろ」コーナーも、訪れるたびに新しい発見があると好評だ。
史料ライブラリー:約3万冊超の専門資料を無料で閲覧
貨幣ギャラリーと並ぶ充実のコンテンツが「史料ライブラリー」だ。金融・郷土文化・芸術・歴史に関する図書資料を幅広く揃え、閲覧サービスを無料で提供している。
郷土資料は約24,000冊にのぼり、野口雨情・長塚節・横山大観といった茨城ゆかりの文学者や芸術家の作品集・研究書から、水戸学・徳川光圀・幕末史などの水戸藩研究書、茨城県および近接県の県史・市町村史まで、地域研究の宝庫といえる内容だ。金融史・社史は約2,900冊、美術全集や文学全集をはじめとする一般・参考図書は約6,900冊と、専門的な調査から趣味の読書まで幅広いニーズに応える蔵書構成となっている。郷土史や水戸学を深く掘り下げたい研究者・学生にとっても、見逃せない施設だ。
アートスポット:地域アーティストとの出会いの場
館内の「アートスポット」では随時企画展示が行われており、地域の現代アーティストを中心とした多彩な作品と出会える。2026年4月から5月にかけては、水戸市在住のガラス作家・塩谷直美さんの個展「硝子ことば」が開催中だ。詩や言葉からインスパイアされたイメージを、コールドキャスト技法(耐火石膏型にガラス片を詰めて窯で焼成・溶融する技法)によるオブジェとして表現した作品23点が展示されており、温もりと透明感が共存するガラスの世界観が来館者を魅了している。
続く2026年6月から8月には「妖怪展」が予定されており、歴史と現代が交差するユニークな企画が続く。無料とは思えない充実したアート体験ができると、リピーターも多い。
アクセスと利用案内
JR水戸駅北口からバスに乗り、泉町1丁目バス停で下車後、徒歩約7分で到着する。駐車場は10台分用意されているため、車でのアクセスも問題ない。
開館時間は10:00〜17:00で、毎週日曜日・月曜日のほか、ゴールデンウィーク期間(5月3〜5日)、お盆(8月13〜16日)、年末年始(12月29日〜1月4日)が休館日となっている。入館は無料のため、水戸観光の合間に気軽に立ち寄れるのが嬉しいポイントだ。歴史・文化・アートが凝縮された常陽史料館は、水戸の奥深さを再発見できる場所として、ぜひ一度訪れてほしいスポットのひとつだ。
Access
JR水戸駅北口よりバスで泉町1丁目下車、徒歩7分
Hours
10:00〜17:00、定休日: 毎週日曜日・月曜日、5/3~5/5、8/13~8/16、12/29~1/4
Budget
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