東海道の要衝、静岡県掛川市にそびえる掛川城は、戦国時代から江戸時代にかけて幾多の武将たちが治めた名城です。「東海の名城」とも称されるその姿は、1994年に全国初の木造復元天守として現代に甦り、今もなお多くの旅人を惹きつけてやみません。
戦国の要衝として栄えた城の歴史
掛川城の歴史は、15世紀末にさかのぼります。今川氏の家臣・朝比奈泰熙が当地に城を築いたのがその始まりとされ、その後、今川氏の勢力拡大とともに掛川は東海道における重要な拠点となりました。
戦国時代に掛川城の名を歴史に刻んだのが山内一豊です。1590年(天正18年)、豊臣秀吉の小田原攻めに従軍した後、一豊は掛川城主に任ぜられます。一豊とその賢妻・千代が二人三脚で城と城下町を整備した逸話は、NHK大河ドラマ「功名が辻」(2006年)でも広く知られるようになりました。内助の功として名高い千代が、婚礼前に蓄えた黄金十枚で一豊に名馬を購わせ、出世の糸口を作ったという故事は今も語り継がれています。一豊は関ヶ原の戦いの後に土佐藩主となり掛川を離れますが、彼が力を注いだ天守や城郭の整備はその後の掛川城の礎となりました。
江戸時代には複数の大名家が城を治め続けましたが、1854年(嘉永7年)の安政東海地震によって天守をはじめ多くの建造物が倒壊し、その後再建されることなく明治維新を迎えました。
全国初・木造で蘇った天守
現在の掛川城天守は、1994年(平成6年)に完成した木造復元天守です。これは全国に先駆けた「本格木造天守の復元」として大きな話題を呼び、城郭復元のモデルケースとして今も高い評価を得ています。
復元に際しては、江戸時代の古絵図や発掘調査の成果をもとに当時の姿を忠実に再現することが目指されました。外観は白漆喰の壁と黒い木組みが際立つ三重四階の構造で、城山の丘の上にそびえるその姿は市街地のどこからでも目を引きます。内部は木の温もりが感じられる造りで、各階の展示では掛川の歴史や城の変遷を学ぶことができます。最上階からは掛川市街地はもちろん、晴れた日には遠く富士山を望む眺望が広がります。
天守のほかに特筆すべきは、江戸時代後期に建てられた「掛川城御殿」の存在です。御殿は藩の政庁および藩主の住居として機能していた建物で、現存する江戸時代の城郭御殿としては全国的にも珍しい存在です。国の重要文化財に指定されており、書院造の格調高い建築様式を間近に見学することができます。天守と御殿をセットで巡ることで、城の軍事的側面と政治・生活の両面を立体的に理解できます。
四季折々の表情を楽しむ
掛川城はどの季節に訪れても異なる魅力を見せてくれます。
春(3月下旬〜4月上旬)は桜の季節です。城山公園一帯に桜が咲き乱れ、白亜の天守と満開の桜が織りなす景色は格別の美しさで、多くのカメラマンや観光客が訪れます。夜間にはライトアップが実施されることもあり、昼とはまた異なる幻想的な雰囲気を楽しめます。
夏は青葉に囲まれた緑鮮やかな天守が見どころです。城山の木々が生い茂る中を散策しながら歴史に思いを馳せれば、日常とは異なる静謐な時間を味わえます。
秋(10〜11月)は紅葉が城山を彩ります。赤や黄色に染まった葉と天守の白壁が生み出すコントラストは深い秋の情緒を漂わせ、散策路を歩くだけでも満足感が得られます。
冬は空気が澄み渡り、天守からの眺望が最も遠くまで届く季節です。晴れた日には富士山の雄姿を鮮明に望むことができ、静寂の中で城の佇まいをゆっくりと堪能することができます。
城下町散策と掛川茶の魅力
掛川城の周辺は、城下町の面影を今に伝えるエリアが広がっています。城の麓に続く石畳や大手門周辺を歩けば、歴史の空気をじかに感じることができます。
城から徒歩圏内には「竹の丸(旧松本家住宅)」があります。明治期に建てられた和洋折衷の邸宅で、国の登録有形文化財に指定されています。当時の生活空間を見学でき、掛川の近代史に触れる貴重な機会を提供しています。
また、掛川は「掛川茶」の産地としても全国に名が知られています。温暖な気候と豊かな土壌に育まれた掛川茶は深蒸し茶が特徴で、まろやかな旨みと深い香りが茶好きに広く愛されています。城下町に点在する茶店でひと息入れながら、地元の銘茶を味わうのも旅の醍醐味のひとつです。お土産に掛川茶を選べば、旅の記憶をそのまま自宅へ持ち帰ることができます。
アクセスと訪問の基本情報
掛川城へのアクセスは大変便利です。JR東海道新幹線「掛川駅」または東海道本線「掛川駅」から徒歩約10分という好立地にあります。東名高速道路「掛川IC」からは車で約10分です。
開館時間は通常9時〜17時(入場は16時30分まで)で、年末年始を除いて年中無休です。入場は天守と御殿がセットになったチケットが販売されており、両施設をまとめて見学できます。城山の石段を登るため、歩きやすいシューズで訪れることをおすすめします。
名古屋から東海道新幹線で約30分、東京からは約1時間20分とアクセスが良く、静岡県西部を旅するうえでの立ち寄りスポットとして最適です。浜松や静岡と組み合わせた周遊ルートで訪れる旅行者も多く、歴史と自然と食が揃う掛川の魅力を存分に楽しむことができます。
Access
掛川駅から徒歩圏内
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