東京・新宿の東口に足を踏み入れると、雑踏のなかで多くの人々が一斉に空を見上げ、スマートフォンを構えている光景に出会う。その視線の先には、巨大なLEDスクリーンからいまにも飛び出してきそうな、リアルな猫の姿がある。「新宿東口の猫」は、デジタルと現実の境界を溶かす新感覚の体験として、国内外の旅行者を魅了し続けている。
世界最多乗降客数の駅前に現れた巨大な三毛猫
「新宿東口の猫」が初めて姿を見せたのは、2021年7月のことだった。新宿駅東口すぐそばのクロス新宿ビルに設置された大型LEDビジョン「クロス新宿ビジョン」に、突如として巨大な三毛猫(オス)の3D映像が映し出され、たちまちSNSで話題を呼んだ。
舞台となる新宿駅は、世界一の乗降客数を誇るターミナル駅。そこに出現した前代未聞の「飛び出す猫」の映像は、国内外のメディアに次々と取り上げられ、瞬く間に新宿を代表するランドマークとなった。インバウンド旅行者を含む多くの人々が、この猫を一目見るために新宿東口を訪れるようになり、2025年に開設4周年を迎えた現在も、その人気は衰えていない。
3D映像の秘密――なぜ猫は飛び出して見えるのか
「新宿東口の猫」の最大の魅力は、裸眼でありながら猫が本当にスクリーンから飛び出してくるように見える、その驚くべき立体感だ。この錯覚を生み出しているのは、人間の視覚の特性を巧みに利用した映像制作の工夫である。
映像は、新宿東口の駅前広場から見たときに最も立体的に映るよう、細かく計算されて制作されている。白い壁の「部屋」を背景に、猫の耳やしっぽだけをフレームの外側へ突き出すように配置することで、人間の脳が自然と奥行きを感じ取り、まるで猫がスクリーンを超えて現実空間に飛び出しているかのような錯覚が生まれる仕組みだ。さらに、クロス新宿ビジョン特有の湾曲したLEDスクリーンの形状も、この錯視効果を後押ししている。
あくびをしたり、眠そうに目を細めたり、急にこちらへ向かって跳びかかってきたりと、猫の動きは非常に豊かで表情豊か。耳としっぽの動きは猫の感情と連動しており、見るたびに異なる表情を楽しめる。
猫さまの一日――放映スケジュールと楽しみ方
猫さまは365日、毎朝7時に目を覚ます。クロス新宿ビジョンの放映開始とともに活動をはじめ、深夜1時(25時)の放映終了まで、日中は何度もその姿を見せてくれる。特に注目したいのが、毎時0分・15分・30分・45分に放映される「猫ちゃんねる」だ。3D動画専門のこの時間帯に訪れると、猫の魅力をたっぷりと堪能することができる。
また、通常の広告放映の合間にも不意に猫さまが登場することがある。いつ現れるかわからないというサプライズ感も、この体験の醍醐味のひとつだ。3D動画は2025年2月時点で全11編が制作されており、訪れるたびに異なる映像に出会える可能性がある。公式YouTubeチャンネルでも全編を視聴できるが、やはり現地の大スクリーンで見る迫力には格別なものがある。
深夜0時以降は音声がなくなるため、静かな夜の新宿で猫の映像だけを楽しむ雰囲気もまた一興だ。季節や時間帯によって周囲の景色や人の賑わいも変わるため、昼間と夜とで異なる印象を楽しめる点も魅力のひとつといえる。
国内外で認められた受賞歴
「新宿東口の猫」は、その革新的な表現と社会的インパクトが高く評価され、登場以来、多数の権威ある賞を受賞している。第59回JAA広告賞の屋外・交通広告部門でグランプリを受賞したほか、文化庁が主催する第25回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門ではソーシャル・インパクト賞を獲得。アジア太平洋地域最大級の広告祭であるADFEST 2022でもMEDIA LOTUSブロンズを受賞し、国際的にもその価値が認められた。
さらに、デジタルサイネージアワード2022グランプリ、第75回広告電通賞OOH部門のOOH広告最高賞、2022年度日本のアートディレクションADC賞など、広告・アートの両分野にわたって高い評価を得ている。これだけの受賞実績は、単なる話題性にとどまらない、表現としての質の高さを示している。
また、2025年8月の「世界猫の日」に合わせて日本郵便とのコラボレーションが実現し、オリジナルのフレーム切手セットが発売されるなど、社会的な注目度の高さが伺える取り組みも続いている。
アクセスと周辺情報
クロス新宿ビジョンは、東京都新宿区新宿3丁目のクロス新宿ビル(〒160-0022)に設置されている。最寄り駅はJR新宿駅で、東口から徒歩わずか2分。A9出口またはB13出口を利用すれば、出てすぐにビジョンを見上げることができる。西武新宿駅からも徒歩3分ほどとアクセスしやすい。
周辺には新宿の代表的な繁華街・歌舞伎町や、老舗のデパート・映画館が立ち並ぶエリアが広がっており、観光やショッピングと組み合わせて楽しめるロケーションだ。混雑しやすい週末の昼間は人垣もできるほどの人気ぶりだが、早朝や平日の時間帯を選べば、比較的ゆっくりと鑑賞することができる。公式グッズは公式サイトから購入でき、訪問の記念にもなる。入場料や観覧料などは一切不要で、誰でも無料で楽しめる点も大きな魅力だ。
Access
JR新宿駅東口から徒歩2分 JR新宿駅A9またはB13出口すぐ 西武新宿駅から徒歩3分 〒160-0022 東京都新宿区新宿3-23-18 クロス新宿ビル
Hours
07:00-25:00(年中無休)
Budget
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