尾道の坂道を歩き、路地を抜けると静かにたたずむ大山寺は、平安時代から続く歴史と、人々の素朴な祈りを今に伝える真言宗の古刹です。尾道七佛めぐりの一寺として地元の信仰を集め、観光客にも親しまれています。
平安から続く歴史と菅原道真公の縁起
大山寺の正式な寺号は「米瑠山天神坊大山寺」といい、平安時代前期に創建されたと伝えられています。延久年間(1069〜1074年)に中興され、承安5年(1175年)に再建されたという記録が残る、長い歴史を持つお寺です。
この寺にまつわる縁起として特に知られているのが、菅原道真公との深い関わりです。延喜元年(901年)、大宰府へ左遷される途中、道真公が当浦に立ち寄り、袖に自らの御影(みかげ)を描いて村人に渡したと伝えられています。その後、境内に社が建立され「御袖天満宮(みそでてんまんぐう)」と呼ばれるようになりました。現在も大山寺と御袖天満宮は、神仏習合の名残として境内を行き来できる構造になっており、両方にお参りすることで二重の御利益を得られると言われています。
御本尊と個性豊かな境内の見どころ
大山寺の御本尊は大日如来(だいにちにょらい)で、十一面観世音菩薩も本尊として祀られています。境内にはさまざまな仏像や祀り物が点在しており、一周するだけで多彩な信仰の世界に触れることができます。
境内東側に祀られているのが「日限地蔵尊(ひぎりじぞうそん)」です。日を限って日参し、一心に願い事をすることで心願が成就すると伝えられる霊験あらたかなお地蔵様で、特に受験シーズンには合格祈願のために多くの参拝者が集まります。その前面に並ぶ6体のお地蔵様は「重軽地蔵(おもかるじぞう)」と呼ばれ、最終日にお地蔵様を持ち上げてみると、軽く上がれば願いが叶い、重くて上がらなければ叶わないと教えてくれるとされています。観光で訪れた方でも、その日だけのお参りで試してみることができます。
同じ境内に祀られている「おさすり観音」は、自分の体の悪いところに触れてから観音様の同じ箇所をさすることで、病が癒されると信じられています。また、隣接する庚申堂(こうしんどう)には珍しい青色金剛神がお祀りされており、60日に1度の庚申の日には庚申祭が行われます。
尾道七佛めぐりの札所として
大山寺は「尾道七佛めぐり」の札所のひとつに数えられています。市内7つの寺院を巡る霊場めぐりで、大山寺は合格祈願・心願成就のご利益で知られています。
七佛めぐりに合わせて授与されるお守りブレス念珠の中でも、大山寺では赤瑪瑙(カーネリアン)が用いられています。目標の達成や成功に導く力があるとされ、集中力と活力を高めると伝えられる石で、学業や仕事で力を発揮したい方へのお守りとして好評です。七佛すべてを巡り、それぞれ異なる石のブレスを集める参拝者も多く、尾道散策の楽しみのひとつになっています。
住職おすすめの隠れスポットと朝ドラの梵鐘
大山寺には、参拝者の多くが見落としがちな隠れた見どころがあります。境内にある「21世紀の新三猿像」は、従来の「見ざる、言わざる、聞かざる」とは逆の発想で作られた像です。「見てご猿、言うてご猿、聞いてご猿」というメッセージが込められており、世の中の正しいことをよく見て、よく言い、よく聞こうという願いが凝縮されています。写真に収めてスマートフォンの待ち受けにすれば、すぐにお守りになるとも言われており、記念撮影する参拝者が後を絶ちません。
また、NHK朝の連続テレビ小説「てっぱん」の舞台にもなったことで知られています。ドラマの中でヒロイン・あかりが突いた梵鐘が今も境内に残っており、希望すれば実際に鐘をつかせてもらうこともできます。ドラマファンにとっては欠かせない聖地のひとつです。
境内からは尾道らしい風景も広がります。甍(いらか)が連なる町並みと、向かいの千光寺山を行き交うロープウェー、天寧寺の三重塔が重なる眺めは、尾道を象徴する景色のひとつ。風向きによってはロープウェーや電車の音まで境内に届き、独特の尾道情緒を味わえます。
年中行事とアクセス情報
大山寺では年間を通じてさまざまな行事が行われています。1月1〜2日の初護摩に始まり、2月3日の節分会、7月23〜24日の日限地蔵大祭、10月23日の土砂加持法要と続きます。月例行事としては毎月23日に日限地蔵月並祭、毎月24日に水子地蔵月並祭が営まれており、地域の信仰行事として長く受け継がれています。
拝観時間は9時から16時30分、納経受付は9時から17時までです。拝観料は無料で、誰でも気軽に訪れることができます。
アクセスは、尾道駅からバスで「長江口」下車後、徒歩5〜6分ほどです。車の場合は尾道インターチェンジから約20分ですが、境内直前まで車では入れないため、近隣に駐車して徒歩でのお参りが必要です。坂道を歩きながら尾道の町並みを眺めつつ向かうその道のりもまた、参拝の楽しみのひとつといえるでしょう。
Access
尾道駅より「長江口」バス下車、徒歩5~6分
Hours
拝観 9:00~16:30、納経 9:00~17:00
Budget
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