新宿の高層ビル群がそびえる西新宿に、世界中の人々に愛されるポップアートの傑作が存在する。アメリカの芸術家ロバート・インディアナが生み出した「LOVE」彫刻は、訪れる人々の心をつかんで離さない、都市の中の小さな奇跡だ。
ロバート・インディアナと「LOVE」の誕生
「LOVE」という作品を語るうえで欠かせないのが、その生みの親であるロバート・インディアナ(1928〜2018年)だ。本名クラーク・ジョージ・マーティンというアメリカ・インディアナ州出身のアーティストは、自らの出身地に敬意を込めてペンネームに「インディアナ」を採用した。ポップアートの旗手として1960年代のニューヨーク芸術界に登場し、コマーシャルアートと純粋芸術の境界を軽やかに越えることで独自のスタイルを確立した。
「LOVE」のモチーフが初めて世に出たのは1964年のこと。ニューヨーク近代美術館(MoMA)のクリスマスカード用に制作されたグラフィックデザインが原型だった。赤い大文字で「LO」「VE」と積み重なり、「O」の文字だけが右に傾いたあの独特のロゴは、瞬く間に世界中に広まった。その後1970年にフィラデルフィア美術館に初めて彫刻として設置され、以来ニューヨーク、台湾、シンガポールなど世界各地に同様の作品が置かれてきた。新宿の「LOVE」もその系譜に連なる一作だ。
新宿アイランドとアートの融合
作品が設置されているのは、1994年に竣工した複合施設「新宿アイランド」のタワー棟前広場。西新宿の再開発で生まれたこの巨大な建築群は、オフィス・ホテル・商業施設を一体化したランドマークだ。その前庭に、高さ約3メートルを誇る赤い「LOVE」彫刻がどっしりと構えている。
周囲にはほかにも複数のパブリックアートが点在しており、新宿アイランド全体がオープンエアの美術館のような趣を持つ。都会の喧騒と洗練されたアートが共存するこの空間は、ただの通り道ではなく、立ち止まって目を向けたくなる場所として多くの人に親しまれている。赤いステンレス製の彫刻はどこから見ても存在感があり、青空の日には映え写真を撮ろうとする人の列ができることも珍しくない。
見どころ:写真映えと美術鑑賞
「LOVE」彫刻の最大の魅力は、その圧倒的なフォトジェニック性にある。シンプルなアルファベット4文字でありながら、見る角度や時間帯によって表情がガラリと変わる。午前中の柔らかな光の中では温かみのある赤が際立ち、夕暮れ時にはビルの灯りを反射して幻想的な輝きを放つ。カップルが寄り添って撮影する場面も多く、「愛」を象徴する作品としての意味合いが写真に自然と宿る。
また彫刻そのものの造形美も見逃せない。4つの文字が2段に積み重なる構成、わずかに傾いた「O」が生み出す動的な緊張感、ステンレス素材が放つメタリックな輝きと温かみのある赤の対比——細部を観察すればするほど、ポップアートが持つ計算された美しさに気づかされる。インディアナが込めた「愛は常にまっすぐではないが、それでも愛だ」というメッセージが、傾いた「O」に象徴されているとも言われている。
季節ごとの楽しみ方
新宿アイランドの「LOVE」彫刻は、四季折々に異なる顔を見せる。
春には前庭の植栽に花が咲き、赤い彫刻と色とりどりの花との対比が美しい。周辺の新宿中央公園や都庁周辺の桜とあわせて散策するのもおすすめだ。夏は青空をバックにした鮮やかな赤が映え、ビジネスパーソンたちが昼休みに訪れる姿も見られる。秋になると西新宿のイチョウ並木が黄金色に染まり、黄と赤のコントラストが絵画のような光景を作り出す。冬はクリスマスシーズンにビル全体がライトアップされ、「LOVE」の彫刻も夜の光の中で一層ロマンティックな雰囲気を醸し出す。バレンタインデーやクリスマスには記念撮影の名所としてにぎわいを見せる。
アクセスと周辺情報
アクセスは非常に便利で、JR・小田急・京王・東京メトロ・都営地下鉄が乗り入れる新宿駅の西口から徒歩約10分。都営地下鉄大江戸線の都庁前駅からなら徒歩約3分と、さらに近い。西新宿の高層ビル街を歩きながら向かう道のりも、東京の都市景観を体感する小さな旅になる。
周辺には東京都庁(無料の展望台あり)、新宿中央公園、モード学園コクーンタワーなど見どころが多い。ランチやカフェには新宿アイランド内の飲食店やヒルトン東京のラウンジも選択肢に入る。新宿駅西口からの高層ビル街散策ルートに「LOVE」彫刻を組み込めば、半日かけて充実した西新宿アート・建築巡りが楽しめる。入場料は不要で、見学は基本的に終日可能だ。
旅のヒントと訪問前に知っておきたいこと
混雑を避けたい場合は、平日の午前中か夕方がおすすめ。週末の昼間は特に観光客やカップルが多く訪れる。彫刻の周囲はオープンスペースになっているため、天気のよい日は広場のベンチでひと休みしながらゆっくり鑑賞できる。
なお、新宿アイランドには電話番号(03-3348-2850)やウェブサイト(https://www.shinjuku-i-land.jp/art/)があり、敷地内のアート作品に関する情報も発信されている。施設内には他のパブリックアートも多数あるので、「LOVE」だけでなくぜひ全体を巡ってみてほしい。世界各地に存在する「LOVE」シリーズの作品を、ここ東京・新宿で目にすることができる——その事実だけでも、訪れる価値は十分にある。
Access
新宿駅から徒歩圏内
Hours
Budget
RELATED SPOTS
Related Spots(3 spots)