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水の都・松江を歩く|国宝の城下町と宍道湖畔、八雲が愛した散策コース
観光・体験
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水の都・松江を歩く|国宝の城下町と宍道湖畔、八雲が愛した散策コース

歩いて出会う、水の都・松江

松江は、東に中海、西に宍道湖を抱え、その二つを大橋川がつなぐ「水の都」です。中心には国宝・松江城がそびえ、城をぐるりと囲む堀川や、江戸時代の地割りを残す城下町が今も息づいています。バスの車窓や遊覧船からでは通り過ぎてしまう細い路地や老松の並木、堀端の水音は、自分の足で歩いて初めて立ち上がってきます。

もう一つ、松江を歩く楽しみを深めてくれるのが小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の存在です。松江で暮らし、城下の風景や寺の伝説を随筆に書き残した彼の足跡をたどると、ただの散歩道が物語を帯びた道に変わります。ここでは、城下町・水辺・湖畔という三つの性格の異なる散策コースと、少し足を延ばす寺の道を、距離の目安とともに紹介します。

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コース1:塩見縄手と城山公園、城下町を歩く

まず歩きたいのが、国宝・松江城を中心とした城下町です。松江城天守は全国に12しか残らない現存天守の一つで、別名を千鳥城といいます。2015年(平成27年)7月に城郭建築として国宝に指定され、慶長16年(1611年)の完成と確認された堂々たる天守です。

天守を取り囲む城山公園には松や竹林の間を縫う散歩道があり、桜・椿・梅・紅葉と四季の移ろいを足元に感じながら歩けます。坂と石段の多い園内をゆっくり一巡りするだけでも、城下を見下ろす視点と木陰の涼しさが味わえます。

そのまま城の北側のお堀端へ抜けると、城下町随一の散策路塩見縄手(しおみなわて)が東西に約500m続きます。堀沿いに植えられた老松の並木と土塀、武家屋敷の構えが連なるこの通りは「日本の道100選」に選ばれ、松江市の伝統美観保存地区にも指定された一角です。通りのほぼ中央には江戸時代の構えを今に伝える武家屋敷が残り、その先には松江で暮らした小泉八雲の旧居記念館、茶室明々庵が点在します。

お堀の水面に松の影が映る道を、屋敷を一軒ずつのぞきながらたどると、500mの通りでも見学を含めて一、二時間はあっという間です。城山公園の周回と合わせ、半日かけて歩きたい城下町コースです。

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コース2:堀端から水辺の町へ、カラコロ工房と京店

松江を「水の都」たらしめているのが、城を囲む堀川です。内堀・外堀をつなぐ水路は城のまわりを約3.7km、17の橋をくぐりながらぐるりと巡っています(この水路を約50分で一周する堀川遊覧船も人気ですが、ここでは舟ではなく堀端を歩く視点で紹介します)。

塩見縄手の堀端から南へ下り、水の流れに沿って歩いていくと、町は城下の静けさから商家の賑わいへと表情を変えていきます。やがて宍道湖と中海を結ぶ大橋川に出ると、川面を渡る風と橋の景色が開けます。橋のたもと、松江大橋の北側一帯が、水辺の散策の見どころです。

川沿いに歩を進めると、赤れんが風の重厚な洋館カラコロ工房が目を引きます。大正の趣を残す旧日本銀行松江支店を活用した登録有形文化財で、中庭のカラコロ広場には大きな赤い傘とベンチが置かれ、壁には松江に縁の深い小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)のレリーフがはめ込まれています。歩き疲れたら腰を下ろし、水辺の町をひと息ながめるのにちょうどよい場所です。

そこから京橋川沿いに延びるのが、約60の店が軒を連ねる京店商店街(きょうみせ)です。松江は不昧公(七代藩主・松平治郷)が育てた茶の湯の文化が今も色濃く、通りには老舗の和菓子屋や甘味処が点在します。茶どころの上生菓子や抹茶を味わうのも水辺散策の楽しみですが、店ごとに品も値も異なりますので、その日の気分で暖簾をくぐってみてください。堀端から大橋川、京橋川へと水をたどるこの道は、距離こそ長くありませんが、松江が川と堀で成り立つ町だと体で分かるコースです。

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コース3:宍道湖の湖岸遊歩道を、夕暮れに歩く

松江散策の締めくくりにふさわしいのが、宍道湖の湖畔です。宍道湖大橋の南詰から湖岸に沿って広がる白潟公園を起点に、岸公園・千鳥南公園・末次公園といった湖畔の公園をつないで、湖沿いの歩道が全長およそ1,200m続きます。あずま屋やベンチが点々と置かれ、水面を渡る風を受けながらのんびり歩ける、松江でいちばんおおらかな散歩道です。

この湖岸遊歩道がもっとも輝くのが、日没前のひとときです。湖面に浮かぶ小さな松の島嫁ヶ島を前景に、宍道湖に沈む夕日は「日本の夕日百選」に選ばれた絶景。湖を囲む山々に陽が落ちるため日没はやや早く、空が染まり始めるのは指定時刻の30分ほど前からです。歩道の途中、袖師町の宍道湖通り沿いには、夕景の名所として知られる袖師地蔵と、テラスや歩道が整えられた夕日鑑賞スポット「とるぱ」があり、嫁ヶ島ごしの夕日を眺める人で賑わいます。

急がず、湖の色がゆっくり変わるのを眺めながら歩くのがこのコースの流儀です。歩き終えたら、湖の北側にある松江しんじ湖温泉まで足を延ばすのもよいでしょう。温泉駅に併設された足湯につかれば、湯上がりに湖畔を歩いた一日の疲れがほどけていきます。

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足を延ばして:あじさいと大亀の月照寺

城下町から少し離れますが、季節に合わせて訪ねたいのが、城の北西・外中原町にある月照寺(げっしょうじ)です。松江藩主・松平家の菩提寺で、初代直政から九代までの歴代藩主の墓所が静かな木立の中に並びます。

この寺を有名にしているのが、六代藩主・宗衍の寿蔵碑を背負う大亀の石像です。夜ごと松江の町を徘徊したという伝説が残り、小泉八雲も随筆に書き残しました。頭をなでると長生きできるとも伝わります。そして6月中旬からは境内一面にあじさいが咲き、「山陰のあじさい寺」として多くの人が訪れます。城下の中心からは少し歩く別の道のりですが、雨にぬれた花と古色の墓所を巡る散策には、城下町とはまた違う深い趣があります。

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歩く前のちょっとしたメモ

それぞれのコースは離れていますので、コース間の移動には観光循環バス「ぐるっと松江レイクライン」を組み合わせると効率よく回れます。松江城・塩見縄手・宍道湖畔の主要スポットを結んでいるので、歩きと組み合わせて使い分けるのがおすすめです。

城山公園や塩見縄手は坂や石段、老松の根の張り出しがありますので、歩きやすい靴が安心です。宍道湖畔は遮るもののない湖岸で風が強い日もあり、夕暮れは思いのほか冷えますので、一枚羽織るものを持っておくとよいでしょう。

国宝の天守、城下のお堀端、水辺の商家、湖に沈む夕日――。性格の違う水辺をひとつずつ自分の足でたどると、松江がなぜ「水の都」と呼ばれるのかが、地図の上ではなく足の裏から分かってきます。

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Written by

石井 龍之介

グルメブロガー

日本刀×日本文化体験

観光スポットと刀剣文化をつなぐ多言語展開。