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京都の旬の食材カレンダー|京野菜・鱧・若狭の魚で巡る四季の味
グルメ
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京都の旬の食材カレンダー|京野菜・鱧・若狭の魚で巡る四季の味

海のない街が育てた「旬」の文化

京都市は三方を山に囲まれた内陸の盆地で、海岸線を持ちません。鮮魚が容易に手に入らない土地だからこそ、足元の畑で育つ野菜を磨き上げ、遠くから運ばれてくる魚をありがたく扱う独特の食文化が育ちました。賀茂の畑、西山の竹林、上賀茂の漬物、そして若狭湾から峠を越えて運ばれた魚——京都の旬は「どこで採れ、どうやって都に届いたか」という地理の物語とセットで味わうと、ぐっと面白くなります。観光の合間に旬の一皿を選ぶための、月ごとの手引きとしてお使いください。

春(3〜5月)— 西山の朝堀りたけのこ

京都の春を象徴するのが、市の西側に広がる乙訓(おとくに)地域、西山丘陵の竹林で育つ京たけのこです。乙訓のたけのこ栽培は江戸中期に本格化したと伝わり、色白でえぐみが少なく、生でも食べられるほど柔らかい肉質で知られます。地表に顔を出して日に当たると色が黒ずみ硬くなってしまうため、土がわずかに盛り上がった段階で掘り起こす「朝堀り」がこの地の流儀。最盛期はおおむね3月下旬から5月にかけてで、若竹煮やたけのこご飯、木の芽和えとして料亭から家庭の食卓までを彩ります。

同じ春、年間を通して出回る九条ねぎも忘れられません。京都市南部の九条あたりを発祥とする青ねぎで、内側のぬめりに甘みが宿るのが特徴。後述しますが、味が最も乗るのはむしろ霜の降りる冬場とされます。

夏(6〜8月)— 京野菜の最盛期と祇園祭の鱧

夏は京野菜が一年で最も賑わう季節です。賀茂なすは上賀茂・西賀茂あたりで育まれてきた丸なすで、露地物はおおむね6月中旬から10月半ばまで。ずっしりと肉厚で、油との相性がよく、田楽味噌をのせた賀茂なすの田楽や揚げ出しが夏の定番です。

細長い伏見とうがらしは、その名の通り伏見周辺で古くから作られてきた辛みのない青とうがらし。ふっくらと煮含めたり、じゃこと炒めたりして食べます。一方、京都府北部・舞鶴の万願寺地区を発祥とする万願寺甘とうは、肉厚で辛みがほとんどなく甘みのある大ぶりのとうがらしで、5月頃から秋口まで出回ります。焼いて削り節と醤油をかけるだけで一品になります。

そして京都の夏といえば、何といっても鱧(はも)です。海のない京都で珍重されてきたのは、鱧が生命力に富み、瀬戸内玄界灘から運ばれても生きたまま都に届けられたから。梅雨の水を飲んで旨くなると言われ、7月の祇園祭の頃に需要が最高潮を迎えることから、祇園祭は別名「鱧祭」とも呼ばれます。小骨の多い魚を一寸につき何筋も刻む「骨切り」は京料理人の腕の見せどころ。湯引きにして梅肉を添えた「鱧落とし」は、白い身と紅の梅肉が涼を呼ぶ、京の夏を代表する一皿です。鱧は割烹や京料理店のコースで味わうのが王道で、料金は店の格により幅があります。

秋(9〜11月)— 丹波の実りと海老芋

秋は京都府中部の丹波地方からの便りが主役になります。丹波栗は8月中旬頃から採れはじめ、旬は9〜10月。大粒で光沢のある栗色の皮をまとい、しっとりとした甘みが身上で、渋皮煮や栗ご飯、和菓子の材料として珍重されます。

同じく丹波黒大豆を未成熟のうちに枝豆として収穫する紫ずきんも、9月中旬から10月下旬の限られた時期だけのごちそう。薄皮がほんのり紫がかり、粒が大きくコクのある濃い甘みがあります。出回る期間が短いため、秋に京都を訪れたら見かけしだい味わっておきたい一品です。

里では海老芋(えびいも)が旬を迎えます。湾曲した姿と縞模様が海老を思わせる里芋の一種で、煮崩れしにくく、ねっとりとした上品な味わい。棒だら(干したタラ)と炊き合わせた「いもぼう」は、京都ならではの伝統的な煮物として知られます。

冬(12〜2月)— 聖護院の丸い野菜と上賀茂のすぐき

冬の京野菜は、左京区の聖護院界隈に由来する丸い根菜が看板です。聖護院だいこんは球形に近いずんぐりした大根で、煮ると柔らかく甘く、ふろふきや炊き物に向きます。同じ系統の聖護院かぶは、薄く削いで昆布と漬け込む冬の名物「千枚漬」の材料として欠かせません。

そして上賀茂の冬の風物詩がすぐきです。上賀茂地域で伝統的に栽培されるかぶの一種「すぐき菜」を、塩だけで漬け込み乳酸発酵させた漬物で、独特の酸味から「酸茎(すぐき)」と名づけられたと伝わります。収穫は11月中旬から下旬、漬け上がるのは12月初旬。しば漬・千枚漬と並ぶ「京都三大漬物」のひとつに数えられ、温かいご飯やお茶漬けによく合います。

夏の鱧に対して、冬から春にかけての魚の主役が、若狭湾で揚がる甘鯛若狭ぐじです。海のない京都へは、福井県小浜あたりから一塩して峠を越え運ばれた歴史があり、その経路は「鯖街道」と呼ばれます。ぐじはうろこを付けたまま香ばしく焼く「若狭焼」が代表的な食べ方で、上品な甘みのある身は古くから京料理の高級魚として大切にされてきました。霜の降りる冬は、前述の九条ねぎも葉が厚みを増して甘くなり、鴨なんばや湯豆腐の薬味として最高の時季を迎えます。

旬を味わう拠点「錦市場」

旬の京の味を一度に見て回るなら、錦市場(にしきいちば)へ。寺町通から高倉通まで約390メートルにわたって店が連なる商店街で、「京の台所」と呼ばれ、約400年の歴史を持ちます。良質な地下水に恵まれた立地が、生鮮食品を扱う市場としての発展を支えてきました。九条ねぎや賀茂なすといった京野菜、すぐきや千枚漬などの漬物、湯葉や生麩、京の佃煮まで、その季節の食材がところ狭しと並びます。食べ歩きの串ものや一口サイズの惣菜も多く、季節ごとに顔ぶれが変わる店先を眺めるだけでも、京都の旬が体感できます。混雑する時間帯を避け、午前中の早い時間に訪れると、ゆっくり旬の品定めができておすすめです。

旅のヒント

京野菜は、町なかの京料理店やおばんざいの店で日替わりの一品として供されることが多く、メニューの「本日の炊き合わせ」「旬の盛り合わせ」を頼むと、その日いちばんの旬に出会えます。鱧は夏、ぐじは冬と、魚は季節がはっきりしているので、訪れる時期に合わせて狙う一皿を決めておくと満足度が上がります。畑の野菜は同じ「京野菜」でも産地が乙訓・上賀茂・伏見・丹波と分かれ、それぞれに物語があります。何を食べるかと同じくらい、それがどこで育ち、どんな道を通って都に届いたかに思いを馳せると、京都の一皿はいっそう味わい深くなるはずです。

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Written by

木村 さくら

アウトドアライター

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