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熊本のミュージアム散歩|熊本県立美術館と熊本県のアート
観光・体験
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熊本のミュージアム散歩|熊本県立美術館と熊本県のアート

熊本県立美術館へようこそ──城下町に息づく芸術の拠点

熊本城の二の丸公園に隣接する熊本県美術館は、1976年の開館以来、九州を代表するアート拠点として市民と観光客に親しまれてきました。緑豊かな公園の中に建つ本館は、建築家・前川國男が設計した近代建築の傑作でもあり、建物そのものを鑑賞する楽しみもあります。外壁に使われたブリックタイルと水平ラインが印象的なファサードは、重厚な熊本城と見事な調和を見せています。

館内のコレクションは国内外にわたります。細川家伝来の大名道具や絵画をはじめ、ルーベンスやレンブラントといった西洋絵画の名品、さらには縄文・弥生期から続く熊本の考古資料まで幅広く収蔵されています。常設展の観覧料は一般260円と手頃で、企画展と合わせてもワンコインで楽しめる日が多い点が嬉しいところです。年間を通じて多彩な企画展が開催され、国内外の現代アーティストの作品や地域ゆかりの歴史資料を特集した展覧会が定期的に組まれています。

アクセスは熊本市電「熊本城・市役所前」停留所から徒歩約5分。開館時間は通常9時30分〜17時15分(最終入館17時)で、月曜休館が基本ですが、祝日の場合は翌平日が休館となるため事前確認をおすすめします。

市街地で現代アートに触れる──熊本市現代美術館

熊本の中心部、下通アーケードに直結した複合施設「びぷれす熊日会館」の2・3階に位置する熊本市現代美術館(CAMK)は、2002年に開館した個性豊かな施設です。ショッピングの合間に気軽に立ち寄れるという立地の妙が、地域に根差したアート文化の浸透に大きく貢献しています。

最大の特徴はアートを「体験」することへのこだわりです。ホームギャラリーと呼ばれる常設スペースには、草間彌生の巨大彫刻「魂の灯」やオノ・ヨーコのインスタレーション作品など、名だたる現代アーティストの作品が無料で鑑賞できます。特別展示室では国内外の最前線で活躍するアーティストの企画展が年間数回開催され、入館料は展覧会によって異なりますが多くは1,000円前後です。

子ども向けのワークショップやアーティストとの対話イベントも充実しており、家族連れから大学生、アート愛好家まで幅広い層が集います。ミュージアムショップではアーティストとコラボしたオリジナルグッズも販売されており、お土産にも最適です。

肥後の工芸美──伝統と匠の技が生む美の世界

熊本のアートを語るとき、長い歴史を持つ工芸品を忘れることはできません。江戸時代から受け継がれる「肥後象嵌(ひごぞうがん)」は、鉄地に金・銀・真鍮などを打ち込んで繊細な文様を表現する技法です。もともとは刀の鍔や馬具の装飾として発展した武家文化の産物で、現在は日本工芸会の重要無形文化財にも指定されています。熊本市中央区の職人工房では実演見学や体験教室が開かれており、半日体験コース(5,000円〜8,000円)で自分だけの小物を制作することができます。

天草地方で生産される「天草陶磁器」も熊本が誇る工芸の一角を担います。天草陶石は均質な白さが特徴で、有田焼など九州各地の磁器生産の原料としても使われてきました。天草市の陶芸の里・丸尾焼や南蛮文化の影響を受けた高浜焼など、個性の異なる窯元が集まっており、直売所では普段使いの器から芸術的な大皿まで幅広く購入できます。

熊本市内では「熊本伝統工芸館」も見逃せません。肥後象嵌・天草陶磁器・肥後細川刃物をはじめ、熊本県内の伝統工芸品を一堂に集めた展示販売施設で、職人による製作実演を間近で見学できます。入館無料で気軽に立ち寄れるうえ、ミュージアムショップでは質の高い工芸品を適正価格で購入できます。

古代ロマンに触れる──装飾古墳と考古アート

熊本はアート体験の場として、現代の美術館だけでなく古代の遺跡も見逃せません。国の特別史跡に指定された「チブサン古墳」をはじめとする熊本の装飾古墳群は、6〜7世紀ごろに造られた古代人の造形芸術として高く評価されています。石室の壁面に施された幾何学文様や三角文、円文などの装飾は、当時の人々の世界観や美意識を今に伝える貴重な文化遺産です。

山鹿市にある「さんふれあ」(国指定重要文化財・チブサン古墳資料館)では、実物大の複製展示とともに詳しい解説パネルが整備されており、考古学の知識がなくても理解しやすい工夫がされています。熊本県美術館の常設展示にも出土品が展示されており、両施設を組み合わせて訪れると古代熊本のアートへの理解が一層深まります。

アートと食を楽しむ──ミュージアム周辺のグルメ散歩

美術館めぐりの合間には、熊本ならではのグルメも積極的に楽しみたいものです。熊本県立美術館から徒歩圏内には、馬刺しや辛子蓮根といった郷土料理を提供する老舗が点在しています。熊本城周辺の飲食店では昼のランチセット(900円〜1,500円)でデザートまで楽しめる店も多く、観光の合間に立ち寄りやすい価格帯が揃っています。

熊本市現代美術館が入る下通エリアは、飲食店の密度が高い熊本随一のグルメゾーンでもあります。熊本ラーメンの名店「こむらさき」や太平燕(タイピーエン)発祥とされる中国料理店も徒歩圏内にあり、アート鑑賞後の食事に困ることはありません。地元の人々も日常的に利用するエリアだからこそ、観光地価格ではなくリーズナブルに本物の熊本グルメが味わえます。

熊本アートめぐりのモデルコース

初めて熊本のミュージアムを訪れる方には、1日で主要スポットをめぐる次のコースがおすすめです。午前中は熊本県美術館(本館)でコレクション展を鑑賞し、二の丸公園を散策しながら熊本城を望む景色を楽しみます。昼食は城周辺の飲食店で郷土料理を堪能したあと、午後は市電で下通へ移動して熊本市現代美術館へ。夕方には伝統工芸館に立ち寄り、肥後象嵌の実演を見学してからお土産を選ぶと、一日で熊本のアートの奥深さをたっぷりと体感できます。

熊本は、歴史的建造物・現代アート・伝統工芸・古代遺跡と、アートの形がきわめて多様な都市です。一度の訪問で全てを網羅するのは難しいほど豊かな文化資源が集積しており、リピーターにも毎回新しい発見をもたらしてくれる、まさにアート旅の理想的な目的地といえるでしょう。

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Written by

吉田 麻衣

フォトグラファー

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