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函館の食の豊かな暮らし|北海道の食文化で毎日を彩る
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函館の食の豊かな暮らし|北海道の食文化で毎日を彩る

函館に移り住んで最初に驚くのは、食卓の充実ぶりだという声をよく聞きます。「食べることが好きだから移住した」というほどではなくても、毎日の買い物や外食を通じて、いつの間にか食への意識が変わっていく。そんな体験が、この街には用意されています。

函館朝市と海鮮文化——地元民の日常にある贅沢

函館朝市は観光スポットとして全国に知られていますが、地元民にとっては日常の買い物の場でもあります。早朝6時から開く鮮魚店には、前日の夜に水揚げされたイカやホタテ、タラが並び、競りに近い価格で手に入ります。観光シーズンを外した平日の朝はさらにゆったりと買い物ができ、顔なじみになった店主から「今日はこれが旨い」と一声かけてもらえるようになると、朝市通いが習慣になります。

イカ料理の奥深さも、住んでこそ分かるものです。函館のスルメイカは夏から秋にかけてが旬で、透き通るほど新鮮なうちに食べるイカ刺しは、東京のスーパーで買うものとは別物です。いかそうめんを自宅で作る家庭も多く、細く切って大根おろしと醤油で食べるシンプルな味が、函館暮らしの原点のひとつになっていきます。

直売所と地元野菜——旬を安く、たっぷりと

函館市内およびその周辺には、農産物直売所が点在しています。春はアスパラガスとふきのとう、夏はとうもろこしとトマト、秋はじゃがいもとかぼちゃ——北海道の短い夏が凝縮されたように、旬が矢継ぎ早にやってきます。朝採れのとうもろこしが1本100円前後で手に入る光景は、都市部からの移住者には衝撃的に映るようです。

メロンも北海道ならではの贅沢です。函館近郊の農家が作るメロンは糖度が高く、ひと玉500〜800円で手に入ることもあります。ギフト用のものとは違い、見た目は不ぞろいでも味は抜群——そういった「訳あり品」が直売所に並ぶのも、この地ならではです。秋鮭1尾が500円前後、ホタテ1kgが1,000円を切る価格で流通することもあり、まとめて買って塩引きや干物にする暮らしが自然と身についていきます。

外食の楽しみ——地元の名店を日常使いする

函館の飲食店は、観光客向けと地元民向けに二層構造があります。観光ガイドに載る店も充実していますが、住んでから見つかる「地元の名店」こそが日常の喜びです。駅前から少し離れた路地に構える海鮮居酒屋では、刺身盛り合わせが1,000〜1,500円で出てきます。ネタの大きさと鮮度に、最初は値付けが間違っていないかと確認したくなるほどです。

ラーメンも函館独自の文化があります。あっさりとした塩ベースの「函館ラーメン」は、塩分控えめで毎日でも食べられるという声も多く、地元のラーメン店は昼時に行列ができます。「あじさい 本店」をはじめとした老舗は、地元民が家族の誕生日や記念日に訪れる存在です。

ご当地グルメとして知られる「ラッキーピエロ」は、函館市内に複数店舗を展開するローカルバーガーチェーンです。観光客にも人気ですが、地元民にとっては小さい頃から通う場所であり、チャイニーズチキンバーガーをほおばりながら過ごす昼休みは、函館ならではの日常風景のひとつです。

家庭菜園と手作りの愉しみ

函館は北海道の中でも比較的温暖で、5月から9月にかけては家庭菜園が楽しめます。市民農園は年間5,000〜10,000円ほどで1区画を借りられ、ミニトマト、きゅうり、ズッキーニといった育てやすい野菜から始める移住者が多いです。土を触り、自分で育てたものを食べる経験は、食への向き合い方そのものを変えます。

秋の収穫を使った手仕事も、函館暮らしの醍醐味です。余ったトマトでトマトソースを作り瓶詰めにする、塩鮭を自宅で仕込む、白菜の漬物を近所のおばあちゃんに教わりながら初めて漬けてみる——都市部では省略されがちなこうした営みが、ここでは自然な生活の一部として続いています。

おすそ分け文化と食のコミュニティ

函館には、食を媒介とした近所付き合いが今も残っています。畑で採れすぎたズッキーニを袋に入れてドアノブにかけておく、自家製の梅干しや漬物を持ち寄って味を見せ合う——こうした何気ないやりとりが、移住者が地域に溶け込むきっかけになることも少なくありません。

春から秋にかけては、庭でのジンギスカンパーティー(通称「ジンパ」)が定番の集いになります。近所の顔なじみが集まり、七輪を囲みながら地元の野菜と肉を焼く。こういった場に一度招かれると、函館の食文化と人のつながりが一体であることを実感します。

食べることは、ただ栄養を摂ることではありません。誰と、何を食べるかが、暮らしの質を決めます。函館には、その両方を豊かにする素地が整っています。移住後に「食が変わった」と語る人が多いのは、単に素材がいいからではなく、食を取り巻くすべての環境——産地、店、人、季節——が揃っているからではないでしょうか。

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Written by

渡辺 リカ

ワークスタイルエディター

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