観光・体験
高知市の花の名所と見頃カレンダー|牧野富太郎の故郷で巡る四季の花
牧野富太郎の故郷で、桜は三月下旬に咲く
高知市の花めぐりを考えるとき、まず頭に入れておきたいのが「桜が早い」ことです。太平洋に面した黒潮の影響で冬でも比較的暖かく、ソメイヨシノの開花は例年三月下旬、見頃は三月下旬から四月上旬にかけて。東日本の感覚で「四月に入ってから」と構えていると、満開を逃しかねません。
もう一つの軸が、高知市が「日本の植物分類学の父」牧野富太郎博士の活躍した土地だということです。市の南東に浮かぶ五台山には博士の業績を伝える県立牧野植物園があり、博士が新種として発表・命名した植物が、市内の桜の名所にもさりげなく根を張っています。単に「春に桜、梅雨にあじさい」を追うのではなく、この土地ならではの植物と人の物語をたどると、高知市の花の見え方が変わってきます。
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高知城(高知公園)の桜 ― 五種・約180本の城内花見
高知市の桜といえば、まず中心部にそびえる高知城です。天守と追手門が現存する全国でも貴重な城で、その城郭一帯が国の史跡「高知公園」として整備され、市民の花見の中心になっています。
園内の桜はソメイヨシノだけではありません。ヤマザクラ、オオシマザクラ、センダイヤザクラ、ボタンザクラ、ソメイヨシノの五種、合わせて約180本が植えられています。なかでも見逃せないのがセンダイヤ(仙台屋)。これは高知市内にあった「仙台屋」という店先の桜を牧野富太郎が見出し、新品種として世に紹介したと伝わる、まさに土佐ゆかりの桜です。ソメイヨシノよりやや濃い紅色の花をつけ、城内で並んで咲く姿は高知ならではの眺めです。
見頃は早咲きのウスズミザクラが三月中旬から下旬、主役のソメイヨシノが三月下旬から四月上旬。期間中は園内にぼんぼりが灯され、天守を背に夜桜を楽しめます。中心市街地にあるため、はりまや橋やJR高知駅から徒歩や路面電車で気軽に向かえるのも、観光のついでに立ち寄りやすい点です。
県立牧野植物園(五台山)― 一年中、花の絶えない丘
四季を通じて花を楽しむなら、五台山の県立牧野植物園が高知市随一です。約8ヘクタールの園内に博士ゆかりの山野草を含む三千種類以上が育てられ、ほぼどの月に訪れても何かしらの見頃に出会えます。月ごとのおおまかな見どころは次の通りです。
| 時期 | 見頃を迎える主な植物 |
|---|---|
| 1月 | バイカオウレン、ソシンロウバイ、カンヒザクラ |
| 2月 | ウメ、シコクフクジュソウ、セツブンソウ |
| 3月 | サクラ('仙台屋'など)、トサミズキ、ジンチョウゲ |
| 4月 | オンツツジ、フジツツジ、キエビネ |
| 5月 | ヤマボウシ、ヒメアジサイ |
| 6月 | ヤマアジサイ、オウゴンオニユリ、ヒツジグサ |
| 7月 | タキユリ、ムカデラン |
| 8月 | オオオニバス、ナツエビネ、サガリバナ |
| 11月 | ノジギク、ツワブキ、紅葉 |
見頃は年によって前後しますが、特徴的なのは厳冬期にも花があること。一月には牧野博士が愛し、園のシンボルマークにもなっているバイカオウレンが咲きます。雪のように白い小さな五弁の花が林床に点々と灯る様子は、早春の高知ならではの光景です(群落の規模は年や場所で差があり、見頃のピーク時期は事前確認をおすすめします)。
春は三月の桜と四月のオンツツジ・フジツツジ、初夏はヤマアジサイ。そして夏にはオオオニバスの大きな円い葉が水面を覆い、高知の山地に自生するユリの仲間タキユリが朱色の花を咲かせます。蓮そのものの大群落は市外(土佐市の蓮池公園など)に譲りますが、博士ゆかりの水生植物や土佐の野生ユリで夏を彩るのが、この植物園らしさです。秋には四国の野山を思わせるノジギクや紅葉が園を染めます。
五台山公園のツツジと展望
牧野植物園や四国霊場・竹林寺が建つ五台山そのものも、花の名所です。山上の五台山公園は春のツツジで知られ、桜やモミジ、ツバキと合わせて一年を通じて季節の植物が楽しめます。山頂の展望台からは高知市街と浦戸湾を一望でき、花と眺望を一度に味わえるのが魅力。桜やツツジの時季に植物園とセットで巡れば、五台山という一つの丘で高知市の四季の大半を体感できます。
春野町の「あじさい神社」と、あじさい街道
梅雨どきの主役は、高知市春野町(2008年に高知市と合併した地域)のあじさいです。なかでも六條八幡宮は、応永九年(1402年)創建の春野町西分の総氏神。平成十二年ごろから氏子の「あじさい愛好会」が植え続けてきたあじさいが境内と参道を彩り、いまでは「あじさい神社」の愛称で親しまれています。多種多様な品種およそ1,500株が咲き、見頃は例年五月下旬から六月中旬。六月の第一日曜には地元主催の「はるのあじさいまつり」が開かれ、苗の販売やお茶のお接待でにぎわいます。
さらに足を延ばしたいのが、神社の北西、県道36号沿いに続く「あじさい街道」です。約五キロの沿道におよそ一万株が植えられ、田園風景のなかをあじさいの帯が走ります。神社の静けさと街道のスケール感、両方を味わえるのが春野のあじさいの厚みです。
高知市の花めぐり 実用メモ
- 桜は三月下旬が本番。温暖ゆえ全国平均より早く咲くため、遠方から狙うなら三月後半の週末を目安に。高知城のライトアップ期間も合わせて確認を。
- 通年なら五台山へ。牧野植物園と五台山公園、竹林寺がひと続きの丘にあり、市街地から路線バスやタクシーでアクセスできます。一月のバイカオウレン、夏のオオオニバスなど、季節を変えて再訪する価値があります。
- 梅雨は春野町。市中心部から少し離れますが、六條八幡宮とあじさい街道を組み合わせると半日の花散歩になります。
- 見頃は天候により毎年前後します。特にバイカオウレンや桜は数日で表情が変わるため、各施設の開花情報で直前に確かめてから出かけるのが確実です。
中心部の城で土佐ゆかりの桜を仰ぎ、五台山で牧野博士の植物世界に分け入り、梅雨には春野のあじさいに包まれる。高知市の花の名所は、温暖な気候と一人の植物学者の物語が結びついた、ほかの街にはない巡り方ができます。
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