
都電荒川線沿線散歩
GALLERY
東京の喧騒の中に、ひとすじの懐かしい風景が残っている。三ノ輪橋から早稲田まで、約12キロメートルを走る都電荒川線——通称「東京さくらトラム」は、高度経済成長期にほぼ姿を消した路面電車が、今なおゆっくりと街の中を走り続ける奇跡の路線だ。
東京に残った「最後の路面電車」
かつて東京には40系統以上の路面電車が縦横無尽に走り、市民の足として親しまれていた。しかし1960年代以降、モータリゼーションの波と道路渋滞の深刻化を受け、都電は次々と廃止されていった。1972年、多くの系統が姿を消す中で唯一残ったのが、この荒川線である。
廃止を免れた理由のひとつは、この路線が通る地域の特性にある。荒川・王子・飛鳥山・大塚・雑司が谷・早稲田といったエリアは、高低差のある地形や細い路地が続く下町的な街並みが多く、地下鉄の敷設が困難だった。そのため都電が地域交通の要として残り続けた。現在は「東京さくらトラム」という愛称も持ち、車体も定期的にリニューアルされながら、1日約5万人の乗客を運ぶ現役の交通機関として活躍している。
沿線の見どころを途中下車で巡る
全30停留場を全線乗り通せば約50分の旅だが、都電散歩の醍醐味は途中下車にある。一日乗車券(400円)を購入すれば、何度でも乗り降り自由。好奇心の赴くままに街を歩けるのが、この路線の最大の楽しさだ。
三ノ輪橋はレトロな雰囲気の出発点。停留場周辺には昭和の面影を残すジョイフル三ノ輪商店街が延びており、昔ながらの食堂や雑貨店が軒を連ねる。旅の始まりとして、ここで一息ついていくのもいい。
飛鳥山停留場を降りると、東京最古の公園のひとつに数えられる飛鳥山公園がある。江戸時代、八代将軍・徳川吉宗が民衆のために整備した花見の名所で、春には桜が咲き乱れる。公園内には渋沢栄一ゆかりの「渋沢史料館」もあり、歴史好きには見逃せないスポットだ。
巣鴨地蔵通りで下車すれば、「おばあちゃんの原宿」として名高い商店街へ。赤パンツで有名な衣料品店や塩大福の老舗など、独特の活気があふれる。庚申塚停留場からも近く、江戸時代から続く信仰の地・高岩寺(とげぬき地蔵)は今も多くの参拝客が訪れる。
雑司が谷鬼子母神前では、都内有数のパワースポットとして知られる鬼子母神堂へ。境内には樹齢600年を超えるイチョウの大木がそびえ、静寂の中に深い歴史を感じる。周辺の雑司が谷霊園も文豪・夏目漱石や小泉八雲の墓があることで知られ、文学ファンにはたまらないエリアだ。
終点の早稲田付近には、早稲田大学や水稲荷神社など、文化・歴史的スポットが点在する。
春と秋はバラが咲く「花の路面電車」
都電荒川線を語るうえで欠かせないのが、沿線を彩るバラの存在だ。荒川区内の線路沿い、特に荒川車庫前から荒川遊園地前にかけての区間では、約140種・13,000株ものバラが植えられており、5月と10月の開花期には車窓が鮮やかなピンクや赤で染まる。
このバラ植栽プロジェクトは、地域の人々と行政が協力して長年にわたって育ててきたもの。愛好家たちによる丁寧な手入れがあってこその景観だ。開花の時期には「あらかわバラの市」などのイベントも催され、沿線は例年多くの花見客でにぎわう。路面電車とバラの組み合わせは、SNS映えスポットとしても人気が高く、カメラを片手に訪れるフォトグラファーも多い。
春(4月下旬〜5月)はバラのほかに、飛鳥山の桜も見頃を迎える。秋(10月〜11月)は二度目のバラの季節と紅葉が重なり、沿線の景色がとりわけ豊かになる。どちらのシーズンも、朝の光の中を走る都電の姿は格別だ。
下町の日常と「ちんちん電車」のリズム
観光客だけでなく、沿線住民の生活に深く根付いているのも都電荒川線の特徴だ。学校帰りの中学生、買い物帰りのお年寄り、ベビーカーを押す若い親。乗り合わせる人々の日常が、この路線の空気をつくっている。
車内はワンマン運転で、整理券を取って乗車し、降車時に料金を支払う方式(一部停留場は前払い)。運賃は全線均一170円(ICカード利用時)と手頃で、地域住民の足として気軽に使えるのも嬉しい。レトロなデザインの車両から近代的なリニューアル車まで、さまざまなタイプの電車が運行されており、どの車両に乗り合わせるかも旅の楽しみのひとつとなっている。
ゆっくりと街の中を走り、停留場に停まるたびに人々が乗り降りする。その穏やかなリズムに身を委ねながら流れる車窓の景色は、東京のもうひとつの顔を見せてくれる。
アクセスと散策のヒント
都電荒川線の始発・三ノ輪橋停留場へは、東京メトロ日比谷線「三ノ輪駅」から徒歩約5分。もう一方の終点・早稲田停留場は東京メトロ東西線「早稲田駅」から徒歩約5分。どちらからでもアクセスしやすい。
散策をより楽しむためのポイントをいくつか挙げておこう。まず、一日乗車券(400円、車内または一部停留場で購入)の活用は必須。好きな停留場で何度でも乗り降りできるため、気になった場所に立ち寄る自由度が格段に上がる。
混雑を避けるなら、平日の午前中がおすすめ。観光シーズンの週末は乗客が多く、ゆったりとした雰囲気を楽しみたいなら少し時間をずらすと快適だ。また、沿線には地元の個人経営の喫茶店や食堂が多く残っており、観光地化されすぎていないのが魅力。昼食は途中下車した街の食堂でローカルな味を楽しむのが、下町散歩の通なスタイルだ。
全線乗り通すだけでも十分に楽しいが、2〜3か所で途中下車すれば半日〜1日かけてゆっくり巡ることができる。東京の歴史と暮らしを肌で感じたいなら、都電荒川線の旅は特別な体験を与えてくれるはずだ。
アクセス
都電荒川線 三ノ輪橋停留場
営業時間
6:00〜23:00
予算内訳
大人
¥170
施設の特徴
外部予約・検索サイトで探す
下記の外部サイトで本店舗・施設の予約・在庫状況をご確認いただけます。
※ 外部サイトへのリンクには広告 (アフィリエイト) を含みます。
RELATED SPOTS
関連するスポット(8件)
東京都小笠原村
小笠原諸島・父島の海
東京から南へ1,000km。世界自然遺産の島で出会うボニンブルーの絶景
東京都台東区浅草
浅草寺
東京最古の寺院。雷門の大提灯と仲見世通りの賑わいは、日本を代表する観光スポットのひとつ。
東京都港区六本木
六本木ヒルズ展望台
海抜250mの屋内展望台と屋上スカイデッキから東京の大パノラマを一望できる絶景スポット。
東京都港区品川
マクセル アクアパーク品川
音と光の演出が美しい都市型水族館。幻想的なイルカショーは季節ごとにテーマが変わる必見のパフォーマンス。
東京都江東区深川
深川不動堂
成田山新勝寺の東京別院。毎日行われる迫力の護摩祈祷と門前仲町の下町情緒が魅力。
東京都豊島区池袋
サンシャイン水族館
池袋サンシャインシティ屋上の空飛ぶ水族館。ビルの上空をペンギンが泳ぐ「天空のペンギン」が人気。


