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町田市立国際版画美術館

町田市立国際版画美術館

Photo: 運転太郎 / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons
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版画という芸術の奥深さに、静かな公園の緑が寄り添う場所がある。東京・町田市の芹ヶ谷公園に隣接する町田市立国際版画美術館は、1987年の開館以来、版画専門の公立美術館として国内外のコレクターや研究者、そして版画を初めて知る来場者たちを温かく迎えてきた。

版画専門美術館として歩んできた歴史

1987年に開館した町田市立国際版画美術館は、版画という一ジャンルに特化した国内でも数少ない公立の専門美術館として知られている。木版・銅版・リトグラフ・シルクスクリーンなど、版画はじつに多様な技法を擁する芸術分野だ。その歴史は15世紀ヨーロッパの宗教的な図像彫刻にまでさかのぼり、日本では江戸時代の浮世絵として独自の花開き方をした。そこから近現代のアート表現まで、版画の流れは時代と地域を横断しながら続いている。

この美術館はそのような版画史の全体像を体系的に収集・研究し、市民にわかりやすく伝えることを開館当初から使命としてきた。展示や教育普及活動を通じて版画文化の振興に取り組む姿勢は今も変わらず、「版美(はんび)」の愛称で地域に親しまれながら、文化拠点としての役割を着実に果たし続けている。

時代と国境を超えたコレクション

美術館の収蔵品が示す版画の幅広さは、訪れる人を驚かせる。15世紀ヨーロッパのエングレーヴィングから始まり、ルネサンス期のイタリア版画、バロックの巨匠による作品、そして近現代日本の版画へと連なるコレクションは、版画という表現が時代ごとにどのような役割を担い、どのように変容してきたかを示してくれる。

「ゼバルト・ベーハム《二人の道化》」(1541年頃、エングレーヴィング)のような16世紀の作品が常設の文脈の中に位置づけられていることからも、美術館のコレクションの充実ぶりがうかがえる。企画展では「おかしみとかなしみ:道化の世界」(2026年3月〜6月)のように版画史の特定のテーマを深掘りするものや、「プレイバック!ミレニアム1991→2001:版画が/版画で越えた境界」(2026年6〜8月)のように20世紀末の版画表現を問い直す意欲的な試みまで、年間を通じて多彩な展覧会が組まれている。

また、学芸員による「講演会×鑑賞会 ココがすごい!版美のコレクション」シリーズは、コレクションの魅力を専門家の視点で語り直す人気プログラム。浮世絵の虚構性、デューラーとホルツィウスの刻線技法、ナポレオン時代のエジプト誌など、各回のテーマは多岐にわたり、知識ゼロでも楽しめる語り口が好評だ。

自分の手で版画を体験できる工房

鑑賞にとどまらず、実際に手を動かして版画を体験できることもこの美術館ならではの魅力だ。館内には版画工房・アトリエが設けられており、スクリーンプリントの一般開放日には事前申込みのうえ自由に制作を楽しむことができる。また、リトグラフ一日教室や木版画の創作講座など、技法ごとに体系立てられた実技プログラムが年間を通じて開催されており、初心者から経験者まで幅広い層が参加している。

子どもを対象にした「みてみてつくろう」講座や夏期子ども講座も毎年人気を集めており、親子で版画制作の楽しさを発見できる機会として定着している。版画の制作過程には、絵を描くこととも彫刻とも異なる独特の面白さがある。この美術館に来れば、その面白さを「体感」するところから始められる。

季節を彩るイベントと年間の楽しみ方

美術館では展覧会・講座のほかにも、季節感あふれるさまざまなイベントが開かれている。春から初夏にかけてはプロムナードコンサートが開催され、緑の多い環境の中で音楽と版画を同時に楽しめる。秋には「ゆうゆう版画美術館まつり」が毎年10月に開催(第27回は2025年10月18・19日)され、地域のファミリー層にも広く親しまれている。冬にはエントランスでのピアノコンサートや友の会主催の「森のコンサート」なども催され、年間を通じてさまざまな切り口で版画と文化に触れるチャンスが設けられている。

館長が執筆する「芹ヶ谷だより(館長かわら版)」は定期更新されており、美術館の日常や展示の裏側を伝える読み物として愛読者も多い。足を運ぶ前にウェブサイトでこのコラムを読んでおくと、訪問がより豊かなものになるだろう。

アクセスと周辺の過ごし方

町田市立国際版画美術館は、小田急線・JR横浜線「町田駅」からアクセスできる芹ヶ谷公園の敷地内に位置している。開館時間は平日が午前10時から午後5時、土・日・祝日は午後5時30分まで。年間スケジュールは公式ウェブサイトで公開されており、展示替えによる休室日なども事前に確認できる。

美術館内には「喫茶けやき」があり、観覧の前後にひと息つくことができる。ミュージアムショップでは版画関連の書籍やグッズも揃い、展覧会の記念品を探すのも楽しい。市民展示室では地域の展覧会も開催されており、より身近なコミュニティと美術をつなぐ空間としても機能している。芹ヶ谷公園は四季折々の自然が美しい公園で、美術館と合わせて散策を楽しむ来場者も多い。版画の世界と豊かな緑環境を同時に味わえる、町田が誇る文化スポットだ。

アクセス

町田駅から徒歩圏内

営業時間

平日:10:00~17:00、土日祝:10:00~17:30

料金目安

1,000円~2,500円

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