甲府駅から徒歩13分、山梨県甲府市朝日に佇む「喜久乃湯温泉」は、昭和元年(1926年)創業の老舗銭湯だ。文豪・太宰治も新婚時代に足を運んだという歴史ある名湯として、地元の人々に長く愛されてきた。懐かしい昭和の空気を纏いながら、源泉の湯が今日も旅人や地域住民を温かく迎えている。
昭和元年から続く、甲府の老舗銭湯
喜久乃湯温泉は、今から約100年前の昭和元年に創業した。甲府盆地のほぼ中心に位置する甲府市朝日の地で、地元の人々と共に時代を歩み続け、幾多の変遷を経た今も変わらぬ佇まいを保っている。
脱衣所には昭和40年代の看板が一面に並び、いまや博物館でしか見られないような広告や商品のポスターが当時の日常をそのまま切り取ったかのように残っている。木製のロッカーや籐製の脱衣かご、年季の入った下駄箱など、昭和の銭湯文化を丸ごと体感できる空間が今なお守られているのが、喜久乃湯温泉の最大の特徴だ。
2025年には「甲府遺産」として認定され、地域の文化的な財産としての価値も公式に認められた。単なる入浴施設にとどまらず、甲府という街の歴史を肌で感じられる場所として、地元内外から注目を集めている。
文豪・太宰治が愛した名湯
喜久乃湯温泉を語る上で欠かせないのが、文豪・太宰治とのつながりだ。太宰は新婚時代に甲府に住んでおり、その頃にこの銭湯を愛用していたという逸話が伝わっている。昭和を代表する作家が日常的に身を浸した湯が、今も変わらぬ形で引き継がれていると思うと、一風呂浴びるだけで何か特別なものを感じられそうだ。
太宰の作品に親しんでいる文学ファンにとっては、まさに「聖地」と呼べる場所でもある。観光で甲府を訪れた際に、ガイドブックには載らないような文化的な体験として立ち寄る価値は十分にある。地元の古老たちが語り継ぐ「太宰さんが来ていた風呂」という話を胸に、昭和の空気の中に身を置いてみてほしい。
源泉の湯と充実した浴場設備
喜久乃湯温泉の湯は、全て源泉を使用している(一部加温・循環)。大都市の銭湯では珍しくなった本物の温泉水を、比較的リーズナブルな料金で楽しめるのは大きな魅力だ。開放感のある広々とした浴場で、たっぷりの源泉の湯にゆったりと浸かれば、日々の疲れが解きほぐされていく感覚を味わえる。
浴場には通常の浴槽のほか、ジェットバス・超音波風呂・水風呂も用意されており、健康増進を目的とした入浴を楽しめる。サウナも設置されているため、しっかりと汗を流したい人にも対応している。水風呂との交互浴でコンディションを整えるのを日課にしている常連客の姿も多い。
料金は大人470円・中人170円・小人70円と、現代の銭湯としても手頃な設定。本物の源泉に浸かりながらサウナまで楽しめる施設として、この価格帯は十分に魅力的だ。
湯上がりをのんびり過ごす、2階の大広間
喜久乃湯温泉のもう一つの見逃せない魅力が、2階に用意された48帖の大広間(休憩室)だ。入浴料込みで1,000円で利用できるこのスペースは、湯上がりにのんびりと過ごすのに最適な空間となっている。広々とした畳の間で横になったり、仲間と語らったりしながら、銭湯特有の開放的なひとときを楽しめる。
昔ながらの銭湯では、湯上がりに休憩室でひと休みするのが当たり前の文化だった。現代ではそのような空間を持つ銭湯が少なくなってきた中、喜久乃湯温泉はこの文化をしっかりと守り続けている。友人や家族のグループで訪れ、2階の大広間を利用しながらゆっくりと過ごすプランも、ぜひ検討してみてほしい。
登山・ハイキング帰りの立ち寄りにも最適
山梨県は南アルプスや富士山など、日本を代表する山々に囲まれた県だ。甲府はそれらの登山やハイキングの拠点としても利用されることが多く、甲府駅は多くの登山者が行き来する。喜久乃湯温泉は、そんな登山・ハイキング帰りの立ち寄りスポットとしても人気が高い。
汗をかいた体を源泉の湯で洗い流し、サウナや水風呂も活用しながらコンディションを整えれば、帰りの電車も快適に過ごせる。甲府駅から徒歩13分という距離は、荷物を持った登山帰りには少し感じるかもしれないが、それだけの価値は十分にある。地元の常連さんたちに混じって昭和の銭湯文化を体験しながらリフレッシュする体験は、旅の大切な思い出にもなるだろう。
名物女将と地域に根付いた温かさ
喜久乃湯温泉には、もう一つ忘れてはならない名物がある。「元気で美人(らしい)」と評判の女将だ。地元客から長年親しまれるその存在感は、単なる入浴施設を超えた「地域のコミュニティの場」としての喜久乃湯温泉を象徴している。初めて訪れた人も、気さくな対応でリラックスして楽しめると評判だ。
420件以上のクチコミで評価3.8を獲得しているのも、湯の質や施設の魅力と、こうした人のあたたかさが合わさった結果といえる。昭和元年から続く老舗銭湯が今なお地域に愛される理由は、良質な源泉や昭和レトロな空間だけでなく、こうした「人」の力にも大きく支えられているのかもしれない。
甲府を訪れた際には、観光地巡りだけでなく、ぜひ喜久乃湯温泉に足を向けてみてほしい。100年の歴史が染み込んだ湯と昭和の空間が、旅の疲れを癒し、特別な記憶を刻んでくれるはずだ。
Access
甲府駅から徒歩13分
Hours
Budget
入浴料 大人 470円、中人 170円、小人 70円。大広間利用 1,000円(入浴料込み)