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名古屋・愛知の旬の食材カレンダー|伊勢湾と三河湾、あいちの伝統野菜をめぐる一年
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名古屋・愛知の旬の食材カレンダー|伊勢湾と三河湾、あいちの伝統野菜をめぐる一年

名古屋の旬は「二つの湾」と「広い後背地」が作る

名古屋の食材を語るとき、まず押さえたいのは地形です。市の南には伊勢湾と三河湾という二つの内湾が広がり、ここで採れる貝や小魚が尾張の食卓を支えてきました。一方で、知多半島・渥美半島・西三河の平野には全国有数の農地が広がり、野菜や茶、うなぎ養殖の産地が連なります。海の幸と里の幸の両方が短い距離で手に入るのが、この街の旬の豊かさの正体です。

名古屋市内でその季節感を一番つかみやすいのが、名駅のすぐ東にある柳橋中央市場(やなぎばしちゅうおうしじょう)。100年以上の歴史を持つ民営の中央市場で、まぐろをはじめ全国の鮮魚や、近隣の三河湾・伊勢湾から届く地物が並びます。朝から開く市場内の食堂で旬の海鮮丼を味わうのも、名古屋らしい食の入り口です。ここでは、その柳橋に並ぶ顔ぶれを手がかりに、名古屋・愛知の旬を季節ごとにたどっていきます。

春(3〜5月)— 三河湾のアサリが主役

春の名古屋の食卓を象徴するのがアサリです。愛知県のアサリ漁獲量はかつて全国一を誇り、伊勢湾・三河湾の干潟がその舞台。豊川などの河川が運ぶ砂と栄養が良質な干潟をつくり、なかでも三河湾の六条潟は身入りのよいアサリで知られます。旬はおおむね4〜6月で、潮干狩りシーズンと重なります。市場や鮮魚店で殻つきのアサリを買い、酒蒸しや味噌汁、深川めし風の炊き込みにすると、春の磯の香りが立ちます。

同じころ、三河湾・伊勢湾では天然ハマグリも上がります。木曽三川の河口域は古くからの蛤の産地で、資源は一時激減したものの、近年は回復の取り組みが続いています。焼き蛤や潮汁で、貝そのものの旨みを味わうのが王道です。野菜では、東三河・豊橋や渥美のハウスで育つトマトが冬から春にかけて出回り、あいちの伝統野菜「ファーストトマト」も1〜3月に旬を迎えます。

初夏(5〜6月)— 川には鮎、海にはシラス

初夏は川魚の季節です。愛知の多くの河川で5月中旬ごろから鮎(あゆ)の友釣りが解禁され、木曽川では6月1日が解禁日。矢作川や豊川など県内の清流で、香魚と呼ばれる鮎が育ちます。塩焼きにすると、わたのほのかな苦みと身の香りが初夏の風物詩です。鮎は天然・放流ともに扱われるため、出どころは店や宿に尋ねると安心です。

海ではシラスが本格化します。愛知のシラスはカタクチイワシなどの稚魚で、旬は6〜8月。南知多町・碧南市・田原市が主産地で、とりわけ三河湾に浮かぶ篠島は加工が盛んな「シラスの島」として知られます。獲れたての釜揚げシラスや生シラスは、この時期ならではの味わい。市場や知多の直売所では、朝に水揚げされたものが並びます。

夏(7〜8月)— 一色うなぎと渥美の野菜

名古屋の夏といえばうなぎ。愛知は鹿児島と並ぶうなぎ養殖の一大産地で、西尾市一色町(いっしきちょう)は市町村別で国内屈指の生産量を誇ります。矢作川水系の豊かな水で育てられる一色うなぎは、例年6月ごろに新仔(しんこ)が初出荷され、土用の丑の日にかけて最盛期を迎えます。名古屋名物のひつまぶしも、こうした地元のうなぎ文化の延長線上にあるものです。

野菜では、渥美半島の畑が活気づきます。田原市は農業産出額が全国でも上位の大産地で、夏は露地メロンやスイートコーン、トマトなどが出盛り。あいちの伝統野菜では、あま市の「愛知本長なす」や清須・大口の「かりもり」が7〜8月に旬を迎えます。かりもりは粕漬けや浅漬けにして食べる愛知ならではの白瓜で、夏の食卓に欠かせません。海の幸では、三河湾・伊勢湾でとれる大アサリ(ウチムラサキ)が、知多半島の浜焼きで人気を集めます。

秋(9〜11月)— 祖父江のぎんなんと実りの里

秋を彩るのが、稲沢市祖父江町(そぶえちょう)のぎんなんです。江戸時代から続く産地で、1万本を超えるイチョウが点在し、ぎんなんの出荷量は全国でも群を抜きます。「久寿(きゅうじゅ)」「藤九郎(とうくろう)」といった大粒の品種が知られ、11〜12月にかけて旬。素焼きや茶碗蒸しにすると、もちっとした食感とほろ苦さが楽しめます。秋は祖父江一帯が黄金色に染まり、ぎんなんと黄葉を目当てに訪れる人も多い季節です。

里芋や根菜も実る時期で、新城市の伝統野菜「八名丸(やなまる)さといも」は9月から春先まで出回ります。海では、三河湾・伊勢湾のクロダイやスズキ、トリガイといった魚介が引き続き食卓に上がります。

冬(12〜2月)— ふぐ、大根人参、八丁味噌の鍋

冬の主役はふぐ。三河湾・伊勢湾は天然トラフグの好漁場で、なかでも南知多町、とりわけ日間賀島(ひまかじま)はふぐの島として知られます。島では旅館や民宿が、てっさ(刺身)やふぐ唐揚げ、てっちり鍋でもてなすのが冬の名物。旬はおおむね10月から翌3月までです。

野菜は根菜が甘みを増します。清須市の「宮重大根(みやしげだいこん)」や碧南市の「碧南五寸人参」、津島周辺の「越津(こしづ)ねぎ」など、あいちの伝統野菜が冬に旬を迎え、鍋物やおでんを支えます。そして名古屋の冬の鍋に欠かせないのが八丁味噌(はっちょうみそ)。岡崎城から西へ八丁(約870メートル)の八丁町で、大豆と塩だけを木桶で二年以上熟成させる伝統の豆味噌です。これで仕立てる味噌煮込みうどんや味噌鍋、どて煮は、寒い時期の名古屋の食卓そのもの。渥美半島では冬キャベツの出荷も本格化し、田原市は冬キャベツ出荷量でも全国トップクラスです。

旬を味わうためのメモ

名古屋市内で旬を手っ取り早く感じたいなら、まずは柳橋中央市場へ。鮮魚も乾物も総菜もそろい、朝食やランチに旬の海鮮を出す食堂も入っています。知多半島や渥美半島まで足を延ばせば、漁港や農産物直売所で水揚げ・収穫したての食材に出会えます。海の幸はその年の漁や資源状況で時期が前後し、鮎やうなぎは天然・養殖で扱いが変わるため、出どころや旬は店や宿に確かめながら選ぶのがおすすめです。二つの湾と広い後背地に恵まれた名古屋の一年は、月ごとに表情を変える旬の連続。カレンダーを片手に、季節の食材を追いかけてみてください。

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Written by

伊藤 健一

歴史ライター

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