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秋田市・旬の食材カレンダー|日本海と八郎潟、雪国が育む四季の味
海・山・湖、三方から旬が届く街
秋田市は日本海に面した港町でありながら、東に奥羽山脈を背負い、北には八郎潟を干拓してできた広大な大潟の田んぼが広がります。海の魚、山の山菜やきのこ、湖の小魚、そして米どころの新米——この三方向から旬が届くのが、秋田の食卓の最大の個性です。観光ガイドの「名物」を追うより、その月に何が旬を迎えているかを知っておくほうが、ずっと豊かな食の旅になります。ここでは月や季節の移ろいに沿って、秋田市とその周辺で味わえる本物の旬を整理します。
秋田の旬は、産地の帰属を知るとさらに面白く味わえます。じゅんさいは三種町、とんぶりは大館市、いぶりがっこは横手など内陸の農村が本場、と県内各地に「本家」があり、それらが秋田市に集まってくる構図です。本記事ではその出どころも明記しました。
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ハタハタとしょっつる — 厳冬の日本海から
秋田の冬を象徴する魚がハタハタです。日本海でとれ、漁の最盛期は11月後半から12月にかけてのごく短い期間。この時期のメスは「ブリコ」と呼ばれる粘り気の強い卵を抱えており、プチプチと弾ける食感が珍重されます。塩焼きや湯あげ、煮付けのほか、麹に漬け込んだ「ハタハタ寿司(飯寿司)」は正月の保存食として古くから親しまれてきました。
そのハタハタを塩漬けにして1年以上熟成させ、溶けた身からうまみを搾り取った魚醤がしょっつる(塩魚汁)です。これを出汁に、ハタハタや豆腐、ねぎを煮るしょっつる鍋は、まさに冬の郷土料理の代表格。秋田名物のきりたんぽ鍋(つぶした新米を杉串に巻いて焼き、比内地鶏のだしで煮る鍋)も、寒さが厳しくなるこの季節が本番です。
冬の日本海はハタハタだけでなく、真ダラやアンコウ、フグといった鍋向きの魚も水揚げが増えます。雪に閉ざされた長い冬を、熱い鍋とともに越すのが秋田流。市内の居酒屋では、これらを肴に地酒を傾けるのが定番で、秋田は寒冷地らしいすっきりとした淡麗な酒質で知られる酒どころでもあります。
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山菜とサクラマス — 雪解けが告げる春の苦みと脂
雪が解け始めると、秋田の山には山菜が一斉に芽吹きます。まず顔を出すのがふきのとうで、秋田では「ばっけ」と呼ばれ、ばっけ味噌にして春の苦みを楽しみます。続いてたらの芽、シャキシャキとした独特の食感が人気のみず(ウワバミソウ)、香りの強いシドケ、そしてわらびやホンナなど、ほかの地域ではなかなか手に入らない山の幸が次々と出回ります。山菜の最盛期はおおむね4月から5月。天ぷらやおひたし、味噌汁にと、雪国らしい春のごちそうです。
川と海ではサクラマスの季節を迎えます。桜の咲くころに産卵のため川へ遡上を始めることから名がついた魚で、本州ではおおむね3月から6月にかけて多くとれます。脂がのった身は塩焼きや味噌漬けで味わい、春限定の贅沢として秋田の食卓にのぼります。八郎潟を干拓して生まれた八郎湖周辺は、シラウオやワカサギなど小魚漁の伝統が残る水郷地帯でもあります。
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「食べるエメラルド」じゅんさい — 三種町の初夏
秋田の夏といえばじゅんさい。スイレン科の水生植物の新芽で、ゼリー状のぬめりに包まれたつるりとした喉ごしから「食べるエメラルド」とも呼ばれます。生産地として全国に名高いのが秋田市の北、白神山地の麓に位置する三種町で、全国の収穫量の9割以上を占める生産量日本一の産地です。旬は5月から8月ごろ、最盛期は6月。専用の小舟「じゅんさい舟」で沼に出て、一つひとつ手で摘み取る昔ながらの収穫風景も、この地の夏の風物詩です。酢の物や吸い物、鍋に入れて、その清涼感を味わいます。
夏の日本海ではイカや夏の白身魚が出回り、暑い時期にはこうしたさっぱりとした魚介と、冷たいじゅんさいの組み合わせが食卓を涼やかにしてくれます。
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新米・きのこ・とんぶり — 実りの秋と漬物の仕込み
米どころ秋田の秋は、何といっても新米。県の主力品種あきたこまちは、寒冷な気候でも育つ良食味米として開発され、冷めてもおいしいことからおにぎりや弁当でも評価の高い銘柄です。近年は新ブランド「サキホコレ」も登場し、炊きたての新米を求めて秋田を訪れる人も少なくありません。
山ではきのこが旬を迎えます。マイタケ、ナメコ、サワモダシ(ナラタケ)など多彩なきのこが市場に並び、きのこ汁や鍋でその香りを堪能できます。
秋ならではの珍味が、大館市の特産とんぶり。ホウキギ(ホウキグサ)の成熟した実を加熱加工したもので、直径1〜2mmの粒は無味無臭ながらプチプチとした食感が独特で、「畑のキャビア」と呼ばれます。地理的表示(GI)に登録された「大館とんぶり」の新物が出回るのは10月。とろろや納豆、豆腐に乗せて楽しむのが定番です。
そして秋の終わり、大根の収穫期(10月〜12月初め)に合わせて始まるのが、秋田を代表する漬物いぶりがっこの仕込みです。大根を吊るして広葉樹の煙でいぶし、米ぬかと塩で漬け込む、雪国ならではの保存食。屋外で大根を干せない豪雪地で、囲炉裏の煙にあてて乾かした農家の知恵が原型とされ、横手など県内陸部が本場として知られます。燻製の香ばしさと歯ごたえは、秋田の地酒の格好の肴です。
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旬を買うなら「秋田市民市場」へ
旬の食材を一度に見て回るなら、JR秋田駅から徒歩数分の秋田市民市場が最適です。「秋田の台所」と呼ばれる場内には約60の店が軒を連ね、日本海の近海でとれた鮮魚やすじこ・たらこ、朝採り野菜、季節の山菜や果実、佃煮や乾物、そして地酒までがそろいます。きりたんぽ鍋やしょっつる鍋の食材も一式手に入るので、その日の旬を店主に尋ねながら買い物をするのが、地元流の楽しみ方です。営業は早朝から夕方まで(店舗により異なる)、日曜が休みなのであらかじめ予定に組み込んでおくとよいでしょう。
旬の魚や山菜は相場の変動が大きいものですが、市場では「今が安くて旨い」ものを教えてもらえるのが何よりの強みです。ハタハタなら冬、じゅんさいなら初夏、新米なら秋——その季節に秋田を訪れたなら、まずこの市場で旬の顔ぶれを確かめることから始めてみてください。海と山と湖、雪国の四季がそのまま並ぶ光景は、秋田の食の豊かさを何より雄弁に物語っています。
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