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仙台で静けさに浸る旅——北山の禅寺と松島・秋保の自然リトリート
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仙台で静けさに浸る旅——北山の禅寺と松島・秋保の自然リトリート

仙台で「座る」「静けさに浸る」旅へ

仙台というと、定禅寺通のけやき並木や活気ある中心部の散策が思い浮かびますが、もう一つの顔として、伊達政宗の時代から受け継がれてきた禅の文化と、市街を取り囲む豊かな自然があります。北山の禅刹、松島の名刹、秋保の渓谷——いずれも、足早に巡る観光ではなく、立ち止まり、呼吸を整え、自分の内側に目を向けるための場所です。ここでは、坐禅や写経、庭園での静かなひととき、森や渓谷での自然リトリートを軸に、仙台で「静けさ」に出会う旅を案内します。

伊達政宗が遺した禅の杜——北山五山

仙台駅の北、青葉区北山の一帯には、藩祖・伊達政宗が京都や鎌倉の五山にならって配置したと伝わる「北山五山」の禅寺が点在します。資福寺・覚範寺・東昌寺・光明寺・満勝寺を指し、城下の北の護りと奥州街道の要を兼ねた寺々でした。今も丘陵の緑に包まれ、参道を上がるごとに街の喧騒が遠ざかっていきます。

なかでも輪王寺(りんのうじ)は、東北でも指折りと評される庭園で知られる曹洞宗の禅刹です。北山一丁目に位置し、池や築山を配した広い境内は、桜・菖蒲・あじさい・蓮と、春から夏にかけて表情を変え、季節ごとに違う静けさを見せてくれます。土曜の坐禅会が開かれることでも知られますが、日程は変わることがあるため、訪ねる前に必ず公式の案内で確認してください。

同じ北山の資福寺(しふくじ)は、北山五山の一つで、臨済宗妙心寺派の禅寺。「あじさい寺」の通称で親しまれ、六月中旬から七月上旬にかけて、約千株とも言われるあじさいが石段を彩ります。梅雨どきの濡れた緑のなかを静かに歩けば、花を「眺める」というより、しっとりとした空気に包まれて心が鎮まっていくのを感じられるはずです。

海の静けさと向き合う——松島の禅

仙台から電車で三十〜四十分ほどの松島は、日本三景に数えられる景勝地であると同時に、禅の歴史が深く根づいた土地です。その中心が、伊達家の菩提寺であり国宝に指定される瑞巌寺(ずいがんじ)。臨済宗妙心寺派の名刹で、政宗が数年がかりで再建した荘厳な本堂や、杉木立の参道が、訪れる人を日常から切り離してくれます。瑞巌寺は坐禅や写経の場としても古くから知られていますが、開催日時・料金・予約の要否は変わりうるため、参加を考える場合は寺の公式情報で確かめてから出かけるのが確実です。

瑞巌寺のすぐ隣には、政宗の孫・光宗を弔うために開かれた円通院(えんつういん)があります。趣の異なる四つの庭を巡り歩けるのが魅力で、苔むした石の庭や木立の参道は、賑わう松島海岸のすぐ近くとは思えないほど静か。天然石を選んで自分だけの数珠を組む体験もでき、手を動かしながら無心になる時間は、ささやかな「内省のリトリート」になります。海を渡る風の音と庭にこぼれる光——松島の静けさは、山あいの寺のそれとはまた違った趣があります。

渓谷で深呼吸する——秋保の自然リトリート

座る・写すといった静の体験に対して、体ごと自然に浸りたいなら、市街の奥座敷・秋保(あきう)へ。太白区を流れる名取川がつくり出した磊々峡(らいらいきょう)は、巨岩奇石が覆いかぶさるように迫る峡谷で、覗橋(のぞきばし)を中心に上下流およそ一キロの遊歩道が整えられています。「磊々峡」の名は、夏目漱石門下の小宮豊隆が名づけたと伝わり、川面に響く水音と岩肌の苔を眺めながら歩くだけで、頭の中が少しずつ静まっていきます。

さらに上流には、名取川が落差およそ五十五メートルを一気に落ちる秋保大滝(あきうおおたき)があります。国の名勝に指定され、日本の滝百選にも数えられる豪快な直瀑で、滝壺へ下りる遊歩道では、近づくほどに水しぶきと轟音が体を包みます。瞑想とは正反対の「圧倒的な自然の力」に身をゆだねる感覚は、ここならでは。静けさのなかで自分を見つめるのも、轟く滝の前で思考を手放すのも、どちらも秋保が用意してくれるリトリートの形です。

街なかの森でひと息——大年寺山

「遠出する時間はないけれど、緑のなかで静かに過ごしたい」という方には、太白区大年寺山(だいねんじやま)がおすすめです。仙台市街の南縁にある標高百二十メートルほどの丘で、かつて伊達家ゆかりの大年寺が置かれた由緒ある場所。松林を抜ける遊歩道はおおよそ三十分ほどの軽いコースで、木漏れ日の下をゆっくり歩けば、街なかとは思えない静寂に出会えます。山内には四季の山野草を集めた野草園もあり、足元の小さな花に目を留めながら歩く時間は、それ自体がひとつの瞑想のようです。

静かな時間を実りあるものにするために

坐禅会や写経会は、寺によって開催日や受付方法、料金が異なり、季節や行事で変わることも珍しくありません。参加を希望する場合は、必ず各寺の公式サイトや電話で最新の情報を確認し、予約が必要なら早めに申し込みましょう。当日は動きやすく、正座のしやすい服装だと安心です。

また、寺院は信仰と暮らしの場でもあります。撮影が制限される区域があること、読経や坐禅の最中は私語を控えることなど、最低限のマナーは心にとめておきたいところ。北山の禅寺へは仙台駅からバスや地下鉄南北線で、松島へはJR仙石線・東北本線で、秋保へは仙台駅からバスでアクセスできます。梅雨のあじさい、夏の深い緑、秋の紅葉と、季節ごとに静けさの表情は変わります。予定を詰め込みすぎず、一つの場所でゆっくり呼吸を整える——そんな引き算の旅こそ、仙台で静寂を味わう一番の方法かもしれません。

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Written by

中村 陽子

クラフトジャーナリスト

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