ヘルスケア
名古屋の瞑想・座禅スポット——静かな寺と日本庭園で心を整える
名古屋で「静けさ」を探すという贅沢
栄や名古屋駅の雑踏、手羽先や台湾ラーメンの熱気——名古屋は「動」のイメージで語られがちな街です。けれども一歩路地を入れば、八事(やごと)の杜、池をたたえた大名庭園、釈迦の遺骨をまつる超宗派の寺院といった「静」の場所が、地下鉄で数十分の圏内に点在しています。名所を足早に巡るのではなく、ひとつの庭、ひとつの境内に腰を据えて、ただ座る・歩く・呼吸を整える。この記事は、名古屋で心を鎮めたいときに訪ねたい寺と庭園、そして都市の森を、静けさという軸でつないでいきます。なお座禅会や写経・瞑想体験の開催日・予約・料金は寺によって異なり変更もあるため、訪ねる前に必ず各寺の公式情報で確認してください。
八事山興正寺——五重塔を仰ぐ杜で、座る・写す
昭和区の八事にある八事山興正寺は、1688年(元禄元年)開創の真言宗の古刹です。境内には国の重要文化財に指定された木造の五重塔がそびえ、本堂へと続く一帯は「八事の杜」と呼ばれる緑に包まれています。地下鉄鶴舞線・名城線の八事駅からすぐという立地でありながら、山門をくぐると車の音が遠のき、線香の香りと木立のざわめきだけが残ります。
興正寺は仏教文化を伝える体験プログラムに力を入れており、公式サイトでは写経や、密教の呼吸法に基づく阿息観(あそくかん)といった瞑想、茶道などが案内されています。筆を持ち、般若心経を一文字ずつ写していくうちに、頭の中のざわめきが静まっていく——写経は、初めての人ほど効く整え方かもしれません。ただし開催日や所要時間、料金、予約の要否は時期によって変わるので、申し込み前に公式で確かめておくと安心です。なお毎月21日の縁日や大型連休は参拝者でにぎわうため、静けさを第一にするなら平日の朝が狙い目。プログラムに参加しなくても、五重塔の前のベンチに腰かけて杜を眺めるだけで、十分に心はほどけていきます。
池をめぐる「歩く瞑想」——白鳥庭園と徳川園
座って整えるのが寺なら、歩いて整えるのが庭園です。名古屋には池を中心に園路をめぐる池泉回遊式の名園があり、足を運ぶリズムそのものが瞑想になります。
熱田区の白鳥庭園は、約3.7ヘクタールと東海地方最大級の日本庭園。御嶽山に見立てた築山から木曽川、伊勢湾へと「水の物語」をたどる構成で、園路を一周するだけで中部の山河を旅した気分になれます。池畔に立つ数寄屋造りの茶室・清羽亭(せいうてい)は、京と尾張の職人が手を尽くした名席で、白鷺が舞い降りる姿になぞらえたという佇まいが水面に映ります。茶会のない日でも、外観を眺めながら縁側のそばを通り過ぎる時間が、静かで贅沢です。
東区の徳川園は、尾張徳川家ゆかりの大名庭園。中心に広がる龍仙湖(りゅうせんこ)は地下水を水源とし、黒松を背負う浮島や、滝から渓谷を下って湖に注ぐ流れが、高低差を生かして立体的に組まれています。湖を一周しながら景色が刻々と変わる様は、まさに歩く絵巻物。牡丹や紅葉など季節の花木も豊かで、水際の飛び石やベンチに座って水面を見つめるだけの時間が、ここでは惜しくありません。
覚王山から本山へ——静かな寺の界隈
千種区の覚王山界隈は、名古屋でもとびきり静けさの濃いエリアです。その核となるのが覚王山日泰寺。タイから贈られた釈迦の真骨(仏舎利)をまつるために創建された、日本で唯一どの宗派にも属さない超宗派の寺院です。広々とした境内は驚くほど静かで、点々と置かれたベンチに腰かけてのんびり過ごす人の姿が絶えません。開門は朝5時。人通りの少ない早朝に参道を歩き、奉安塔に手を合わせる時間は、一日の始まりを整えるのにこのうえない贅沢です。
日泰寺の東隣には、松坂屋初代社長の別荘だった揚輝荘(ようきそう)があります。池を中心とした回遊式の北園などが公開されており、修学院離宮の橋を模したという白雲橋など、大正・昭和初期の数寄が緑の中に残されています(建物・庭園は公開範囲や時間が定められているので事前に確認を)。さらに地下鉄で一駅、本山(もとやま)へ足を延ばせば、曹洞宗の桃巌寺(とうがんじ)。高さ15メートルの鮮やかな緑色の「名古屋大仏」で知られる禅寺で、雑踏とは無縁の境内に大仏が静かに鎮座しています。覚王山から本山まで、寺を結んで歩くだけの一日も、名古屋らしい上質な過ごし方です。
都市の森で深呼吸——東山と相生山
人工の庭ではなく、ありのままの森に身を置きたいなら、名古屋東部の丘陵地が応えてくれます。千種区の東山植物園は、約7,000種の植物を自然林を生かして展示する植物園。万葉の散歩道や薬草の道、東海の森といった散策路が整い、一帯の「なごや東山の森」は環境大臣による自然共生サイトにも認定されています。起伏のゆるやかな園内を一万歩コースに沿って歩けば、隣接する動物園の喧噪とは別世界の静けさ。木漏れ日の下をゆっくり進むだけで、市街地のすぐ隣とは思えない森林浴がかないます。
天白区の相生山緑地オアシスの森は、市民の保護活動に守られてきた里山。やすらぎコースやたんけんコースなど複数の散策路が竹林や雑木林を縫い、見晴らしの丘からは名古屋の街並みも望めます。ここは国内有数のヒメボタルの生息地としても知られ、5月下旬から6月上旬の夜には淡い光が舞います(見頃の時期は年により前後するので最新情報の確認を)。昼は鳥の声、初夏の夜は蛍——季節で表情を変える森です。
静かに過ごすための実用メモ
寺社や庭園は、それぞれ開門・開園時間や休園日、入園料が異なります。日泰寺のように早朝から開く寺もあれば、庭園は夕方に門を閉じる場所が大半なので、訪問前に公式情報で時間を確かめておきましょう。繰り返しになりますが、座禅会や写経・瞑想体験の開催日・料金・予約の要否は寺ごとに違い変更もあるため、断定せず必ず公式で確認するのが安心です。
境内や庭園では、私語を控え、撮影可否の表示に従うのが静けさを守るマナーです。今回紹介した寺と庭園はいずれも地下鉄でアクセスでき、八事(鶴舞線・名城線)、覚王山・本山(東山線)、相生山(桜通線)などが最寄りです。名古屋の「動」を一日楽しんだら、翌朝は早起きして、誰もいない境内のベンチに座ってみてください。整った心で見る名古屋は、きっと少し違って見えるはずです。
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