フードロスに取り組む飲食店|サステナブルな外食のすすめ
日本のフードロスの現状|外食産業が抱える課題
日本の食品ロスは年間約472万トン(2022年度推計)と、国民一人あたり毎日約103gの食べ物を捨てている計算になります。このうち外食産業から発生する食品ロスは約60万トンで、事業系食品ロスの約20%を占めています。飲食店では客の食べ残し、仕込み過多、賞味期限切れの食材廃棄などが主な発生原因です。
外食産業のフードロスには構造的な問題があります。飲食店は「品切れ」による機会損失を恐れるため、需要予測より多めに仕込む傾向があります。また、ビュッフェスタイルのレストランでは閉店時間まで料理を補充し続けるため、大量の廃棄が発生します。宴会では予約人数分の料理が一律に提供され、食べ残し率は平均14%に達するというデータもあります。
しかし、近年は状況が大きく変わりつつあります。2019年に施行された「食品ロスの削減の推進に関する法律」を契機に、行政・企業・消費者が一体となった取り組みが加速しています。SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」への意識の高まりも追い風となり、フードロス削減を経営の柱に据える飲食店が続々と登場しています。
先進的な取り組み事例|廃棄ゼロを目指す飲食店
東京・代官山の「inua」(2023年閉店)は営業中、食材の98%を使い切ることを目標に掲げ、通常は廃棄される野菜の皮や端材を発酵・乾燥させて調味料やガーニッシュに転用する手法で注目を集めました。この「全体食(ホールフード)」の考え方は現在、多くのレストランに波及しています。
大阪・中央区の「Sustainable Kitchen ROSY」は、市場で規格外として廃棄される野菜や魚を積極的に仕入れ、創作料理として提供するレストランです。形が不揃いな野菜も、カットして調理すれば味に差はありません。仕入れコストを抑えられるため、ランチは1,000〜1,500円と良心的な価格設定が可能になっています。
回転寿司チェーンの「くら寿司」は、AIを活用した需要予測システムを導入し、レーンに流す寿司の量を時間帯や曜日、天候データに基づいて最適化しています。この取り組みにより食品ロスを約12%削減することに成功しました。また、4皿に1回の割合でゲームに挑戦できる「ビッくらポン」も、実は皿の回収効率を上げてロスを減らす仕組みの一部です。
スターバックスは2022年から閉店時間に近い時間帯にフードメニューを20%割引で販売する「Tooグッドトゥビーウェイスト」を一部店舗で展開しています。パン屋やケーキ店でも同様の閉店間際の値引き販売が広がりつつあります。
テクノロジーが変えるフードロス対策
フードロス削減においてテクノロジーの果たす役割は年々大きくなっています。最も身近なサービスが「TABETE」です。閉店間際に余った料理を割引価格でアプリから購入できるマッチングサービスで、全国2,000店舗以上が参加。1食あたり300〜680円で購入でき、利用者は累計100万人を超えています。
同様のサービスとして「Reduce GO」は月額1,980円で1日2回まで対象店舗の余剰食品を受け取れるサブスクリプション型のサービスです。都内を中心に展開しており、毎日利用すれば1食あたり33円という驚異的なコストパフォーマンスになります。
飲食店向けのAI需要予測サービスも充実してきました。「HANZO」は過去の売上データ、天候、イベント情報、SNSのトレンドなどを分析して来客数と注文メニューを予測するシステムで、導入店舗では食材の発注ロスが平均30%減少したと報告されています。月額利用料は1万円台からで、中小規模の飲食店でも導入しやすい価格です。
コンポスト(堆肥化)技術も進化しています。レストランで発生する生ごみを24時間で堆肥に変える小型コンポスト機器が10〜30万円程度で販売されており、飲食店だけでなく家庭でも導入が増えています。生成された堆肥を契約農家に提供し、その農家から食材を仕入れるという循環型の仕組みを構築している飲食店も登場しています。
消費者としてできること|外食時の実践ガイド
飲食店のフードロス削減は、消費者の行動にも大きく左右されます。まず最も基本的なことは「食べ切れる量を注文する」ことです。居酒屋で料理を頼み過ぎてしまう経験は誰にでもあるでしょう。最初は少なめに注文し、足りなければ追加する——この意識だけでフードロスは大幅に減少します。
「持ち帰り(テイクアウト)」の活用も効果的です。2020年以降、食べ残しの持ち帰りに対応する飲食店が増えています。環境省が推進する「mottECO(もってこ)」は、食べ残しの持ち帰りを文化として定着させるためのキャンペーンで、対応する飲食店にはステッカーが掲示されています。食品衛生上の自己責任が前提ですが、特に冬場であれば持ち帰りのリスクは低いと考えられます。
予約した飲食店に行けなくなった場合は、必ず早めにキャンセルの連絡を入れましょう。無断キャンセル(ノーショー)による食品ロスは年間約100億円に上るとされています。予約当日の食材はすでに仕込まれている場合がほとんどであり、キャンセルが遅れるほど廃棄量が増えます。前日までのキャンセルであれば、食材を別の用途に転用できる可能性が高まります。
宴会やパーティーでは「3010運動」を意識しましょう。これは宴会の最初の30分と最後の10分は自席で食事に集中しようという呼びかけで、食べ残しを約30%削減できるとされています。幹事の方は参加者に事前に呼びかけてみてください。
サステナブルな食の未来と私たちの選択
フードロス削減は単なる「もったいない」精神の問題ではなく、気候変動対策としても極めて重要です。世界の温室効果ガス排出量の8〜10%が食品ロスに関連するとされており、もし食品ロスが一つの国であれば、中国・アメリカに次ぐ世界第3位のCO2排出国に相当するという試算もあります。
日本政府は2030年度までに食品ロスを2000年度比で半減させる目標を掲げています。この目標達成には、生産・流通・小売・外食・消費の各段階での取り組みが不可欠ですが、特に外食産業と消費者の行動変容が鍵を握っています。
「アップサイクル食品」という新しいカテゴリーにも注目です。ビール醸造で出る麦芽粕をパンや菓子に加工する、コーヒーの抽出後のかすをきのこ栽培の培地にする、おからを粉末にしてクッキーや麺に使うなど、従来は廃棄されていた副産物に新たな価値を与える取り組みが広がっています。
サステナブルな外食を選ぶことは、決して我慢や制限ではありません。規格外野菜の創作料理は発想の面白さに感動し、閉店間際のお得な一品との出会いは宝探しのような楽しさがあります。食を通じた社会課題への参加は、食事をより豊かで意味のある体験に変えてくれます。一人ひとりの小さな選択が、持続可能な食の未来をつくる力になるのです。SOROU.JPではサステナブルな取り組みを行う飲食店の情報も発信していますので、ぜひ参考にしてください。
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