観光・体験
奈良サイクリングガイド|大和盆地を貫く自転車道と古道、古墳をめぐる旅
奈良の自転車は、平城京の「外」へ走り出す
奈良観光というと奈良公園の鹿やならまちの町歩きが思い浮かびますが、自転車を手にしたなら、ぜひ目を向けてほしいのは中心市街地の外側に広がる大和盆地です。飛鳥川や佐保川に沿って整備された自転車道、田畑の畦を縫う日本最古の古道、そして盆地のあちこちに残る巨大古墳——奈良は、古代日本の都がそのまま田園の中に保存された、サイクリスト向きの土地です。徒歩では一日がかりの史跡も、自転車なら飛鳥・斑鳩・天理と都を渡り歩けます。ここでは奈良市とその周辺に実在する自転車道・古道・古墳コースを軸に、奈良ならではの走り方を紹介します。
盆地を南北に貫く「大和中央自転車道」
ロングライドの背骨になるのが大和中央自転車道(正式名称・奈良県道273号大和郡山田原本橿原自転車道線)です。全長は約21.9キロメートル。起点は磯城郡川西町の県立浄化センター公園で、主に飛鳥川に沿って大和郡山市・三宅町・田原本町と奈良盆地を南へ下り、終点は橿原市久米町の橿原神宮前駅前。1989年度に全線が完成した、奈良を代表する大規模自転車道です。
方向転換が少なく勾配もゆるやかで、県内のサイクリングロードの中では比較的走りやすいと評されます。一部に路面のひび割れや、市街地で歩道に切り替わる区間もあるため、スピードを競うよりも田園と飛鳥川の流れを眺めながら流すのが似合うコースです。橿原神宮前まで南下すれば、そのまま後述する明日香村の古墳巡りへ接続できるのも大きな魅力です。
日本最古の道・山の辺の道を行く(天理市〜桜井市)
「もっと古代に深く分け入りたい」という人には、山の辺の道があります。三輪山の山裾に沿って天理から桜井へと続くこの道は、『日本書紀』に記録が残る日本最古の道とされ、天理市の石上神宮から桜井市の金屋まではおよそ15〜16キロメートル。沿道には大神神社、黒塚古墳、長岳寺など、教科書級の史跡が数珠つなぎに並びます。
ただし山の辺の道は本来ハイキングのための古道で、所々で道幅が狭く、石畳や畦道になる区間もあります。自転車で走破は可能ですが、無理に乗り通そうとせず、狭い区間は押して歩く前提で計画してください。天理駅周辺にはレンタサイクルがあり、三輪や桜井での乗り捨てに対応する店もあります。所在は奈良市の南隣・天理市から桜井市にかけてで、近鉄・JRの天理駅や桜井駅が起点になります。
古墳とレンタサイクルの聖地・明日香村
奈良のサイクリングを語るうえで外せないのが、奈良市から南へ離れた高市郡明日香村です。近鉄飛鳥駅・橿原神宮前駅を拠点に、石舞台古墳、高松塚古墳、キトラ古墳、亀石、甘樫丘といった飛鳥時代の遺跡が、自転車でちょうど良い間隔で点在しています。石舞台古墳は蘇我馬子の墓とも伝わる方墳で、積み上げられた石の総重量はおよそ2,300トン。露出した巨石の迫力は、すぐ近くまで自転車で乗りつけてこそ実感できます。
村一帯は国営飛鳥歴史公園として整備され、高松塚周辺・キトラ古墳周辺・石舞台・甘樫丘・祝戸の5地区を結んで走れます。ゆるい上り下りの多い丘陵地帯なので、電動アシスト自転車が断然ラク。飛鳥駅前のレンタサイクルでは普通自転車が一日900〜1,000円前後、電動が1,500円前後が目安ですが、料金や営業時間は時期や店舗で変わるため利用前に確認してください。棚田と古墳が一体になった景色は、奈良市街では決して味わえない明日香村ならではのものです。
平城宮跡と佐紀路の古墳群を周回する(奈良市)
奈良市内で手軽に古代を走るなら、平城宮跡歴史公園を起点にした佐紀路(さきじ)コースが向いています。朱雀門ひろばのレンタサイクルを借りて、東院庭園、法華寺、海龍王寺、コナベ古墳、ヒシアゲ古墳、水上池、そして復原された大極殿をぐるりと巡るルートで、見どころを全部回るとおおよそ2時間。平城宮跡の北側には、ウワナベ・コナベ・ヒシャゲ(磐之媛命陵)といった大型の古墳が並ぶ佐紀盾列(さきたたなみ)古墳群が広がり、堀をたたえた水辺の古墳の間を縫って走れます。
ここは京都から奈良を経て和歌山へ続く広域ルート・京奈和自転車道の一部にもあたり、平城宮跡の朱雀大路跡を自転車で走り抜けられるのは奈良市ならではの体験です。
斑鳩三塔をめぐる田園コース(生駒郡斑鳩町)
奈良市の西、生駒郡斑鳩町には、奈良まほろばサイクリングの法隆寺コースとして整備された、のどかな田園の周遊路があります。世界最古の木造建築・法隆寺の五重塔を皮切りに、法輪寺の三重塔、法起寺の三重塔という「斑鳩三塔」を、田畑越しに眺めながら結んでいきます。春はレンゲ、秋はコスモスが塔の足元を彩り、ゆっくり走って写真を撮りたくなるコースです。
途中には直径48メートルの大型円墳・藤ノ木古墳もあります。6世紀後半の築造で、出土した馬具などの副葬品は国宝に指定されている見ごたえのある史跡です。法隆寺iセンターなどでレンタサイクルを借りられますが、普通車・電動車とも台数には限りがあるため、繁忙期は早めの利用が安心です。
走り終えてからの楽しみと実用メモ
奈良のサイクリングは、補給と季節選びがちょっとしたコツになります。山の辺の道が通る桜井市の三輪は素麺発祥の地とされ、走り終えに味わう三輪そうめんは格別。携行食には、鯖や鮭を柿の葉で包んだ奈良の郷土食・柿の葉寿司が向きます。いずれも観光地では価格が上がりがちなので、値段は店ごとの相場として捉えておくと安心です。
装備面では、明日香や斑鳩の丘陵を走るなら電動アシスト車が体力を大きく節約してくれます。古道の山の辺の道は押し歩き前提、自転車道や古墳周遊は基本的に平坦です。盆地特有の夏の蒸し暑さに備えて水分は多めに、史跡には夕方早めに拝観を締めるところもあるので、午前から走り始めるのが奈良の都めぐりを満喫するコツです。
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