
笠間 菊まつりと笠間稲荷
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秋風が吹き始めると、茨城県笠間市の笠間稲荷神社は一年でもっとも華やかな季節を迎える。境内を埋め尽くす約1万鉢の菊の花々、漂う芳しい香り——日本最古の菊の祭典が、今年も笠間の街を秋色に染め上げる。
千年以上の歴史を刻む笠間稲荷神社
笠間稲荷神社の創建は白鳳時代(約1,350年前)にまで遡るとされ、京都の伏見稲荷大社、佐賀の祐徳稲荷神社と並んで「日本三大稲荷」のひとつに数えられる。御祭神は宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)で、農業・商売繁盛・家内安全のご利益があることから、関東をはじめ全国から年間300万人以上の参拝者が訪れる。
境内に足を踏み入れると、まず目を引くのが重厚な楼門だ。江戸時代末期に建立された楼門は国の重要文化財に指定されており、精緻な彫刻が施された柱や梁は職人の技の粋を今に伝えている。拝殿もまた同時期の建築で、黒漆塗りの荘厳な外観が参拝者を厳かな気持ちにさせてくれる。境内には樹齢数百年を超える大銀杏や藤棚もあり、四季を通じて訪れるたびに異なる表情を見せてくれる。
日本最古の菊まつりとその歩み
笠間の菊まつりは、明治時代初期に始まったとされ、100年以上の歴史を持つ日本最古の菊の祭典である。当初は地元の菊愛好家たちが丹精込めて育てた菊を奉納したことに端を発し、やがて全国的な規模の祭典へと発展した。毎年10月中旬から11月下旬にかけて開催され、約1万鉢もの菊が神社境内を彩る秋の一大イベントとなっている。
祭典の期間中、境内には菊師たちが数か月をかけて丹念に育て上げた作品が並ぶ。菊は日本において皇室の紋章にも用いられる高貴な花であり、笠間の菊まつりはその文化的・歴史的価値を今日まで守り続けてきた。地域の菊愛好家による出品のほか、全国の菊師が技を競い合う競技会も行われ、訪れる人々を存分に楽しませてくれる。
見ごたえたっぷりの多彩な菊の展示
菊まつりの展示は、その種類の多さと規模の大きさで観覧者を驚かせる。なかでも圧巻なのが「大輪菊」の展示だ。直径20センチを超える大きな花一輪を一本の茎に咲かせる大輪菊は、その豪華な姿から「菊の女王」とも呼ばれる。白・黄・紫・赤など色とりどりの花が整然と並ぶ様子は、見る者を圧倒する。
「懸崖菊(けんがいぎく)」は、崖から滝のように花が流れ落ちるように仕立てられた菊で、一株から数百輪もの花を咲かせる技法は熟練の職人技の結晶だ。高さ数メートルにわたって垂れ下がる黄金色の花の滝は、まさに息をのむ美しさである。また「盆養菊」と呼ばれる鉢植えの菊は、コンパクトながら均整の取れた樹形と花付きが求められ、丹精込めた管理の跡が一目でわかる。
さらに人々の目を引くのが「菊人形」の展示だ。歌舞伎や時代劇の登場人物を模した人形の衣装が、すべて菊の花と葉で作られており、その精巧な造形美は菊まつりのハイライトのひとつとなっている。毎年テーマが変わるため、リピーターも飽きることなく楽しめる。
笠間焼とご当地グルメを堪能する
笠間の魅力は菊まつりだけではない。笠間市は「笠間焼」で知られる陶芸のまちでもある。江戸時代中期に始まった笠間焼は、自由で個性豊かな作風が特徴で、現在も100人以上の作家・窯元が活動している。境内周辺や市内各所にはギャラリーや陶芸体験工房が点在しており、旅の記念に一点物の器を購入したり、自分でろくろを回して器を作る体験もできる。秋には「笠間の陶炎祭(かさまのひまつり)」と並ぶ陶芸イベントも開催されることがあり、アート好きにはたまらない街だ。
食の楽しみも忘れてはならない。笠間稲荷神社の参道には、名物の「いなり寿司」を販売する店が軒を連ねている。稲荷神社の総本山である伏見稲荷に倣い、参拝とともにいなり寿司をいただく風習が根付いており、店ごとに異なる味付けや具材のバリエーションが楽しい。また笠間市は栗の産地としても有名で、秋のシーズンには栗を使ったスイーツや料理が市内各所で味わえる。モンブランや栗ご飯など、旬の味覚をぜひ堪能してほしい。
アクセスと訪問のポイント
笠間稲荷神社へのアクセスは、JR水戸線「笠間駅」から徒歩約15分、またはタクシーで5分ほどと便利だ。東京・上野方面からはJR常磐線で友部駅まで行き、水戸線に乗り換えるルートが一般的で、所要時間は約1時間30分〜2時間程度。車の場合は北関東自動車道「友部IC」から約15分でアクセスできる。
菊まつりの期間中(10月中旬〜11月下旬)は、特に週末に多くの参拝者が訪れるため、午前中の早めの時間帯に訪れると比較的ゆったりと鑑賞できる。紅葉も同時期に見頃を迎えるため、境内の木々が赤や黄色に色づく中で菊の花を眺めるという、贅沢な秋の彩りを満喫できる。近隣には笠間芸術の森公園や日動美術館もあり、一日かけてアートと自然と歴史を組み合わせた充実した旅程を組むことができる。菊の香りと秋の空気に包まれた笠間を、ぜひ訪れてみてほしい。
アクセス
JR水戸線笠間駅から徒歩15分
営業時間
6:00〜日没(菊まつり期間中9:00〜16:00)
料金目安
無料
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